顧客満足の複雑さ113「実生活でのゆとり感とは」飲食担当 間島
間取りフェチとまではいかないが、一戸建てやマンションの間取りを見るのが好きだ。そこに住む自分を投影して、色々と想像をふくらませるのは結構楽しい。間取りの中で、つまらないなと思うのは、ハウスメーカー設計の元で建てられた殆ど同形式のものだ。普遍的ではあるが、そこに住むであろう人の、環境や個性が感じられず、したがって面白みは無い。特に水回りはワンパターンで、興味を引くスタイルのものは殆どない。一様にかなり狭く、機能的ではあるがゆとり感は少ない。ここに、生活環境に対する日本独特の価値観の名残りを見ることができる。表向きの、床の間などを備えた客間文化と、実生活裏ゾーンとの落差とでもいおうか。
それに関連するが、ある共有制コンドミニアムの間取り広告が新聞誌上に掲載されていた。兵庫県のリゾート地に日本の企業が売り出したもので、管理会社による清掃サービスやルームサービスもついたホテル機能を備えているのが魅力らしい。しかし、その詳しい間取り図を見て驚いた。専有面積が55㎡の部屋から135㎡の部屋まですべてに、トイレ・洗面所・風呂の水回り施設が一か所しか無かったのだ。135㎡の部屋は2ベッドルームに2つの和室を備えており、リビングルームも大小2室あった。多分、マックス10名は泊まれるだろう。それで、トイレ・洗面所・風呂が一か所である。それより狭い部屋では言わずもがなである。これではとても、コンドミニアムとして、世界的には通用しない。この規模ではリビングルーム1室を削っても、トイレ・洗面所・風呂は最低二か所。さらに洗面台は広々としたダブルボールが常識だ。日本のコンドミニアムには、土地の狭さからくる合理性と片づけられない、実生活面での非ゆとり感がそこにあった。
ビジネスホテルの水回りの狭さは、まだ理解できる。一部屋を売る商売なので、出来るだけ部屋数を増やさなければ採算が取れないし、客も原則一泊程度のビジネス利用で価格的に見ても広い水回りは無理だろうとの諦めもある。しかし自宅や、癒しの空間を売るべきホテルやコンドミニアムは、より広くリッチ感のある水回りスペースが必要だ。日常の使用頻度が高い場所にこそ、ゆとりの空間確保が望ましい。以前、シティホテルのリニューアルで、新たに出現した6名宿泊可能ルームを見学させてもらった時、トイレが一か所しか用意されていなかったことにも驚いた。一方、かつて女性4名で宿泊した旅館で、トイレは一か所だったものの、洗面台がダブルボールで朝の支度時にとても便利だったことを思い出した。ひとえに提供側の理念に基づいた仕様といえる。しかし、まだまだ原点での生活面で、本当のゆとり感を重視するまでに至っていないのか、単に業者の儲け至上主義が先行しているのか分からないが、真の快適さへの道はまだ完成していないように思う。一方で、日本のサ-ビスエリアのトイレの充実度は群を抜いているし、代表的な巨大ショッピングモールのトイレも、広さと機能性では満点に近い。どちらもかなりの投資額が予想される。結局、要はどのポイントにお金をかけるのか、の結果が如実に表れているのだろう。