顧客満足の複雑さ141「レジ袋有料化の矛盾と功罪」

2020年7月1日から、全国の小売店で一律にレジ袋有料化が始まった。担当の経済産業省によれば、正式には“プラスチック製買物袋有料化”となるが、巷間では“レジ袋有料化”が一般的な名称となっている。海洋プラスチックごみ問題や廃棄物・資源制約、地球温暖化などの課題を受けての施行だという。環境省なども動いての新制度に違いない。“プラスチック買物袋の過剰な使用の抑制“が目的で、対象は多岐にわたる。スーパーやコンビニはもとより、衣服、医薬品、化粧品、文具、タバコ、自動車部品等々、ほとんどすべての小売り事業者が対象となる。ただ、レジ袋の使用を禁止するのではなく、必要ならば買ってくださいね、というところが笑える。そういえば、ナショナルチェーンの超大手スーパーでは随分と前からレジ袋有料化を実施していた。国民の意識を高める目的というが、そもそもレジ袋は各家庭でゴミ出しに再利用する場合が殆どで、その他でも有効利用されている。過剰に使用している人など、いるのだろうか。

実際の現場でもコンビニでプリン1個、パン3個、ジュースなどを買うと、それら商品がそのままに置かれて困惑する人を、よく見かけるようになった。若い客は手ぶら状態が多く、仕方なくレジ袋を購入するか、ポケットにねじ込むかのいずれかで、万引きに間違われそうな状態だ。また、失笑を禁じ得ないのは、スーパー用レジ袋仕様のポリ袋の売り切れ状態が続いていることだ。マイバッグに拒否感を持つ人は多い。野菜も肉もお菓子も洗剤も靴も下着も詰め込むには、衛生上からも4~5枚のマイバッグは必要になるし、頻繁に洗わねばならない。それを嫌う人達が、せっせとレジ袋仕様のポリ袋を買って、買い物時に利用している。一体、何のための制度かと聞きたくもなる。

時折利用する地域型スーパーでは、今でも充分な枚数のレジ袋を付けてくれるので重宝しているが、制度に背いていいのかと案じていたら、その理由が分かった。その店のレジ袋は、バイオマス素材配合率が25%以上なので、有料化の対象外なのだ。植物性プラスチックを25%使用することで、CO2削減に寄与するらしい。今回のレジ袋有料化は、1、厚手(フィルムの厚さが50マイクロメートル以上のもの)2、生分解性プラ(海洋生分解性プラスチックの配合率が100%のもの)3、バイオマス(植物由来のバイオマス素材の配合率が25%以上のもの)の3点のどれかひとつの条件を満たせば対象外となるのだ。一地方のチェーン店が、バイオマスレジ袋に転換して、客に無料で提供している一方で、大手コンビニや大型スーパーでは有料化を遵守し、なおかつレジ袋仕様の従来型プラスチック商品を品切れ状態になるほど売りまくっている。しかし、精算時に客が購入するレジ袋は、有料化対象外となるバイオマスクリアのものなのだ。これをレジ袋として使うと有料化の対象とはならないのに、経費がかかりすぎて無理ということか。つまり、すべてが利用者の負担において対処すべきであって、当社はきちんと環境に優しいレジ袋を採用していますからね、というわけだ。国民の意識を高めるという、上から目線の制度は、やはり供給側の事情を優先したものだと思われても止むを得まい。各小売店に、上記3種の条件に入るレジ袋提供を義務づければいいだけの話だ。                                2020年9月1日

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