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 顧客満足の複雑さ142「飲食店の試練と構造」

長引くコロナ禍で諸企業や店舗などが大きな影響を受けていると思われるが、中でも人の動きによって成り立っている飲食店の深刻度は高い。7月30日の時点で、大手外食主要会社の来年度に向けての閉店計画が1200店舗を超えたという。出店計画が600店舗だから、明らかに縮小する。ロイヤルホストや天丼てんやを展開するロイヤルホールディングスは2021年末までに不採算店70店舗を閉店すると発表した。ジョイフルは2020年7月より、総店舗数767店の内、26%にあたる200店舗を順次閉店する。吉野家ホールディングスも年内の150店舗閉店を決めた。甘太郎などを展開するコロワイドが196店舗、ワタミが年内に65店舗を閉店するという。これほどの事態は今まで聞いたことは無い。大手外食チェーン店のスクラップ&ビルド、いわゆる不採算店のクローズと新規開店によって結果的に売り上げを効率的に伸ばしていく図式とは、全くあてはまらない現状がここにある。 

もともと日本での飲食店は、新規開店の内70%が3年以内に閉店するといわれる。1年以内ですでに30%が撤退し、10年後の営業率は10%前後に過ぎない。産業の中ではNO1の廃業率だ。ちなみに2位は情報通信業で、3位は小売業となる。何故それほどに飲食店の廃業率が高いのかの理由としては、参入障壁の低いビジネスではあるが、実際の運営は厳しい、ということがあげられよう。開店はだれでも比較的簡単に出来るが、家賃や人件費、原価に光熱費の負担は他ビジネスに比べて非常に厳しく、徐々に持ちこたえられなくなり閉店を余儀なくされる。それが前述の3年以内に70%が廃業するという事実に表れている。また、とても手のかかる商売だと思う。それら弱点を効率化し企業化したのが、ファミレスでありチェーン店なのだが、彼らの思い切りは早い。生き残るためには大ナタを振るうことを厭わない。雇用の受け皿とも言われる外食産業の立ち直りを祈りたいが、かなりの時間を要するかもしれない。 

ちなみに、世界の主要都市の飲食店数は、東京が14万582店のダントツ1位で、2位以下を大きく引き離している。人口では東京より550万人も多いニューヨークの飲食店数は2万6697店で7位。バーの数でも東京は2万9358店で1位。パブ人気のロンドンは3615店で8位となっている。何だか妙な気分になってきた。賑やかで華やかで便利なのは利用者としては素直に歓迎できるが、このコロナ禍でどれほどの店がもちこたえられるのだろう。それ以前に、果たしてこれほどの店舗数が日本の産業構造の中で必要なのだろうか、とも思える。消耗戦のような業態だ。一方、日常に利用させてもらっている近隣の数店舗の飲食店は、コロナ禍でも皆、元気そうに見える。昼食時は満席状態の時が多い。やはり地元密着型で、なおかつ家族経営の店は強い。                           2020年10月1日

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 顧客満足の複雑さ141「レジ袋有料化の矛盾と功罪」

2020年7月1日から、全国の小売店で一律にレジ袋有料化が始まった。担当の経済産業省によれば、正式には“プラスチック製買物袋有料化”となるが、巷間では“レジ袋有料化”が一般的な名称となっている。海洋プラスチックごみ問題や廃棄物・資源制約、地球温暖化などの課題を受けての施行だという。環境省なども動いての新制度に違いない。“プラスチック買物袋の過剰な使用の抑制“が目的で、対象は多岐にわたる。スーパーやコンビニはもとより、衣服、医薬品、化粧品、文具、タバコ、自動車部品等々、ほとんどすべての小売り事業者が対象となる。ただ、レジ袋の使用を禁止するのではなく、必要ならば買ってくださいね、というところが笑える。そういえば、ナショナルチェーンの超大手スーパーでは随分と前からレジ袋有料化を実施していた。国民の意識を高める目的というが、そもそもレジ袋は各家庭でゴミ出しに再利用する場合が殆どで、その他でも有効利用されている。過剰に使用している人など、いるのだろうか。

実際の現場でもコンビニでプリン1個、パン3個、ジュースなどを買うと、それら商品がそのままに置かれて困惑する人を、よく見かけるようになった。若い客は手ぶら状態が多く、仕方なくレジ袋を購入するか、ポケットにねじ込むかのいずれかで、万引きに間違われそうな状態だ。また、失笑を禁じ得ないのは、スーパー用レジ袋仕様のポリ袋の売り切れ状態が続いていることだ。マイバッグに拒否感を持つ人は多い。野菜も肉もお菓子も洗剤も靴も下着も詰め込むには、衛生上からも4~5枚のマイバッグは必要になるし、頻繁に洗わねばならない。それを嫌う人達が、せっせとレジ袋仕様のポリ袋を買って、買い物時に利用している。一体、何のための制度かと聞きたくもなる。

