顧客満足の複雑さ 212「伝統と快適さの融和」
今夏のヨーロッパは、6月下旬から地中海沿岸で熱波が発生し、イタリアで40℃のほほか、スペイン、デンマーク、ポーランド、ドイツ、ハンガリー、フランス、チェコなど、軒並み、38℃以上の最高気温を更新した。気象学は詳しくないが、ヨーロッパ近辺で偏西風が大きく北側に蛇行したことに伴って、背の高い高気圧が発達して停滞したことが高気温の原因らしい。もともと夏であっても23~25℃前後の環境に慣れている人たちにとっては、まさに灼熱状態だろう。フランスでは6月18日からの5日間で、40人がセーヌ川やサン・マルタン運河で、溺死したという。安全性の面で遊泳には適していないにもかかわらず、暑さにたまらず飛びこんでの事故ということか。日本でも、夏の川や海での遭難事故は起こるが、ありえない数字だ。酷暑においては、エアコンの効いた家にこもるのを薦めるのが、日本の報道だ。
ヨーロッパではそうはいかない。100年を優に超える石素材の建物を大切に残して住まいとしている人が多いため、エアコンのための配管工事や設置工事が不可能に近いらしい。各戸のエアコン普及率が90%を超える日本と比べて、10%にも満たない。そして今、基礎工事を必要としない据え置き型冷房器具を求めて人々が電気店に殺到しているという。それにしても、地下鉄や公共施設であっても、エアコン空調設備が少ないというのは、やはり危機管理意識に乏しいと言わざるをえない。過去にも何度か熱波に襲われたこともあるのに学習していない。エアコンは環境に良くない、という意識が強いのだろうか。それとも国そのものが貧乏なのか。日本でも、エアコンの室外機から排出される熱風が空気を汚すといって、反対運動が起こったこともあったようだが、日本の夏の暑さを前にして、あっという間にトーンダウンした。この時期、エアコンの有無は命を左右すると、皆、知っている。
伝統と歴史を誇るヨーロッパは、人間の快適さの追求には消極的なのだろうか。一昔前のパリから帰国した人から、道路上にころがる犬の糞に難儀した話を聞いた。今は改善されているらしいが、これも伝統なのか?伝統と快適さは融和しようと思えば融和できる。それには法律の改正や建物自体の大改造が必要となるが、しばらく我慢すれば、涼しいヨーロッパに戻る。そして人々は、多くの犠牲者を出した過酷な熱波のことは忘れて、快適に過ごすのだろう。次はより過酷な熱波に襲われるなんて夢にも思わずに。この時期、空調設備が整った日本の地下街や地下鉄、公共施設を安全に利用できることに感謝しつつ、7,8、9月の家庭での電気代は、半額システムを導入するくらいの英断がほしいところだ。と、ここで熊本大地震のニュースが飛び込んできた。多くの被害が出たようだ。酷暑下での避難生活も大変だろう。半額システムの導入はあきらめるので、被災地にできる限りの援助をお願いしたい。 2026年 8月1日 間島