【第122回】 食環境の現状(101)病院食の改善

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食文化の豆知識 122 食文化の現状101(病院食の改善) 

老母が怪我をして入院しました。幸い、快方に向かっていますが、年も年だけにまだ
しばらくは入院生活を余儀なくされそうです。完全介護システムなので安心して任せられるのはありがたいのですが、ネックはやはり入院食への不満です。その病院は高齢者が多いからなのか、いわゆる刻み食がメインなのです。ところが、母は氷もかみ砕こうかというくらいに、何でも噛める。日常は全くの普通食だったので、入院食に食欲が全くわかないという、困った状態が続いています。患者が喉を詰まらせたら困る、咀嚼力が弱くても食べられる、を主として作られた料理は、確かに見た目もパスしたくなります。選択肢が無いのも問題でしょう。 

これは極端な例としても、入院食のまずさに対する不満の声は知人などからもよく聞こえてきます。先日など、乗り合わせたタクシーの運転手さんが、入院食による病院のランク付けをとても熱心に話してくれました。ご自身の経験談なので説得力があり、やはり食に関してのこだわりは深いものだと再認識した次第です。消化器系や糖尿系の患者さんなどは、なにがしかの食制限は必要でしょうが、それ以外の患者さんへの食事はもっと、美味しく提供してほしいものです。料理は栄養が満たされればそれでいいというものではありません。見た目、器、温度、味付け、オリジナル性etcのバランスが取れてこそ、料理なのです。何より、美味しい料理は人を元気にさせます。まさに病院が目的とすべき課題であるはずです。 

ただ近頃は病院側もそれなりの努力はしているようで、二種選択式や若干の価格差を設けたりしているところも出てきました。温度管理もなされているし食事時間も常識許容内におさめています。でもやはり、元気が出るとは言い難い内容が多々見られるのは、何故なのでしょう。こうあるべきだ、との枠にとらわれず、是非民間のシェフや料理人を採用してほしい。彼らはお客さんの満足度にとても敏感です。お役所的発想では、店はつぶれてしまうからです。総合的に改善されつつある日本の病院ですが、まずは美味しく食べてもらえる入院食を目指してほしいものです。あまり美味しすぎて、退院したくなくなるのも困りますが。

        平成27年10月5日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

 

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