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顧客満足の複雑さ162(日本人観光客を満足させよ)

   顧客満足の複雑さ162「日本人観光客を満足させよ」 

政府は、6月10日からの訪日観光客の受け入れ再開を表明した。コロナ感染拡大を防ぐため、当面は旅程を管理しやすい添乗員同行のパッケージツアーに限定するという。併せて、国際線発着を新千歳と那覇の両空港でも再開し、全体で7空港が訪日観光客の窓口となる。2年ぶりとなる解禁は、関係各社ならびに各観光地にとって、待ちに待った朗報となりそうだ。海外観光客の解禁は世界的な傾向でもあり、日本も調整をとったということだろう。

訪日観光客数の推移をみると“消滅”という言葉が似合いそうな状況ではあった。2019年に最高の3,188万人を記録したが、翌2020年は約412万人と87%の減少となり、2021年は24,6万人でまさに“消滅”した。一方、国内観光客数は、2019年の延べ5億8600万人に対して、2020年は2億9000万人と約半減となった。しかし海外観光客が“消滅”した2021年は2億6700万人とコロナ禍にあって健闘している。消費額も2019年の21兆9000万円にははるかに及ばないが、9兆円の内需をもたらした。この時期、大阪心斎橋・京都中心部を見たので、この数値は納得できる。日本人観光客がゆったりと楽しむ姿があった。訪日観光客の増加は経済的な効果と共に、日本という国を知ってもらう絶好の機会でもあるので大いに期待するところではあるが、今後は良い意味で国内観光客とのすみわけが欲しいところだ。

フランスではコロナ禍にあって、政府の国内観光奨励対策によって2021年の各地方の観光客受け入れは2019年並みにV字回復したという。一方、首都圏であるパリは無残な状態が続く。訪日観光客が全国に散らばる日本と微妙に異なる傾向だと思う。東京・大阪・京都は世界的にみて魅力的な観光地だが、各県もそれぞれ至宝ともいえる観光スポットを持っている。交通の便も良い。ただ受け入れ側が観光客に満足してもらう真摯な対応を徹底しているかといえば、疑問だ。ぼったくりの観光地、醜悪な見世物的な施設、魅力が全くない道の駅、etc、実際に経験したので間違いはない。日本人観光客をも満足させ得ないところは多い。訪日観光客の増加を期待するより前に、目の確かな自国の観光客を満足させてこそ、内需消費の恩恵を安定して受けられるだろう。                       2022年6月3日 間島

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顧客満足の複雑さ161(生活シーンの変化)

      顧客満足の複雑さ161「生活シーンの変化」 

 コロナ禍は、人々の生活に少なからぬ変化をもたらしている。行動制限がかかると、交友関係においてはてきめんに会食機会は減るし、解除になっても以前のようなわけにもいかない。自分に照らし合わせても、総勢20名ほどが常に集った月例飲み会は、この2年間休会のままだし、年に一回参加していた同窓女子会も同様に休止状態で、どちらも再開の兆しはない。一方、2名から4名前後までの会食は、緊急事態宣言下を除けば、感染予防策を遵守しつつ、適時楽しませてもらっている。街に出れば予想外の人の多さにたじろぐことも多くなった。そろそろウィズコロナが定着しつつあるのかもしれないが、世界的なコロナ蔓延は、普通の日常生活がいとも簡単にくつがえされる現実を知らしめてくれた。しかし、それ以上に衝撃だったのは、ロシアによるウクライナへの侵略で、一般庶民が住む家屋が一方的に爆撃されるという信じがたい光景に震撼した人も多いだろう。この侵略はロシア次第ではウクライナ戦にとどまらず、他国への攻撃に飛び火しないとも限らない。狂気は、その行動に何とでも理屈を付けられるもので、それだからこそ、狂気なのだ。日本もこころして、備えなければならない時期にきているのではないだろうか。話し合いが通じるのは、ほぼ価値観を共有できる同レベル同士間でこそ可能であるということだ。 

