顧客満足の複雑さ 176(メディアという甘く優しい互助会)

顧客満足の複雑さ176「メディアという甘く優しい互助会」 

外国に日常生活の拠点を置く芸能人が少なからずいる。住まいは主に欧米の先進国だが、時々、日本に帰って仕事をするか、現地にいるときは映像でのレポート発信の仕事をするかで収入を得て悠々自適の生活ぶりが伺える。わずらわしい人間関係に悩まされることなく自由を謳歌しているようにみえる。しかしながら、わずかな例外を除けば、数年を経て日本に戻り、すでに第一線とはいかないまでも、メディアでの露出や仕事の復帰でその後の生活を成り立たせているケースは実に多い。住んでいた国でその才能が注目され、仕事が舞い込み、大物になった、という話は聞いたことが無い。一方、外国人が日本に来て、そのキャラクターや能力が認められ、芸能界やマスメディアの一隅で十分な地位を築き、日本に定住したケースは結構みかける。彼らは時々は母国に戻り、親族との交流を暖め、一時の自由を味わうものの、結局は仕事場としての日本に戻ってくる。先の日本人のケースとは逆だ。

何か大きなネットワーク、例えば巨大な互助会が存在するのではないか、と思うほどに、日本の芸能を含むメディア業界は仲間うちでは甘く、優しい。世界に通用する芸能人や評論家は俳優、歌手を含めてほとんどいないにもかかわらず、だ。世界のクロサワ、世界のミフネがいた時代は確かにあった。今はいない。日本のビートルズ、日本のマイケルジャクソンが、出てきたためしはない。

一方、世界が認める真の実力者、たとえばトップアスリートの存在は日本人として本当に誇らしい。ただかれらはメディアに媚びる必要がないがゆえに、自らの露出は少ないのが残念だ。実力では負けないアニメーション界も同様で彼らもテレビなどのメディアを必要とはしない。デザインやファッションなどの、いわゆるアーティストと呼ばれる人たちも世界で活躍している。彼らも日本のテレビを必要とはしない。物理生理化学界はノーベル賞受賞者を輩出しているが、テレビとは無関係なところで研究を続けている。

どれだけ政府の悪口を言っても、時の為政者を罵っても、罪に問われる心配のない日本から出ていく人は少ない。学術・医療関係や企業間での移住は安定して存在するだろうが、国自体を見捨ててでも逃げ出したいという人は極小だ。先のメディアではないが、日本全体がやはり甘くて優しいのだ。この国をリードしていくのは、大変であるのは間違いがなさそうだ。

                     2023年8月1日 間島

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