顧客満足の複雑さ165(コンセプトは立地と客単価)

      顧客満足の複雑さ165「コンセプトは立地と客単価」  

不動産業を含む、いわゆる対面客商売と称される事業をするにあたっては、立地は最も成否を左右する要素だとされている。1に立地、2に立地、3・4がなくて5に立地といわれるゆえんでもあるが、飲食店の場合は“1に立地、2に料理、3に接客”となるだろうか。ただ、そのすべてが良い条件下にあるのがベスト、の意味でもなく、店のコンセプトにいかにマッチしているか否かが成否を決める、ということだ。広々とした景観を望めるゆとりのあるレストランを目標とするなら駅前立地は向かないし、客が袖すりあう狭くてもアットホームな居酒屋を目指すときに都心から遠い郊外では成功度は低くなる。いずれにしても立地が店を磨く要となることは確かで、立地如何で客層がほぼ決まってくるのは避けがたい事実だからだ。

都心の駅近での飲食商売は、やはり大きな儲けを生む可能性は高い。かなり広い商圏内でのビジネスパーソンを取り込むことができる上に、日常使用というリピート率の高さも期待できるからだ。一方、郊外型飲食店はヘビーユーザーが見込めないというわけでもないが、客層が幅広いがゆえの客が醸し出す一体感に欠けるという宿命がある。いずれにしてもそれぞれの立地がオーナーのコンセプトに合っていればよいわけで、逆に立地がその店を磨いていくことも十分にあり得る。やはり“1に立地、2に立地、3,4が無くて5に立地“は、対面客商売の指針として生き続けているのは確かなようだ。コロナ禍でのオンライン化は、場所を選ばない、つまり立地を選ばないビジネスの可能性を広めたが、その場で料理・雰囲気・会話を楽しめる飲食店の魅力の本髄を変えることはできなかった。

さて、飲食店開店にあたって、自分のコンセプトに添える立地を選べる幸運に恵まれた場合、その後の成功度はかなり高まる。コンセプトとは「客単価をどの程度に設定するか」であって、それによって他のすべてのランクが決まってくる。つまり立地はコンセプトのハード面、客単価はコンセプトのソフト面を担う、ということになる。そのポイントを認識せずに、飲食店を開店する人が多いのが現実で、結果として、開店して一年後には30%が廃業し、2年後には約半分しか残っていない状態になってしまう。もちろん閉店にいたる過程は様々ではあるが、要は売上が目標に足らないのが最も多い理由だ。つまりコンセプトにあった総合的な店づくりが出来ていなかったということに尽きる。経験上からだが、飲食店(レストラン)開店にあたって、仰々しく華やかな開店を演出した店があっという間に閉店したという事例は多くある。逆に静かにひそやかに開店して後、じわりじわりと顧客を増やしていき、押しも押されぬ名店に育ったという飲食店もある。華々しい開店は一時的に客を集めるが、接客や料理の不備によって、またコンセプトの不統一によって、リピート客を減らしていく。逆に少しずつでも顧客を増やすための努力を重ねれば、リピート客が店を支えてくれる。飲食店激戦区で、5年、10年と営業を続けている店は、皆、見事にコンセプトの統一感があるものだ。                 2022年9月1日  間島

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