さて今、食材などのお取り寄せが人気らしい。色々な媒体で魅力的な広告を見る機会が増えた。簡単には手が出ない価格付けの食材も多い。外に回るべき消費が自宅で楽しむ目的に費やされている。高級レストランも自宅用の料理宅配に参入することで売り上げを確保しているという。食材メーカーや原産元もターゲットを個人にシフトして、外食企業向けの売り上げ減少をカバーするのに躍起となっている。ただ、各既存メーカーが販売する冷凍食品の品揃えは、今のところあまり変化が無い。製造販売に時間がかかるとはいえ、そろそろ画期的な冷凍食品が登場してもよい。四国発・加ト吉の冷凍うどんの登場が驚きを持って受け入れられた時代を思い出す。生食をしのぐ食感と味の良さはまさに革命的だった。それ以来、冷凍うどん以上のヒット商品を待っているが、まだ無い。ピザやお好み焼、唐揚げetc種類は増えたものの、個人的感想では生食のレベルを超えてはいない。技術なのか素材なのか価格の問題なのか。いずれにしても冷凍食品は未来に向けてオールマイティ的要素を備える食材として繁栄するべきで、各メーカーに期待したい。

様々な生活シーンの発想転換をうながして、コロナ禍はどこに着地していくのだろう。そして世界はどう変化していくのだろう。歴史は繰り返してほしくは無い。

2022年5月1日  間島

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顧客満足の複雑さ160(介護サービスのレベル)

     顧客満足の複雑さ160「介護サービスのレベル」 

 同居する母が老齢になり、様々な介護サービスを受けるようになって久しい。おかげで介護度による保険適用上限額や、サービス内容の種類、自費負担内容に関しての基本的ラインは少々詳しくなったが、その知識が、いざ自分の時にどれだけ役に立つかといえば、疑問符がつく。果たして、現行のサービス体制が、団塊の世代の利用を迎えてもなお持続できるのか、多分誰も明確な答えは出せないと思う。すでに発足から何回ものサービス内容の変更が重ねられ、その都度利用者の負担は増している。将来どうなっていくのか分からない。それほど、介護サービスは綱渡りのシステムの元で運営されている。 

投入されている税金の多さもさることながら、この介護サービスは人的能力レベル如何で異なったものになるということの危うさを含んでいる。数多くの介護事業所があるが、経営者の理念や働く人たちの意識の違いが、その事業所のレベルに影響する。勿論、病院でも人の影響は大きく、それが肌に合うか合わないかで、快適度や信頼度は異なってくるが、医術を施すという点ではどこも一致している。しかし介護サービス事業所は病院ではない。老人ホームにも通じるが、あくまでサービスの提供なのであって、病気を治療する大目的は有する必要は無い。そこのところを勘違いしている事業所も少なからずあるところが、厄介なのだ。 

例をあげれば、食事内容の考え方にしても、利用者の好みに出来るだけ添ったものを提供する努力を見せているところがあるかと思えば、まるで病院食のように栄養と経費だけを重視しているところもある。娯楽提供も、おざなりなところと、利用者に楽しんでもらおうと熱心に励んでいるところがある。衛生管理も手抜きがみえみえのところと、徹底しているところの違いは大きい。雨後の筍のように増えていく介護サービス事業所だが、今後益々、レベル差は大きくなるだろう。当然に、顧客満足度の充実が集客に及ぼす影響は看過できなくなるはずだが、利用者の属性を考えると、利用者の満足の判断力が適切に及ぶのも難しい。となると、外部による定期的なチェックシステムが必要となる。行政が行うのか、依頼された専門会社が行うのか、いずれにしても、介護事業は、巨額の医療保険が投入されているのだ。そのレベル維持に関してのチェック機能が行政に強く求められる。

               2022年4月1日  間島

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顧客満足の複雑さ159(フランス この不可解な国)

  顧客満足の複雑さ159「フランス、この不可解な国」

多分、フランスは、女性にとって憧れの対象として語られることが多い国のひとつだろうと思う。コロナ禍以前は、パリ首都圏には世界から年間5000万人以上もの観光客が押し寄せていた。文化芸術の都として燦然と輝いているようだ。然し世の中には自分のような、ひねくれ者?もいる。時代は随分とさかのぼるが、大学での第二外国語はフランス語志望が圧倒的に多い中で、あえてスペイン語を選んだのは、フランスという国へのシンパシーが無かったからだ。世界史の中で見るフランスは、自国繁栄の礎を築いたルイ王朝(ブルボン王朝)の第16世国王夫妻の首をはね、その後、軍人ナポレオンを皇帝にいただいたものの、そのナポレオンは反仏大同盟軍との戦いのはて、幽閉地のセントヘレナ島で没するという、日本では考えられない歴史を持つ。第二次世界大戦では、パリはいとも簡単にナチスドイツに陥落し、英米連合軍によって解放されるまで、長く支配下におかれた。そのフランスが戦後、戦勝国として核を持ち、国連常任理事国として君臨できるのは、ドゴールという抵抗軍の英雄がいたからだと思うが、何ともうまく立ちまわる国、という印象が抜けきれなかった。今でも基本、その考えは変わらないが、ここにきてそのしたたかさと、芯の強さに、舌を巻くことが多い。 

