食文化の豆知識 54 [食環境の現状 33]
日本の食料自給率が41%と、先進国の中でも際だって低いのは周知の通りです。
理由に関しては諸説あり、多くが「食生活の変化」をあげています。国民の食が、古来
の日本食から畜肉を含む洋食へと大きくシフトしたからだと。別に異論はありません。
ただ、この欄でも何度も食料自給率の問題をとりあげましたが、常に疑問が湧いてくる
のです。他国でも食料自給率は、単に国民の食生活による結果なのだろうかと。際だつ
低さの責任は国民が取らねばならないのかと。本当は政府および行政の農業政策ミスが
長い間、続いた結果ではないのかと。理由をぼかして、だれも責任を取ろうとはしない。
従来、行政が責任を取らないことは自明の理ですが、それにしても国民に、コメを食べ
ましょう、と意識改革とやらを提唱するのを聞くと、ちょっとなあ、と思ってしまうのです。
国民が猛烈にコメを食べだしても、生産量は大丈夫なのですか。
今、かろうじて国産でまかなうのは卵、コメ、野菜類ですが、洋食化原因の最たる肉類
も実は50%以上が国産でまかなっているのです。魚介類もほぼ同じです。そして一番
の劣等生は大豆です。国産率はわずか6%。有識者が声高に張り上げる、“見直そう和食”
を支える大豆の惨憺たる現状を、彼らはどう理解するのでしょう。思考が逆ではないの
かと笑ってしまいます。日本食に欠かせない味噌、醤油の二大調味料が、国産原料では
とてもまかなえない。豆腐、納豆し
かり。これではコメのご飯と、鶏肉と野菜のミルク
シチューを食べるのが、最も自給率アップに貢献しそう?です。
このほど政府は、平成27年度をめどに自給率を45%に引き上げる国民運動を提唱し、
次のメッセージを発信しています。「旬の食べものを選び、地元の食材を食べ、、食べ残
しを減らし、バランスの良い食事をして、各自コメの有効利用を考えよう」
はい、ほとんど、とっくに実践しております。この運動は結構なことです。でも、自給
率アップのための抜本的な戦略が抜けている。それは、原因を明確に認めないからにつ
きます。原因を明確に出来ないから、耳触りの良い国民への提唱しか出来ないのです。
今までの政策が間違っていました。であるから、農政を抜本的に改革し、遠い将来に
食料不足という禍根を残さないための大局的かつ具体的戦略を実行します。と、言い切
れる政治家が出て来てほしい。期待しています。
平成22年1月4日 P&Cネットワーク 間島万梨子 食生活アドバイザー