【第146回】 食環境の現状(125) (良質なHMRを)

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食文化の豆知識146 食文化の現状125(良質なHMRを) 

HMRとは、ホームミールリプレースメントの略で“家庭の食事に代わるもの”という意味です。アメリカ初のMS(ミールソレーション・食事の問題を解決する)とほぼ同様の位置付けでしょうか。要するに、惣菜のことです。女性の社会進出や高齢者世帯の増加を受けて、近年、その市場は大きく広がってきました。スーパーやデパ地下でも、惣菜売り場がかなりの面積を占めています。それだけ需要があるということです。スーパーマーケットのすぐれたマーケティング戦略でもあります。 

HMRと一口に言っても、様々な種類があります。献立に合わせた材料がセットされたもの(鍋用のセットなどです)。冷凍加工品(お好み焼き、たこ焼き、弁当用おかずなど)。調理済みでそのまま食べられるもの(寿司、サンドイッチ、揚げ物、サラダなど)が主な種類です。最近は本当に便利なものが出てきて、鍋用の出汁など、家ではなかなか作れない味わいのものがあり、重宝しています。まさに食のお助けマン、といったところでしょうか。しかし、本来の意味、すなわち、家庭での食作りの負担を軽減するために、食材や味にこだわった良質の食事を提供すること、を第一義としたMSとは言えないのではないか、と思われる惣菜があふれています。かなり質が悪い惣菜も、大きな顔で売られています。 

家で作る料理に、とって代わろうというにはおこがましいレベルのものが氾濫しています。衣だらけの揚げ物、中身スカスカのイカリングフライ、輸入野菜オンパレードの煮物、後味の悪いサンドウイッチ、合成着色料まみれの巻きずしetc。これらは確かに求めやすい価格で売られていますが、その目的は前述の、家事を補助するための良質な食の提供、というよりは、売れ残りを防ぐための食材の有効利用、すなわち賞味期限ぎりぎりになった食材に手を入れることで、ロスを防ごうという意味合いの方が大きいのではないでしょうか。家で料理を作り切れないときや忙しいとき、元気の無いときなど、惣菜に頼るのは当たり前のことですが、もう少し良質の惣菜が出回ってもいい。先の鍋用スープなどは、大ヒット商品になりました。要はアイデア力です。いつまでも店頭に、質の悪い揚げ物を並べて置かないでほしい。妙に甘すぎる煮物も撤退してほしい。残り物有効利用の発想ではなく、真に家庭の食事に代わる良質のものを開発販売してこそ、厳しい市場を生き残ることが出来るでしょう。 

           10月8日  間島万梨子 食生活アドバイザー

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