【第144回】 食環境の現状(123) (本物ということ)

col_g_pic.gif

食文化の豆知識144 食文化の現状123(本物ということ) 

スーパーマーケットやデパートの食品売り場はまさに百花繚乱。様々な食材が並び、選ぶのに一苦労で、うれしい悲鳴も上げたくなります。皆、企業の努力のかいあってか、購入をそそる形態仕様をしています。わたしを買って!の声が聞こえてきそうです。だからこそ、消費者は商品を見極める努力が必要だと思うのです。安くていいものを見つけるのは当然ですが、フェイク商品が多く出回るジャンルの食材は、予算の許す限り少し高くても本物の商品を買いたい。 

以前、“本物の食材とは何ですか?”の質問を受けて、答えに言い淀んだことがあります。大きすぎる題目だなと思いましたが、今は私なりに答えられそうな気がします。“本物とは無駄なものが加えられていないものです”と。野菜・果物類はすべて本物です。形・大きさは様々なれど、偽物のトマトやきゅうりは売られていません。肉類も成型肉には気を付けなければなりませんが、偽物はまずありません。ですので、本物かどうかを見極めるべき食材とは、そこに人の手が加えられている商品なのです。 

例えば、醤油。本物は大豆・小麦・食塩から作られます。然し店頭に並んでいるものの中には、脱脂加工大豆・アルコール・糖類・アミノ酸調味料etc、ずらりと添加物が加味されたものも、醤油として売られています。立派な偽物です。価格は安めです。安い添加物を加えることで、醤油風の味を作っている調味料です。味醂も同じく、本物はもち米と米麹とアルコールが主原料ですが、味醂風調味料の名で売られているものは、うま味調味料や水飴、塩などに酒税のかからない1%未満のアルコールが添加されたものです。本物の味醂はアルコール量が多いため、酒税がかかる分、値段も高めですが日持ちがよく、コクもあります。味醂風調味料は酒税がかからないため、値段は安いものの、アルコール分が少ないことによる劣化が早いのです。コクにも欠ける。いわば作られた味です。料理酒も同様に、純米料理酒と料理酒調味料は似て非なるものです。やはり料理の味の決め手となる醤油や味醂は、本物を使いたいものです。値段は倍ほどにも高くはありません。それにぐびぐびと飲むものではないので家庭によって差はあるでしょうが、一カ月の消費量はそれほど多くはありません。本物の味に慣れると、フェイク商品の後味の悪さが分かってきます。 

ハムもチョコレートも魚の練り物類も、安い添加物を加えて増量し、いかにも本物のように売られている食品は、日本では残念ながら多くあります。逆にいえば、技術力が高いのでしょう。でも日本料理を世界に誇るためにも、せめて基本的な調味料は本物が主流となってほしいものです。 

                  8月7日  間島万梨子 食生活アドバイザー

カテゴリー: 食文化の豆知識 パーマリンク