時折利用する地域型スーパーでは、今でも充分な枚数のレジ袋を付けてくれるので重宝しているが、制度に背いていいのかと案じていたら、その理由が分かった。その店のレジ袋は、バイオマス素材配合率が25%以上なので、有料化の対象外なのだ。植物性プラスチックを25%使用することで、CO2削減に寄与するらしい。今回のレジ袋有料化は、1、厚手(フィルムの厚さが50マイクロメートル以上のもの)2、生分解性プラ(海洋生分解性プラスチックの配合率が100%のもの)3、バイオマス(植物由来のバイオマス素材の配合率が25%以上のもの)の3点のどれかひとつの条件を満たせば対象外となるのだ。一地方のチェーン店が、バイオマスレジ袋に転換して、客に無料で提供している一方で、大手コンビニや大型スーパーでは有料化を遵守し、なおかつレジ袋仕様の従来型プラスチック商品を品切れ状態になるほど売りまくっている。しかし、精算時に客が購入するレジ袋は、有料化対象外となるバイオマスクリアのものなのだ。これをレジ袋として使うと有料化の対象とはならないのに、経費がかかりすぎて無理ということか。つまり、すべてが利用者の負担において対処すべきであって、当社はきちんと環境に優しいレジ袋を採用していますからね、というわけだ。国民の意識を高めるという、上から目線の制度は、やはり供給側の事情を優先したものだと思われても止むを得まい。各小売店に、上記3種の条件に入るレジ袋提供を義務づければいいだけの話だ。                                2020年9月1日

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 顧客満足の複雑さ140「再度の生活活動停止は難しい 」

 顧客満足の複雑さ140「再度の生活活動停止は難しい」 

 数的には、日本でのコロナ感染者数は第二波に入っていると思うのだが、国民の緊張感が第一波時期と比べて比較的穏やかになっている気がする。覚悟していたからかもしれないが、これ以上の防衛策は取れないという諦念も確かにある。ただメディアは相変わらず、増加する感染者数の報道に明け暮れる。8月1日現在で3万7859人が感染し、1013人が亡くなられている。確かに感染者数はこの二週間、うなぎのぼりの傾向にあり、歯止めがいつかかるのか読めない不安感はある。全世 界でも1703万人が感染し、66万人を超える死者数を出したと聞けば、コロナへの不気味さに震撼せざるを得ない。ただ例年、インフルエンザにはそれほど恐れを抱く人はいない。ワクチンや治療薬タミフルの存在に安堵感を覚えるせいなのかもしれないが、数字的には、コロナを遙かに上回る。2019年の12月30日から1月5日までの一週間での日本におけるインフルエンザ感染者数は39万2000人で、前週は88万人を数えた。2019年1月だけで、インフルエンザが原因と医者が認めた死者数は1685人にのぼる。一日約54人だ。治療薬があっても、身体の弱っている人が感染するとあっけなく命が奪われてしまう。コロナと同じメカニズムなのだ。しかしながら、いくらインフルエンザが流行しようと、学級閉鎖はあっても、経済活動がストップしたという話は記憶にない。こうなると、今の騒ぎに頭を抱え込んでしまう。 

 さて、旅行業界や宿泊業界への業績の一助とすべく、GO To キャンペーンは予定通り施行されている。一部内容の変更がある中でスタートした。賛否両論はあるが、施行された以上、供給側、使用者側双方が、スムーズにその効果を受けるべきであって、これもまた一定の期間を経て、真の是非が評価されるものだろう。特に今、宿泊業界で盛り上がりを見せるのが、地元客誘致戦略だ。遠方客の利用に対する感染不安が一層、地元客に期待を寄せる一因となっている。ただ考えれば、何故今まで、地元客をターゲットとする戦略が出てこなかったのだろうと疑問を感じる。 以前に“地元客は宝の山なのに”という疑問を呈したことがある。温泉と料理と宿、この3点セットは、家事を預かる女性にとって何よりの解放であるのは勿論のこと、年齢性別問わず命の洗濯となるだろう。近くにその提供場所があるのは大きなメリットになる。移動に疲れないし、満足すれば確実にリピート率もアップする。遠方からの客を期待するより、はるかに上客となり得るのだ。コロナ禍をきっかけとして、宿泊意義の変化が供給・利用双方共に定着してほしいと思う。一方、飲食店はその多様性と店舗数の多さゆえに、なかなかに業績援助活動は難しい。接客の度合 いも、規模も異なる中で、会食は避けてほしいとの行政からの一律的なメッセージは、まさに死の宣告に等しいだろう。やはりここはターゲットを絞っての、ピンポイント行政指導しかない。  間島万梨子

 

 

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 顧客満足の複雑さ139「国による違いは明白 」

     顧客満足の複雑さ139「国による違いは明白」

 6月中旬以降、日本のコロナ感染者数は首都圏で二ケタ台後半が続く中、その他地 域ではゼロ乃至一ケタ台を維持している。痛ましくも亡くなった人は26日時点で 969人。今後の展開がどのようになるのかは分からないが、徐々に人が動き出し、経済が動き出している。一部の店を除いては、徹底した感染予防策が取られ、道行 く人々も100%近くマスクをつけている。いつ来るかもしれない第二波への怯え や備えは、ワクチンや治療薬の出現までは消えることは無いだろう。正しい怯えは 必要なのだと思う。それが日本での感染爆発を押えている理由のひとつに違いない。

