顧客満足の複雑さ146「この国で生きるということ」
昨年1月の食事会で、“コロナなる未知のウイルス感染者が中国武漢で出ているらしい”との話題が俎上に乗り、コロナがまだ他人事であったときから丸一年が経った。対策の違いはあれど、今や、コロナ禍で無傷の国はないほどに、その猛威は衰える気配はない。一筋の光明はやはりワクチンだろうか。すでに各国で接種が始まっているが、ここでも国風の違いが出ている。イスラエルは国民の30%以上の摂取が終わり、全国民に行きわたるのも時間の問題らしい。また国民に安心感を与えるためか、首脳陣が一足早く接種している国もある。中国、インドネシア、アメリカ、イギリスなどもすでに一般国民への投与が始まっている。そして日本は2月下旬からまずは1万人の医療関係者へのワクチン投与が始まり、その結果を注視して後、3月には高齢者や医療従事者へと徐々に枠を広げていき、6月頃までには接種を希望する全国民にまで浸透できる予定だという。然しながら、これまでの様々な対策の経緯と、世界でのワクチン争奪戦をみるに、接種予定時期の筋書が大幅に狂う可能性も高い。ただこれは、どちらの方策が優れているかという問題でも無さそうで、お国柄の違いなのだろう。日本は、良く言えば一人一人の命の重さに敏感ともいえるし、悪く言えばだれも責任を出来るだけ取りたくないがゆえに、慎重な判断を積み重ねるということにもなろう。いずれにしても日本国民なのだから国の方針に沿わざるをえない。かなりのもどかしさはあるが止むを得まい。お国柄なのだ。イギリス在住の日本人女性の投稿を読んだ。“欧州のコロナ対策や医療体制は見習わなくて良い“と断言していた。昨年のイギリスにおける死者数は、過去5年間の平均死者数の14%増で、この70年間で最大の死者数を記録した。かたや日本は2020年1月~10月の死者数は同年同期比で1万4000人も減少している。現実の数字だが、これをもってコロナは恐れずにあたらず、とは言い切れないのも確かだ。
さて、コロナ禍の影響は確実に経済や個々人に及び、閉店ラッシュや痛ましい自殺の増加となってあらわれている。ただ意外だったのは、令和2年の倒産件数(負債総額1000万円以上)は2063件で、前年比5%減で過去30年間では最少件数だった。一方、廃業と解散は令和2年の1月から10月で、前年同期比38%アップの5983件を数えたという。これは何を意味するのか。つまり、売り上げ不振による金詰りに陥り、売掛金を支払えず、負債を抱えたまま、やむを得ず倒産してしまった企業は減った。その反面、きちんと精算をして自ら店・事業仕舞いをしたところが増えた、ということだ。給付金がやはり役には立って、周りに多くの迷惑を及ぼす倒産を少しでも抑えられたのかもしれない。はからずも、映画、寅さんで有名な柴又の鰻老舗店がこのほど閉店した際、店主の“余力のあるうちに閉めることにした”の言葉は、“債務を抱えての倒産はかろうじて回避できた”の裏返しなのだろう。勿論、いずれにしてもプラスマイナスでは撤退した企業数が増えている現状なので、経済的かつ失業問題はこれから大きな国政課題となるに違いない。日本ならではの緻密できめの細かい政策でもって、戦後最大ともいえる危機を乗り切ってほしい。 2021年2月1日