食文化の豆知識178 食文化の現状157(コロナ禍の特異性)
5月にして、早くも梅雨入りです。早く始まったからといって、早く終わるわけでもないようで、いささかうんざりします。宣言後一週間ほど律儀に雨の日が続きましたが、その後、晴れ渡る日も結構あり、その貴重さが身に沁みます。早すぎる梅雨入りが作物の収穫に影響を及ぼさないか気になるところです。
さて、コロナ禍での食事情はいたるところで変化しています。当然に自宅での食事回数が増えました。で、外食に費やしていた予算が食材購入費に割り当てられる。贅沢な食材や食事をやはりたまには味わいたい、という要望に対応すべく、高級食材の宅配やレストランの味の宅配などが、活発化しています。外食関連の取引が激減した漁師さんが、鯛一尾まるごとの個人宅配を始めたところ、コロナ前よりもむしろ多くの売上げを確保した、という事例もあるようです。確かに、店舗数より個人客数の方が数的には多いのだから、直接取引のシステムさえ構築できれば、新たなビジネスが始まるわけです。この消費者への直接取引のスタイルはコロナが収束しても、ひとつのビジネスとしての地位を確立していくでしょう。
世界で多くの感染者数を出し、亡くなられた人数も尋常ではないコロナ危機ですが、戦争と違うところは、土地家屋を崩壊させないということでしょうか。農業や酪農、水産業も、人的問題はあるでしょうが、根本的な災厄に襲われることはありません。一番の問題は、人が動かないことによる弊害です。国同士もさることながら、航空・鉄道・バス・旅館・ホテル・旅行業・飲食店・コンサート会場・遊興施設などが被った売上減被害は甚大なもので、そこに携わる人達が当然に被害を受けるわけです。一方で、家具什器・家電・食品・日用品・ゲーム関連・衛生用品などは、過去最高益を出したところも少なくありません。戦争と言っても、サイバー戦や経済戦争などは、また異なった被害状況をだすので、一概に国土そのものの疲弊にはつながらないのかもしれませんが、このコロナの、近代国家の隙をついた攻撃力は、グローバル化のもろさを露呈させました。収束後、果たして人類は、より英知が高まっているでしょうか。 食生活アドバイザー 間島万梨子