【第103回】 食環境の現状(82)

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食文化の豆知識 103 [食文化の現状82]

 

日本上陸を果たしたアメリカ発のローストビーフ店が、着実に日本のファンを獲得してい

るようです。2008年出店の大阪店に3年ほど前に訪問しました。こんがりとロースト

された大きな固まりのプライムリブがテーブルに運ばれ、好みの焼き加減の部位を目の前

で切り分けてくれます。心憎い演出です。大きさもあらかじめ選べるので、とても便利で

あったのを覚えています。大きさは確か4段階ほどあって、その場全員がもっとも小ポー

ションのものを選びました。か細い女性達ではなかったのですが、お腹一杯になりました。

興味深かったのは、その小ポーションは本土では選択肢にないということでした。アメリ

カの顧客にとっては余りにも小さいからです。経営サイドはなかなかに賢明でした。日本

人の消化力?レベルをあらかじめリサーチした上で、本土には無いポーションを加えたの

でしょう。それは正解でした。いわゆる日本サイズ・大阪サイズというものです。

 

この地域性を考慮した提供方法は、値段にも表れます。東京で絶大な人気を誇るレストラ

ンも、大阪初出店の際には大阪価格、つまりリーズナブル価格のコースを新たに加えたと

聞きます。大阪のお客さんは価格にシビアであると。これも正解だったと思います。

先日、訪問した際には、そのリーズナブル価格のコースを頂きました。価格と内容のバラ

ンスは取れていました。それでも最終支払い額は1人1万円強でした。より高いコースは

その上に3種類あって、勿論、それらをオーダーする人もおられるはずですが、少なくと

も同行の皆が、いくら有名なレストランでも、一回の食事料金としてはこれで十分との認

識を共有したような気がします。ただ価値観は各自、微妙なものなので、違う考えの人も

いたかもしれません。

 

食事量といえば、クルーズツアーにも差異が顕著に表れます。最近、豪華クルーズを紹介

するテレビ番組が多くあり、船の巨大さや内装の豪華さ、またツアーの魅力に感心しなが

ら観ているのですが、船籍によって最も違いが出るのが、船内で提供される食事であるよ

うな気がします。つまり同じ航路を曳航する豪華客船でも、日本国籍の船の場合は、とて

も繊細な料理構造になっています。コース料理
でも、1品1品のポーションが少なめです。

これが外国船だと、まさに圧倒的なボリュームを誇る内容となります。多分、日本人客は

食べきれない場合が多いと思われます。それらをぺろりと完食される。全くもって食事量

では日本人は太刀打ちできません。最近、大食いを競う番組があり、特に華奢な日本女性

の見事な食べっぷりを見せて、それはそれで楽しいのですが、やはり日本人は他国と比べ

ると食が細い。でも結果としては、長寿国であり、食文化もハイレベルです。全体的に体

型もスマート傾向です。さて、どちらがベターか。次々に料理を美味しそうに平らげてい

く外国の、特に欧米の人達を見ていると、なかなか簡単には答えは出そうにありません。

                26年2月5日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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