もっとも、フランスは日本文化への理解度は高い。相撲がアメリカで公演されたとき、彼らにとってあまりの異質な文化に失笑がもれたというのは、有名な話だが、フランスでは好意をもって受け入れられた。元大統領のシラク氏が大の相撲ファンなのは周知の事実だし、浮世絵を始めとする日本文化への憧憬も深く、料理面でも有名なシェフの日本料理への探求心も吃驚するくらい深いものがある。また自国文化を守る力は、日本も大いに見習うべきで、“シャンパン”は仏のシャンパーニュ地方で生産される発泡ワインのみに与えられる称号である、と世界に宣言したのをはじめ、フランス産の価値を守るのに努力を惜しまない。加えて、食料自給率127%を誇っているのは2003年頃からの農業政策の賜物であり、自給率38%の日本の政治・行政には及びもつかない大胆な政策実行力を持つ。そして今、驚くのは、マクロン大統領が、それまでの原発依存度を減らす政策を転換し、最大14基の原発増設計画を発表したことだ。地球温暖化対策の一環として「原発のルネサンス」を実現するという。2028年から開発に着手する。その政策完遂の暁には、食料と電気の2大インフラとも自国でまかなえるばかりか、他国に売ることも出来るだろう。一体、フランスにどれだけの富がもたらされるのか分からない。

1月27日付けで、菅直人氏ら日本の元首相5名が連名で、「脱原発と脱炭素の共存は可能」の主張に基づき、EUの委員長あてに欧州での原発推進の動きに異を唱えたという。フランスの現実主義と比べて、まるで夢見る幼稚園児のように感じる。さてはて、長年のフランスへの忌避感がここにきて大きく転換しそうだ。        2022年3月1日  間島

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顧客満足の複雑さ158(前倒しの連発)

        顧客満足の複雑さ158「前倒しの連発」

最近やけに“前倒し”という言葉が耳に入ってくる。多い時には日に何度も聞く。新聞を開けばそこにも“前倒し”の記載が。何のことは無い。時の総理から頻繁に発せられる言葉だ。3回目のワクチン接種を前倒しする、ということらしい。当初は2回目接種から8カ月後を予定していたが、オミクロン株拡大を受け、6~7カ月後に前倒しすることにした、との意味に使われている。然しながら、医療従事者を別として、ワクチン接種がスピーディーに進んでいるとの情報は入ってこない。高齢者の2回目接種率は、昨年7月の時点で7割を超えていたので、今年1月で多くの人は6カ月を迎えているが、わが町でもワクチン接種案内は一向に届かない。要するにワクチンが無いのだ。昨年6月に2回目を接種し終えた老母の3回目接種は、3月になってからと主治医に告げられた。9か月後!だ。それでも往診患者の特別枠だという。一日100万人以上の接種を国民に約束し、自らアメリカ製薬会社とかけあって、大量のワクチンを日本にもたらした先の総理が懐かしい。“前倒し”の連発が空しく聞こえるほどに、ワクチン接種は遅々として進まない。ちなみに先の総理はアメリカファイザー社の社長を赤坂迎賓館で接待したという。それが直接、ワクチンの日本供給につながった確証はないが、清廉潔白?有言重視の今の総理には無理な技というものだろう。そして感染者数は激増していく。なぜか、メディアには評判が良いようだが。 

