顧客満足の複雑さ 214「外食産業の先駆者を悼む」
がんこフードサービスの小嶋会長が享年91歳でこの8月、亡くなられた。がんこフードサービスの創業者であるとともに、大阪外食産業協会や日本フードサービス協会の会長として日本の外食業界を常に牽引してこられた業績は、誰もが知るところだが、個人的に小嶋氏に対して感謝しきれない思いを持っている。というのは、私が料飲やホテルのコンサルティング会社に在職していたころ、我が社が推進する飲食店の顧客満足度調査、いわゆるモニタリング調査を最初に採用依頼してくださったのが、当時の小嶋社長だったのだ。提出した企画書を一瞥し、“これは良い。是非、お頼みしなさい”の一言で、その後、モニタリング調査は十年以上にわたり、我が社の業務の核となった。私が独立したあとも、数年以上もお付き合いくださった。自店のサービスや料理本体への率直な評価や進言も、参考吸収される器の大きさは、外食産業にあって突出した経営者であったと断言できる。
がんこフードサービスに関して、思わず笑みがこぼれたことを記したい。在職時、東京に出張した際に、取引先の関係者に“美味しくてサービスが素晴らしい店に行きましょう“と、連れていかれたのが、がんこ銀座店だった。初の東京出店だったと記憶している。お客の入店時、スタッフから“ようこそがんこへ!”の元気な声で迎えられるのが、新鮮で感動ものだったらしい。当時、がんこさんと仕事上でお付き合いがあることを言いそびれるほどに、その丁寧な対応をほめちぎっていたことが、今でも楽しい思い出として残っている。
がんこフードサービスといえば、主に関西の名建築のお屋敷をリニューアルしての出店が成功事例として有名だろう。平野郷屋敷店を皮切りに、和歌山六三園や京都の高瀬川二条苑など、現在八店を展開している。元々の持ち主や条件などは異なるが、立派な屋敷をリニューアルしての展開は、庭園などの雰囲気の魅力も加味して人気を集めている。かつて、その一員であった岸和田市五風苑は、元々、持ち主の岸和田市との契約が2009年から2019年までの10年間であったが、その間、年間平均4億円前後の売り上げを計上していた。しかし契約更新には至らず、現在は岸和田市営の岸和田グランドホールが2019年からの10年契約で営業している。コロナの影響もあるだろうが、今までの売り上げは年間2億円を超えたことは無い。契約更新の是非は、岸和田市指定管理審査委員会(大学教授や弁護士など5名)で決定されたという。どういう経緯での結果かはわからないが、過去数回、訪問させていただいた利用者の一人としては、複雑な思いがある。
株式会社GANKOと社名は変わったが、丁寧な接客教育や安定した品質管理と顧客満足重視の姿勢を軸として、今後も、小嶋会長のDNAを継いでいっていただきたいと思う。
2026年 10月1日 間島