顧客満足の複雑さ126「プラごみ削減に関する視点」

   顧客満足の複雑さ126「プラごみ削減に関する視点」

 プラスティックごみによる海洋汚染の深刻化を受けて、主に先進国主導の規制の動 きが活発になっている。世界の海に流出しているプラスティックごみが激増しており、魚類にもたらす被害がひいては人体に及ぶ危険性に、先進国が危機感を覚えた、ということなのだろう。被害が後進国内で収まっておれば、これほどの動きはなかったのではないかと勘繰りたくもなるが、海の汚染となると見捨ててはおけない。そこで、有機廃棄物の国際移動を規制するバーゼル条約の対象に、汚染された廃プラスティックを加えることが国際会議で決まった。先進国から途上国へ輸出されてきた膨大な廃プラの相当量が処理されぬままに捨てられ、結果として海を汚してきた。だから元を絶つことで、海への廃棄量の減少をはかろうとするのは、分かりやすい方策ではある。その他にも、取り組むべき対策は気が遠くなるほどあるが、まずは一歩一歩ということだろうか。 

 で、新聞各紙も廃プラごみ問題は、かなり重要視して頻繁に取り上げている。ただ問題の核心をどこに置くかで、論調がかなり異なるのは言うまでもない。某新聞の最近の社説を読んで、徹底した上から目線の内容に失笑を禁じ得なかった。まず日本は米国に次いで一人当たりの使い捨てプラごみ量が世界で二番目に多いとし、その量を減らしていかねばならないと説く。それには一人一人が日々のくらしを見直せとも説く。レジ袋や食器、ストローなどの使い捨てプラを利用しないようにして意識の共有が大切だとし、プラスティックの使い放題はもはや許されない、と結んでいる。日々、家から出る半端ではない量のプラごみに心を痛めている身としても、減らす具体的策を教えてほしいところだが、廃プラの一番の配給元である企業の姿勢に関しては、その新聞社説には一言もない。また実際に海を汚染させている海洋ごみ排出国に関する記述も無い。ちなみに喫緊のデータでは中国が882万トンで全体の28%を占め、以下インドネシア、フィリピン等アジア各国とアフリカが続く。アメリカは28万トンで20位、日本は6万トンで30位だ。これをもって、日本は少ない方だなどと逃避するつもりはさらさら無いが、現状は正しくかつ合理的に把握しなくてはならない。情緒的論調だけで読者を教育してほしくはない。 一方、前後して他新聞に、プラごみ撲滅の切り札、と称する記事が掲載されていた。日本の化学メーカー大手カネカが、海水中の微生物による分解が可能な素材を開発したという。それは生分解性ポリマー「PHBH」だ。100%植物由来のプラステ ィックで、30度の海水で6カ月以内に90%以上が水と二酸化炭素に分解されるのが特長。同社はPHBHの世界需要の増大が予測される2022年までに、2万トン規模の生産可能な製造設備の導入を検討している、とあった。すでにセブンイレブンなどでPHBH仕様のストローを提供するほか、資生堂はカネカとPHBH由来の製品共同開発に合意したという。なかなかの朗報で、国が積極的に支援すべきだと思う。廃プラごみ問題は、量の削減で効果が出るのを待つより、プラスティックそのものの環境への無害化を実現する方が解決への道筋が早いのは、だれもが考えれば分かることだ。先の新聞の一人一人の心構えを諭される記事より、はるかに前向きで現実的な内容に、各メディアの基本的姿勢の違いを見たというのは、早計すぎるだろうか。  

 

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