さて気を取り直して、日本全国の名旅館や名湯案内を楽しみに観ている昨今だ。航空会社やクレジットカード会社の小冊子に掲載されていた数々の旅行案内がコロナ禍で皆無となり、その代わりに全国の選りすぐりの旅館やレストランが紹介されている。コロナ収束後の需要期待だろうか。この時期ならではの雪景色の露天風呂や、海や湖と一体化したインフィニティタイプの温泉など、観ていて楽しいし、いつか訪問してみたいと思わせる魅力に満ちている。部屋を観るに、和洋室を採用している施設が増え、うれしい限りだ。料理はというと、彩り鮮やかな八寸が目を惹くのは今のトレンドでもあるのか。街でも、客を驚かせる豪華な八寸が人気を集め、コロナ前は予約が取りにくかった人気店があるが、旅館の食事も、少量・多品目という従来の会席スタイルから、いかに個性を出すかに傾注しているところも増えた。こうあらねばならない、のではなく、こんなこともできる、への発想の転換は今後益々、求められるだろう。ネットで見た、今冬1月・北海道にオープンしたリゾートホテルの夕食の目玉は、毛蟹や貝・海老などの海の恵みがこれでもかと入った和風ブイヤベースで、何とも食欲をそそられた。価格はそこそこするものの、さぞかし人気を集めるだろうと予想される。観光促進の“go to トラベル”は、果たしてどのくらい“前倒し”で施行されるだろうか。 

2022年2月1日  間島

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顧客満足の複雑さ157(日本の強みとは一体?)

   顧客満足の複雑さ157「日本の強みとは一体?」

明けましておめでとうございます。まだまだ、朗らかに新年を喜んではいられない状況下ですが、それでも昨年と比べれば、街は活況を呈しているようにみえます。このままコロナも沈静化へと向かってほしいものです。 

人間、2年間も緊張状態を維持できるものでは無いと痛感する。外国でのロックダウンにしろ、日本での緊急事態宣言にしろ、大体が数週間ながくて2カ月程度で、いったん規制の緩和へと舵がきられ、感染者数の推移を見て再び厳しい制約が設けられる。世界は延々と2年間もそれを繰り返している。そして段々と人も慣れてくる。で、日本も年末年始、繁華街も観光地もそれなりの賑わいを見せていた。自分自身にしても、旅行や外食はコロナ禍にあってもそれなりに楽しんできた。日本のすごいところは、どこでもいつでも、ほぼ100%マスク着用が徹底されていることで、このような国は他には見たことが無い。世界のどこの映像を見ても、高いところで5割程度の着用率といったところだろうか。これをもって、日本が勝っているのか、異様なのか、を判断するのは難しいところだが、感染者数を比較すれば、やはり国民の対応が勝っていることへの異論は出ないだろうと思う。 

さてこの混沌とした経済・安保の状況下において、日本の強みとは一体何だろうと考えてみたが、先の国民の真面目な意識や行動に関連すること以外、あまり思いつかないのに愕然とする。ワクチンはいまだ完成されていないし、切り札の治療薬も市場では現実化していない。先日、自宅のトイレが故障し買い替えするほかは無くなったところ、メーカー曰く、トイレそのものが品不足状態に陥っているのだという。コロナ禍におけるベトナムやタイ工場での製造中断に加え、半導体不足が致命的な理由らしい。幸い、最寄りの大手量販店に在庫品があり、早急に交換してもらえたが、メーカーに任せておけば、今でも多分、不便をかこっていただろう。半導体不足?1980年代には、日本は世界の6割以上の半導体を製造していたのではなかったか。現在の惨状に至るまでの経緯は、多分明確なのだろう。どのような外圧があったにせよ、日本には強くてしたたかで先見の明のある経済人も政治家もいなかった、ということだ。では、”おもてなし”が日本の強みだろうか。確かに、日本の飲食店や旅館・ホテルより勝る上質のホスピタリティは、海外ではなかなか出会えないし、国民は親切な人が多い。訪日観光客にとっての体験目的の上位であり、外貨稼ぎの優等生であるのは間違いがない。しかしながら、日本の経済軸を支えるにはパイが少なすぎる。日本はもっと豊かになって良い。先のマスク着用率に限らず、その真面目さ・誠実さは世界が認めるところだ。その国民を束ねてリードするべき経済人や政治家・ひいてはメディアに求められるべき最も重要な素養は、”国益の重視”だろう。今の数倍、数十倍のてこ入れでも、世界では普通、となる。言葉は悪いが世界は、より狡く、よりしたたかで、よりえげつない。素直で人が良いだけでは国が傾く。リニアモーターカーにしても、東京大阪間を約1時間で結ぶことの意義を、国内に限った感覚でしかとらえられない意見もある。今の新幹線で充分ではないかと。考えてほしい。この技術を喉から手がでるほど欲しい大陸国家がどれほど存在するか。このままでは、日本がリニアカーの先陣を切るのが難しくなってきた。何とか世界でいち早く完成させて、日本の外貨稼ぎを増やしてほしい。加えて、国民生活の軸である食料とエネルギーの自給確保を真剣に目指さなければ、この国の将来は危ういと感じるのは悲観論すぎるだろうか。  2022年1月5日  間島

