牛肉表示の産地偽装やブロイラーを地鶏と偽って販売したかどで民事再生手続中の高級料亭で、客の食べ残した食材を別の客に使い回していたことが発覚しました。まあしかし、次から次へと出てくるものです。内部告発による発覚でしょう。この会社は本当に人使いが下手だったのだなあ、とまさにブラックジョークの一つでも言いたくなります。果たして再生が可能でしょうか。徹底的に内部改革を行ってほぼ信頼を回復し、キオスクでも現在、順調に売れている赤福とは大きな違いです。
今回の”使い回し”が果たしてどのような罪状になるのかは分かりません。保健所に届けたそうですが、現状の法律では、○○違反と具体明示出来ないのではないでしょうか。だからといって許される所業ではありません。数年前、ある居酒屋のコンサルテーションをした時のことを思い出しました。客単価2000円前後の大衆居酒屋で、いかに売れるメニューを作るかに苦心しました。また、1品400円~500円が主流の料理価格から儲けを抽出するには厳しい原価管理が必要でした。いかに安い仕入れ先を探すか、いかにローコストの食材を売れる料理に仕立て上げるか、の知恵の結集です。
飲食店は素人でも開業出来ますが、利益を上げるには大変な労苦が伴います。1人2000円以下の客単価ではなおさらです。その居酒屋で、食材の使い回しをしていたかどうかまでは分かりませんが、オープンキッチンであったので、あからさまな”使い回し”は難しかったと思います。
さて、この高級料亭での”使い回し”が、何故これほど騒がれるのか。それは多額な費用を客に負わせながら、他の客の食べ残しを再利用するという、いやしい違反ビジネス故に他なりません。[手つかずの料理は食べ残しとは違うと思った]の言い訳は、まさに噴飯ものです。飲食店では、残った料理はすべてが”食べ残し”なのです。少しでも箸が入って身が崩れた焼き魚は、さすがに他客に出すわけにはいかない。手つかずの魚なら他客に出しても分からないから使い回す。これは商売の本質を理解していれば、到底出てこないやり方です。
商品は、支払った人に帰属する。費用を支払った人がその商品の持ち主となる。また新品と信じているからその値段を支払う。商売の鉄則です。中古の家を新築と称しては売れません。衣類でも、中古販売があります。アウトレットも賢い販売方法です。店も客も双方が納得して満足するからです。他の客が支払った食材を、そのまま他の客に売ることが、いかに信義に劣るやり方であるか、この料亭では分かっていなかったのでしょうか。手つかずに返された料理は中古品なのです。決して新品としては売れません。それと納得の上、まかないに回すなどの工夫で利用する手もあります。
どの飲食店でも大量に食材が残るものです。その食材をどうするのか。当然のように廃棄するのか、猫jに食べさすのか、飢えた人に食べてもらうのか、生ゴミ処理機でバイオ肥料とするのか、法律の範囲内で、それぞれの方法で処理されます。でも、他の客に知らぬ顔で売るのは御法度です。
平成20年5月8日 記 P&Cネットワーク 間島万梨子