食文化の豆知識 97 [食文化の現状76]
日本の農業については、食料自給率の低さとも関連して、そのあり方に関して否定的な意
見や危機意識などの声が聞かれます。農業に携わっている親しい知人や親戚がいないせい
もあって、実際の農家の現状はよく分かっていないのですが、労働集約型の厳しい生業な
のだろうなという印象があります。事実、農作物を育てる努力は大変だと思いますし、高
齢化や後継者不足問題も抱えておられるところも多いようです。TPP(環太平洋パートナ
ーシップ協定)交渉参加に農協が強行に反対しているのも、今の日本の農業が盤石な経営
下にないということの表れなのでしょう。どうすれば、若い人達がこぞって参加したがる
ような、夢のある成長産業へ向かうことができるのか、なかなか解決策が見えてきません。
しかし、このような方法もあるのだなと感心して観たテレビ番組がありました。
ある地の農家が協力し合って、いわゆるファームを結成し、大成功をおさめているという
内容でした。そこでは早々に株式会社化して、農産物の生育だけではなく、直売所は言う
までもなく、冷凍化やレストラン経営などの多角経営にチャレンジしていました。従来の
農協を介したシステムではなく、生産者と消費者を直に結ぶ、製造・サービス業として機
能しているのです。驚いたのは、スーパーなどの購入依頼を受けてから、その野菜の種を
蒔いて育てる方法でした。無駄がないとはこのことです。必ず、あらかじめ契約した金額
で売れるのですから、事業としての効率性は高いわけです。そのファームの若いリーダー
はTPP参加にも前向きな姿勢で、海外にも売り込みを図っていきたい旨を述べていました。
何とも頼もしい限りでした。
弱い日本の農家、というイメージはいつだれが作ったのでしょうか。昔から農家の人々は
逞しく、パワフルです。また、意欲的な農業従事者も増えてきたように思います。だから
行政は、そんな元気な農業関係者が増えるように方策を練るべきであって、保護ばかりを
考えている間は日本の農家の未来はありません。誤解を怖れずにいえば、強く育てること、
強いところをもっと強くすること、が大切なのでしょう。強くなる芽があるかどうかを見 p>
極めて、そこにどんなサポートが必要なのかをスピーディーに判断して実行する。
政府や行政がすべきことは、まさにその適切な助力に尽きるといっても過言ではありませ
ん。保護や救済も勿論必要ですが、力を育ててこそ、将来大きな花を咲かせるというもの
でしょう。
25年8月4日 間島万梨子 食生活アドバイザー