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顧客満足の複雑さ156(内需拡大を真剣に)

     顧客満足の複雑さ156「内需拡大を真剣に」 

国連世界観光機関(UNWTO)によると、2020年の国際観光客数は前年度より10億人減少。損失額は約113兆円に及ぶと発表した。全世界の観光規模は30年前と同レベルに沈んだらしい。観光はコロナ禍による影響をもっとも受けたと思われるが、タイやインドネシアは、諸条件があるものの徐々に外国観光客の受け入れ再開に踏み切りつつある。アジア諸国にとって観光業が国の収入に占める割合は大きく、重要度は先進国の比ではないだろうと推察できる中で、日本も徐々に入国枠を増やしつつあった。その動きに水を差したのが、南アフリカ由来と言われる、コロナの新しい変異株・オミクロン株で、感染者が世界で確認されだした。その詳しい性質はまだ解明されてはいないが、感染力の強さを懸念する声が多い。何とも不気味な事象で、激減状態の日本のコロナ感染者数に影響を及ぼさないことを祈るばかりだ。

さて今秋、京都でささやかな同窓の会に参加した。一年に一回の集まりで、かれこれ5年ほど続いているのだが、京都はインバウンド状況を表すモデルともいえる街なのだと痛感する。大体が晩秋の時期で、5年前はまだ外国人観光客の多さを意識しなかった。そして4年前には、河原町近辺はすさまじい人の波であふれていた。混乱を避けるべく乗ったタクシーの窓から見えたのは、通りを埋め尽くす人・人・人で、一種異様なものを見ていると感じた。紅葉の名所も人であふれ、紅葉狩りはあっさりと諦めたものだ。そして昨年と今年。京都は静かで居心地の良い古都に戻った。コロナ禍にあっても、マスク姿で密を避けた国内観光客が点在し、静かに京都観光を楽しんでいる。今後、益々増えていくだろう。在京のメンバーも現在の状態を歓迎していた。インバウンド減少の影響をもろに受けて苦労している事業者の方々には申し訳ないが、大方の国民の思いだろう。大阪・心斎橋の閉店ラッシュも落ち着いてきた。多くは外国人経営による外国人向けの店舗だった。さっと波がひくように姿を消してしまった。さて、何年後にまた復活するのだろうか。

少子高齢化で人口減を嘆いている前に、1億2600万人の国内消費をいかにあげるかの知恵と努力が望まれよう。ちなみにコロナ前の2019年の国内延べ旅行者数は5億8710万人で前年比4,5%アップ。消費額は7%アップの21兆114億円だった。同年の訪日外国人観光客数は3188万人で、消費額は4.8兆円だ。国内旅行消費額が圧倒している。単純比較でいえば、国内旅行者数が20%強増えれば、外国人観光客の消費額をほぼカバーできるということだ。あくまで計算上の数字なので現実はそうは簡単なことではないのは当然だが、まだまだ国内旅行消費は伸びしろがあるし、不可能な数字でもない。日本の各地方の魅力は並大抵のものではない。外国人のリピート率の高さが証明している。休日のあり方を含めて、国内観光消費の増加対策に真剣に取り組んでほしい。                            2021年12月1日   間島

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顧客満足の複雑さ155(表題の真偽と相対性)

     顧客満足の複雑さ155「表題の真偽と相対性」 

新聞は読んでいる。購読部数が全新聞社で減少しているが、新聞にはネットには無い良さもある。色々な情報が誌面に詰めあわされているので、読みたいものだけを取捨選択できる。またシリーズ化している記事が興味を惹けば、ひとつの楽しみにもなる。あとでじっくり読み返したい場合は切り取りも出来る。これらはすべてネットやユウチューブでも出来ないことはないが、選び方次第で情報がかなり偏ってしまうきらいはある。新聞は一紙の中で、政治・経済・文化・娯楽等々、寿司詰め状態だ。ただその内容がいい加減で、子供だましとしか言えないとすれば問題だ。 

