滞在可能時間とは・・・

顧客満足の複雑さ 96「滞在可能時間とは・・」飲食担当 間島 

飲食店にとって書き入れ時となる12月は、利用者にすれば落ち着かないシステムを余儀なくされる場合がある。なかなか予約が取りにくいのに加え、時間制を強いられるケースが多いからだ。まさに需要と供給のバランス異常がもたらす現象といえるが、一年でこの時期だけ強気のビジネスで押し通していいものだろうかと案じられる。というのは、のど元過ぎれば普段通りのリズムに戻り、客待ち顔状態の店も結構あるはずで、その落差が12月の傲慢な対応のせいかもしれないからだ。以前、その時期に厳格なまでの2時間制(1分たりとも容赦がない)を強いられた経験からいえば、平常営業に戻っても、その店にその後、足を運ぶ気にはならなかった。 

店の言い分も分かる。儲け時に儲けるだけ儲けるのは当然だと。また、多くのお客さんに来てもらうには、時間制をとるのはやむを得ず、忘年会難民のお客さんの得にもなるはずだと。果たしてそうだろうか。今は繁忙期と言えば12月だけで、1月になると大体が客足は落ちる。新年会需要はもはや期待できなくなった。1年のうち、わずか一カ月だけで店の年間売上を稼ぎ出せるわけはなく、その他の月の地道な営業と来客数によって、年間売り上げを保たねばならない。12月だけのせちがらい商法が、本当に店の得になるだろうか。一方、年中を通して時間制を取っている店は、かなりのリーズナブル感と話題性が備わっての商法で成り立っているのだろう。しかしその維持には、相当の努力がいるし、客は話題性にはすぐに飽きてくる。 

やはり、店サイドからの時間制要求は飲食店本来の役目を離脱していると個人的には思う。そこで集い、ともに食し、飲み、交流をあたためて、気が付けば2時間以上も経っているから、店にも迷惑だしそろそろお開きにしようか、となるのが双方にとっても望ましい形だ。しかし、ご時勢は異なるらしい。最近ネットでの飲食店紹介画面で“滞在可能時間”の項目があって、驚いた。“可能”という言葉の持つ意味を、今一度吟味する必要がある。今年の忘年会は、店側の“ごゆっくりなさってください”の言葉に惹かれて予約した。勿論、2時間ほどで、切り上げるつもりだが。

                        2016年12月1日

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