顧客満足の複雑さ 101「野菜も主役の仲間に」飲食担当 間島
一泊旅行ではさほど感じないが、2~3泊以上となると、個人的にはてきめんに野菜摂取不足に陥る。特に魚介をメインにした夕食の場合、刺身や焼き物、煮物と豪華な皿が並ぶものの、野菜料理はせいぜいが、小鉢ものかあしらい程度しか登場しない。会席料理にしても、肉類や魚介類と比べ、野菜がおまけ感覚で供されるケースに多く遭遇する。そして、体からの野菜を食べろコールが聞こえてくるのだ。朝食がブッフェ式だと、サラダや温野菜(あればの話だが)で夕食時の不足を何とか補えるが、和定食式だとまたまた魚介が登場し、まさに前夜のミニ版を見る思いで、なかなかお箸が進まない。
さて、厚生労働省が推奨する、一人一日350gの野菜摂取目標は、実現しそうにない。日本人の平均野菜摂取量はこの10年大きな変化は無いものの微減状態にあり、2012年で一人一日平均293.6gになっている。60才代の摂取量が最も多いが、それでも約320gで350gの目標には達せず、20才代では250g台という低レベルだ。世界の平均値は超えているらしいが、国別では中国、ギリシャ、スペイン、イタリアなどに大きく水をあけられ、アメリカの340gにもはるかに及ばない。あるリサーチ会社のアンケートでは85%の日本人が、アメリカ人より野菜摂取量が多いと思うと答えたという。日本食はヘルシーで野菜を多く食べているはず、という思い込みが回答に影響を与えたのだろう。現実はシビアだ。ただ日本人は全体に食が細いので、自ずと野菜摂取量も少ないのは仕方がないと言えるし、野菜の価格が諸外国と比べて高いのも確かだ。トマトはイタリアの数倍の値がついているし、その他の野菜類も家計に厳しい。
そこで旅館などで供される料理に野菜重視の姿勢を取り入れないのはいかにも勿体無い。魚や肉と共に、主役三羽烏にぜひ入れて、魅力ある料理に仕上げてほしいものだと思う。“この夕食で一日分の野菜350gが摂取できます”などの言葉は、健康に留意する現代人には効果的なアピールになるだろう。私事になるが、時折訪問するちゃんぽん店に“野菜350g盛りちゃんぽん”メニューがあり、結構な人気を集めている。煮たり、蒸したり、焼いたりの調理方法による多彩で豊かな野菜料理は、多分料理人の腕が最も試されるのかもしれない。そこには、肉や魚よりはるかに奥深いアイデアとチャレンジ精神が要求されるからだ。
2017年5月1日