某新聞の2021衆院選関連記事で、女性議員志望の少なさを提言していた。表題は「女性議員志望わずか8%」。どういう数字かと読めば、日本財団が18~69歳の女性1万人を対象に行った調査で、政治家になりたいかを尋ねたところ、“思う”と“やや思う”を合わせてもわずか8%弱だったという。記事は「議会には多様な世代と性別の人がいるべきだ」と訴えている。じっくりと読み進んで驚いた。その調査は31年前の平成2年に実施されたものだった。現状を提言するときに、31年前の調査結果を元にして内容を組み立てることなどあり得ない。しかも男性を対象にした結果は無い。男性の議員志望率が女性のそれよりもはるかに高いというデータが何もない。すべては比較対象してこその訴求力であって、ただ単に主張したいことを、はるか前のデータで無理やり関連付けしたとしか思えない。

比較することで物事を実証するのは相対的評価であって、正確で信頼できる最新のデータまたは実際の見聞が必要だ。コロナ情報はそれに属するが、往々にして情緒論に陥り、ただ不安をあおるのが目的になってしまっている場合も多くある。本当の情報を欲しければ自分でデータを探し、自ら分析することは可能だが、面倒ではある。よってテレビや新聞(新聞の方が少しはマシだが)の情報を表層的に受け取ってしまう。ここで思い出した。日本の著名なジャーナリストが中近東の王族の方と対談している場面で、彼は自分の持論を“国民はみんなそう思っている”と伝えた。いつもの常とう手段だ。日本ではだれも反論しない。ところが相手は、“それは貴方の意見でしょう。(I‘t Your Opinion)“とすぐに切り返し、当のジャーナリストは何も反論できなかった。日本のマスコミ層の甘さが露呈した場面だ。主張や論議の元は、相対的な判断力が不可欠で、データのすべては相対的評価の基となる。飲食店や宿泊施設も相対的価値感による評価が基となり、実際の体験が加味され、満足度が決まる。ただし、自分自身に対する幸福度や満足度は、絶対的評価に基づいた方がストレスは少ない。 

淡路島のリゾートホテルに泊まる機会を得た。すべてに整ったホテルだったが、内外の広いスペースを各種プールが占めているのがいかにも勿体ないと感じた。それらプールが息づくのは夏の3カ月ほどだろうか。代わりに温泉の大浴場があれば、より魅力が増すだろう。バブル景気末期に誕生したそのホテルは運営主体を変えていた。これからも続く厳しい時期を乗り越えてほしいと願うと共に、地に足の着いた日本ならではの魅力の発信に期待したい。日本人客のニーズにいかに合わせられるかが、今後の成否を決めるだろう。   2021年11月1日 

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顧客満足の複雑さ154(日本における平等の感覚)

   顧客満足の複雑さ154「日本における平等の感覚」

 宿泊施設にしても飲食店にしても、高級路線を取っているところは多くある。宿泊に関しては、施設そのものが一泊6万円以上の富裕層限定対応の特別豪華仕様のところとは別に、様々な利用目的に応じて値幅を広く取っている高級旅館やホテルもある。その場合、価格差は、部屋の広さや設備によって決められている。スイートをはじめとする高価格帯客室を設けてはいるが、都心の場合はビジネス客から一般客まで幅広く受けいれているのが現状だ。よってパブリックスペースはすべての客の共有利用スペースとなる。あくまで価格差は部屋次第というわけだ。内部飲食店も予算に応じて、好きな場所を選べる。そこには予算次第で自由に楽しんでください、というおおらかさがある。だからホテル利用時には、どのクラスの部屋を選んでも、それは部屋の中だけの満足感となる。高級旅館にしても、露天風呂付きや広さ如何での価格差が一般的で、大浴場やロビー、その他はすべての客が利用できる。そのスタイルが変わりつつある。 

日本では高級ホテルに宿泊することなどめったに無いが、かつてカナダに取材訪問した際は、主催がカナダ大使館ということもあり、大使館側が用意してくれたのは、すべてが高級ホテルだった。部屋も高層の高価格帯であろうと思われ、殆どのホテルに高価格帯客室利用客専用のエグゼクティブラウンジがあったのを覚えている。強く記憶に残っているのはそのゆとり感とリッチ感、そして特別感だ。殆ど客がいない空間には、常時スタッフが待機し、利用者が入るや否や、至れり尽くせりのサービスを受け、高層ゆえの広がる眺望を独り占めできる。まさに特別待遇そのものだ。ただ、リラックス感と一抹の罪悪感を覚えつつ、このスタイルは日本ではなじまないだろうな、とも思っていた。予算に応じた選択肢は勿論あるものの、独特の平等意識が日本にはある。そして今、遅まきながら、高価格帯の客室利用客専用の「エグゼクティブラウンジ」をハイアットリージェンシー東京ベイ、神戸メリケンパークオリエンタルホテル、帝国ホテル大阪が新設するという。密を防ぐという、コロナ禍での需要や、コロナ禍収束後の富裕層インバウンドを見込んでの新設なのだろうが、それが高額消費者を取り込む一因になるのかどうかは分からない。 

