【第57回】 [ 食環境の現状(36) ]

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食文化の豆知識  57 [食環境の現状 36] 

 

景気不況が長びく中にあって、経営者の悲鳴が聞こえてきます。ある中小企業の経営者

曰く「今までは不況が2~3年も続くと、必ず景気の盛り返しがあった。景気はいつも

波形を形成していたので、不況下にあっても来るべき好況を待てば需要が増えて、まず

は生き残ることは出来た。だが今、日本を覆っている不況からは好況が一切見えないし、

需要回復の見込みも全くない。こんなことは創業以来初めてのことだ。もう閉めるしか

ない」と。確かに、どんよりとした不況感が漂い、希望の芽が見えにくいのが、消費者

の閉塞感にもつながっているようです。企業を元気付ける抜本的対策が立てられないま

まに、日本経済が疲弊していく悪夢は見たくありません。企業をいじめてはいけないの

です。雇用創出こそが、政府の立てるべき第一の政策であるべきでしょう。

 

で、というか、財布の許す範囲で精一杯、外食や小旅行でわずかながら消費に貢献?し

ているのですが、驚愕することがしばしばです。先日訪問した旅館は、平日にあって満

室状態の盛況振りでしたし、会食に利用した大阪市内のレストランは、5時過ぎからず

っと満席という賑やかさでした。皆、とても愉しんでいるように見えました。どこが不

況なの?という印象です。確かに、どちらも価格付けラインがとても巧い。旅館は平日

なら一泊二食が1万3千円前後。レストランは客単価4~5千円というところでしょう

か。そんなに割安ではないけれど、負担感も大きくはない。そして費用対効果が大きい。

つまり、リッチ感を十分に提供できる、ぎりぎりの価格帯を営業努力で設定しているの

です。

 

牛丼やハンバーガーが値下げ競走に走っているといっても、また衣服が安いといっても、

利用するのには限界がありますし、だれもが享受出来ているわけでもない。一方、電気

や水道といった生活に不可欠なインフラ料金はちっとも安くなってはいないし、野菜や

肉の値段は相変わらず高め推移のように感じます。だから、デフレといわれてもピンと

こない消費者は、収入だけはきちんと低くなっていく現実に直面している。何かおかし

い。日本経済が成長していた理由は、“高い価格で消費者が買わされていたから”と考え

ると、今の成長鈍化はなるほどな、とも思えてきます。買う側がシビアに、そして鑑識

眼が豊かになれば、提供側は買ってもらうための知恵の結集が求められます。また、購

入意欲をかき立てる新しいハードやソフトの開発も必至です。優秀な日本の技術を十二

分に生かし、世界をリードする企業や科学の育成こそが、雇用創出の芽を広げるに違い

ないと思うのです。

 

平成22年4月9日 P&Cネットワーク 間島万梨子  食生活アドバイザー 

 

 

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