顧客満足の複雑さ142「飲食店の試練と構造」

長引くコロナ禍で諸企業や店舗などが大きな影響を受けていると思われるが、中でも人の動きによって成り立っている飲食店の深刻度は高い。7月30日の時点で、大手外食主要会社の来年度に向けての閉店計画が1200店舗を超えたという。出店計画が600店舗だから、明らかに縮小する。ロイヤルホストや天丼てんやを展開するロイヤルホールディングスは2021年末までに不採算店70店舗を閉店すると発表した。ジョイフルは2020年7月より、総店舗数767店の内、26%にあたる200店舗を順次閉店する。吉野家ホールディングスも年内の150店舗閉店を決めた。甘太郎などを展開するコロワイドが196店舗、ワタミが年内に65店舗を閉店するという。これほどの事態は今まで聞いたことは無い。大手外食チェーン店のスクラップ&ビルド、いわゆる不採算店のクローズと新規開店によって結果的に売り上げを効率的に伸ばしていく図式とは、全くあてはまらない現状がここにある。 

もともと日本での飲食店は、新規開店の内70%が3年以内に閉店するといわれる。1年以内ですでに30%が撤退し、10年後の営業率は10%前後に過ぎない。産業の中ではNO1の廃業率だ。ちなみに2位は情報通信業で、3位は小売業となる。何故それほどに飲食店の廃業率が高いのかの理由としては、参入障壁の低いビジネスではあるが、実際の運営は厳しい、ということがあげられよう。開店はだれでも比較的簡単に出来るが、家賃や人件費、原価に光熱費の負担は他ビジネスに比べて非常に厳しく、徐々に持ちこたえられなくなり閉店を余儀なくされる。それが前述の3年以内に70%が廃業するという事実に表れている。また、とても手のかかる商売だと思う。それら弱点を効率化し企業化したのが、ファミレスでありチェーン店なのだが、彼らの思い切りは早い。生き残るためには大ナタを振るうことを厭わない。雇用の受け皿とも言われる外食産業の立ち直りを祈りたいが、かなりの時間を要するかもしれない。 

ちなみに、世界の主要都市の飲食店数は、東京が14万582店のダントツ1位で、2位以下を大きく引き離している。人口では東京より550万人も多いニューヨークの飲食店数は2万6697店で7位。バーの数でも東京は2万9358店で1位。パブ人気のロンドンは3615店で8位となっている。何だか妙な気分になってきた。賑やかで華やかで便利なのは利用者としては素直に歓迎できるが、このコロナ禍でどれほどの店がもちこたえられるのだろう。それ以前に、果たしてこれほどの店舗数が日本の産業構造の中で必要なのだろうか、とも思える。消耗戦のような業態だ。一方、日常に利用させてもらっている近隣の数店舗の飲食店は、コロナ禍でも皆、元気そうに見える。昼食時は満席状態の時が多い。やはり地元密着型で、なおかつ家族経営の店は強い。                           2020年10月1日

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