【第141回】 食環境の現状(120) (養殖業の未来)

col_g_pic.gif

食文化の豆知識141 食文化の現状120(養殖業の未来) 

ある超大手スーパーの魚売り場は、まさに百花繚乱です。豊富な魚が並んでいるというよりも、輸入魚が多種多様に売られているのです。アイスランドからカレイが。チリから鮭が。ノルウエーから刺身用のサーモンが。ベトナムからイカが。インドから海老が。ロシアからカニがetc。国産魚は、鯵、カツオ、鯛など、売り場全体からは少数派でした。これが地域密着型の中型店舗だと、さすがに地元産の魚をはじめ、国産物が主流ですが、それでも輸入魚が結構並んでいます。色々な魚が消費者に届けられるのは歓迎すべきありがたいことだとは思うものの、海に囲まれている立派な海洋国家の日本で、これほど輸入が必要なのかと疑問が湧いてきます。 

最近、不漁の声をよく耳にします。いかなごはここ十数年最低の漁獲量でしたし、昨年の秋は秋刀魚が不漁でした。今春のカツオも望ましい量には達しなかったとか。海とは異なりますが、鮎やウナギも不漁のようです。外洋の漁獲量の減少理由は、各国の競争激化や群れの動きの変化などが考えられますが、今後も楽観はできないと思います。魚の争奪戦は益々厳しくなっていくでしょう。そこで、素人考えですが、日本が誇る養殖技術をもって、養殖生産拡大をはかっていくべきだと思うのですが、現実はそう簡単ではなさそうです。養殖率の高い魚は、ほたてがい、カキ、ブリ、真鯛、かんぱちと並び、内水面では、ウナギ、鮎、マスなどが盛んです。それがここ数年、生産高が減少の一途をたどっているというのです。 

世界と比べても、日本の養殖生産量の減少は顕著です。1995年を1とした場合、16年後の2011年の日本の養殖生産量は0.65ですが、アジア全体では2.69倍、アフリカで10.23倍、ヨーロッパで1.68倍、アメリカで3.05倍。世界平均で2.68倍の躍進を遂げている中、日本の衰退は、驚くべき状況ではないでしょうか。生産過剰による価格低下が撤退業者を増やしたとも、国内需要の冷え込みが原因とも言われていますが、何より、マーケテイング力の不足が養殖産業の衰退を招いたといえるでしょう。日本の養殖技術力を活かし、国際養殖ビジネスに参入していくことが必至です。それには海外への売り込みノウハウを蓄積する必要があります。手をこまねいている暇はありません。前述の数字は現実です。他国の努力は生半可ではないのです。今こそ、官民一体となった、大きな組織力が望まれます。 

             5月7日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

カテゴリー: 食文化の豆知識 パーマリンク