食文化の豆知識 78 [食文化の現状57]
新年を迎えました。どのようなことがあっても、時は流れ、一年が過ぎていきます。
そしてやはり一年の節目は、生活の区切りとして、頭を垂れて来るべき一年の平安を祈る
のは自然の摂理なのでしょう。そうやって、私たちは人生を積み重ねてきたのだと思いま
す。初詣に繰り出す人々のひとりひとりに、それぞれの願いや祈り、ひいては感謝の思い
や鎮魂があると思えば、自ずと謙虚な気持ちに成らざるを得ません。我が願い等、何ほど
のことかと。神様も大変お忙しい時期でしょうに。
さて、昨年のテレビで、短期1年ほどで寿司職人を養成する寿司アカデミーを紹介してい
ました。海外での日本の寿司人気を受けて、日本で技術を習得して海外で寿司店を出店を
希望する多くの外国人も技術を学んでいました。歓迎すべき現象です。寿司は何と言って
も生魚を扱うため、正しい衛生管理が必至です。握り方の技術とともに、徹底した衛生管
理を習得して、海外の寿司店で生かしてほしい。日本では、保健所の指導や法律のかいあ
ってか、寿司店での食中毒はかなり少ないはずです。新聞紙上をにぎわす食中毒の元は大
体が弁当店か仕出し屋、宴会料理、団体料理などで、単独のフレンチレストランやイタリ
アレストラン、寿司店などは極端に少ない。やはり作ったものをすぐに食べて頂くスタ
イルが、安全に結びつくのかもしれません。
海外での寿司店は、日本人以外の経営が多いと聞きます。職人もしかり。そういう環境の
中で、ひとりでも実際に日本で技術や衛生管理を学んだ職人が増えていくのは、寿司にと
っても朗報です。というのは、海外旅行の際、頸をかしげたくなる経験を私もしているか
らです。ある国で食べた日本料理は、これは日本人が作っていないな、と明らかに分かる
しろものでした。日本料理の基本がまるでなっていない。器しかり、食材しかり。外国の
人が食べて、これが日本料理か、と思われるのはいやだな、と感じました。また、ある店
では、寿司を握る職人がボロボロの布巾を使っているのが丸見えでした。布巾というより
雑巾で、まな板や手を拭いている。私たちは固まりました。日本ではあり得ない。そこそ
こに店を出ました。寿
司が外国で進化を遂げるのは避けられません。裏巻きやカリフォル
ニアロールなど、そのアイデアに感心する寿司もあります。日本に逆輸入しているものも
あります。でも、基本は守ってほしい。
食の宝庫・日本。こんなにバラエティ豊かに食を楽しめる国は無い、と個人的に思ってい
ます。技術しかり、食材しかり。またレストランのレベルの高さしかり。接客のきめ細か
さしかり。これからも世界に誇る食の文化を、守っていきたいものです。
24年1月3日 間島万梨子 食生活アドバイザー