友人が数年前にバリ島観光に行ったところ、あまり楽しめなかったという。理由を聞くと“周辺から疎外されたリゾート地で、そこだけがリッチな空間だった。周りは貧しそうに見えた“のが気になったらしい。随分とセンシティブだなと思ったが、自分自身のフィリピンのセブ島観光を思い出した。充分にリゾート感覚を楽しませてもらったが、バスで市街地に行った際に見た、裸足で重い荷車を曳く痩せた男性、家の前でぼんやりとただ地べたに座っている男性の姿が、胸に重く入ってきた。友人と同じ感覚だ。この感覚は、多分欧米人には無いだろうと思う。かつてアジア・アフリカに植民地を持ち、奴隷制度も歴然とあった国々の人々は、特権をいとも簡単に享受してためらうことはないだろう。日本人のナイーブな、そして独特の平等感覚は、いつまで続くだろうか。

          2021年10月1日 

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顧客満足の複雑さ153(真実を見極めたい)

     顧客満足の複雑さ153「真実を見極めたい」 

JR渋谷駅近くの、16歳から39歳を対象とした予約不要なコロナワクチン接種会場に、初日の8月27日早朝から接種希望の人たちの長蛇の列が、1キロに及んだ。限度300名でもって接種は打ち切られ、28日からは並んだ人たちによる抽選制に移行したという。外れれば“労多くして成果なし”ということだ。黙々と並ぶ若者の映像を見て、胸が痛くなった。“若者にはワクチンを打ちたがらない人が多い“とのメディア報道の決めつけが、いかにいい加減なものかが分かる。確かに確率からみれば、ワクチンに拒否反応を示す人は、その他の年代よりも若干多いかもしれないが、圧倒的に打ちたい人が多いのだ。冷静に考えれば、打った方がメリットで勝ることくらいはだれでも分かる。喫緊の年齢別感染者数をみれば、一目瞭然だ。8月26日の65歳以上の大阪府内感染者数割合は全体の3.4%だが、半年前の2月の時点では、35%を占めていた。今、65歳以上の2回ワクチン接種率は85%を超える。いくらメディアがワクチンへの恐怖をあおっても、データには勝てない。そして若者たちも一部を除いては、ワクチンを打ちたがっている。酷暑の中で静かに並んでいた彼らの表情が目に焼きついて離れない。一日も早く、ワクチンを希望する人たちへの接種を、ありとあらゆる知恵と手段を結集してすみやかに完了してほしい。

さて最近、驚愕というより、むしろ嗤える事件があった。テレビ朝日のオリンピック担当者たち総勢二ケタ台の人間が集まって、オリンピック閉会後の8月8日夕刻から9日未明にかけて、一次会から二次会まで打ち上げを十二分に楽しんでいたというものだ。緊急事態宣言下での堂々たる会合だ。従来なら、外部にはばれなかったところが、二次会のカラオケ店で同席していた女性が二階踊り場から飛び降り、道路に転落。外を歩いていた一般人が驚いて警察に通報したことから、この前代未聞の醜聞が明らかになった。あくる日、同局の朝のニュースで、MCが謝罪したらしいが(観ていないのでその時の様子は分からない)、その後、何の説明も無い。最も不思議なのが、週刊誌に関連記事が一切掲載されないことだ。官僚や議員、その他著名人のコロナ自粛破りを事細かくあげつらって非難していたのに、揃って沈黙を守っている。同じ穴の貉だからか?と思ってしまう。テレビ・週刊誌・新聞等メディア関連者のレベルは所詮こんなものです、と自ら言っているようなものだ。それとも内部調査に真剣に取り組んでいるがゆえの沈黙で、追って上層部の謝罪や説明が聞かれることになるのだろうか。いずれにしても、久々に嗤わせてもらった。そりゃ皆、楽しみたいよね、と寛大な気持ちになりそうなのが恐い。                              2021年9月1日 

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