 一方、死亡者数12万人を超えたアメリカのある郊外での日常の映像を見て、驚き を通り越して妙に感心してしまった。皆、一様にマスクもせず、密の状態で楽しそ うに歩き、談笑し、リゾートで遊んでいる。この楽観主義は、どこからくるのだろう。圧倒的感染者数の中で、自分だけは大丈夫と信じて疑わない国民性と個人主義 は、良い悪いの問題でかたずけられない違いを感じる。他国は異質だ。集団免疫戦 略、つまり放置政策を取ったスウェーデンが、米国に次ぐ100万人当たりの死亡 者数の多さ、という惨状に、今あえいでいる。大きな間違いを起こしたのだ。ただ 国民からは政府への非難も少なく、相変わらずマイペースな生活を続けているよう だ。ことほどさように、今回のコロナは、各国の政策の違いと国民性を見事に浮か び上がらせた。日本は誇って良い。死亡者数の低さが確固たる証拠として、裏付け られる。コロナ対策に関しては、お手本とすべき国は見当たらない。あるとすれば、ごく早期に中国からの入国禁止に踏み切り、個人へのマスク安定平等供給を迅速に 果たした台湾か、日本と同じく死者数が圧倒的に少ないニュージーランドあたりか。 それとても法律や環境の異なる条件下の成果であって、台湾のICカード式保険証 を使用してのマスク平等購入システムも、そもそも国民全部を把握できるICカー ドシステムをプライバシー保護の反対で導入できない日本では実施は難しい。 

 さて、コロナ自粛期間でもテレビは元気だ。過去の配信映像をうまく組み合わせて、 時間枠を埋めたものが多い。よくこれでスポンサーがつくものだと感心するが、裏 ではどのような取引があるのだろう。ニュース番組にしても、新たなコメンテータ ーを呼んで、日々侃々諤々の意見がはきだされて活気づいている。その形は、外国 のニュース番組とかなり異なる。最近、コロナ関連もあって海外ニュースを見る機 会が増えたのだが、どの国も一人のキャスターが自分の意見をことさらに述べるこ となく、事実や事件を映像を取り入れながら淡々と報道している。考えるのはテレ ビの前の視聴者の役目というわけだ。先日、朝8時からの一応はニュース報道らし い日本のテレビ番組の頭が、若い芸人が芸能事務所を出るとか出ないとかの話題だったのには、心底驚いた。外国にも芸能関連を扱う番組はあるが、ニュース番組と のすみわけは出来ている。日本のテレビはまるで、そこで生きる人達の互助会のよ うだ。テレビを生活の糧にする人の数が多すぎるのか、視聴者が芸人が多く集まる 賑やかさを望んでいるのかどうかは、分からない。                 間島万梨子

 

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 顧客満足の複雑さ138「新たな需要拡大へ 」

      顧客満足の複雑さ138「新たな需要拡大へ」

5月下旬をもって、日本全国でコロナ緊急事態宣言が解除された。まずは朗報なのだが、第二波は必ずくるとの警告が、行動や心理にまだ重くのしかかる。発症者数を一定内に収め続けるために、今後も長期間にわたって、国民、企業ともに予防策は取られるだろう。死者数10万人を数えた米国を筆頭に、2万人越えの国はヨーロッパを中心に五指を超えるが次第に収束していき、その波は今後、南米とアフリカを襲うとWHOは予想する。5月末現在で約890人の尊い命が犠牲になっているが、死者数1000人未満の日本は、まさに奇妙な?成功と、欧米各国から奇妙な評価をされている。むしろ日本から見れば、各国の死者数の多さには言葉を失う。

何が異なって、何故こんなに結果が異なったのかの検証結果は、まだ待たねばならないが、日本国民の衛生意識の高さが一因であるのは間違いがないだろう。ただ、このような時に政権を任されている人々に、どれほどの危機感と責任がのしかかっているかの、想像力は持ちたいと思う。今は、この凶暴なウイルスをあなどることなく、経済再生への道を進むことが求められる。 

4月、5月の二か月で、人の生活形態そのものが激変し、同時に企業側も自粛体制の中、大きく業績が落ち込んだ。新たな流通経済による新たな需要は認められるものの、絶対的経済の不振は免れない。今後の経済体制そのものの変化は避けられないだろう。かといって、じっと動かないでいるわけにもいかない。そこで新たな需要開拓の種々対策が、巷間に満ちてくる。供給側も、国内生産を増やしサプライチェーンの多様化という変化を受け入れざるを得ないが、肝心の需要をどう喚起して増やしていくかがこれからの大きな課題で、それこそが日本の経済体制を変えることになるのだと思う。

繰り返すが、最も重要なのは内需回帰による消費拡大だ。訪日観光客によって売り上げを伸ばしてきた観光業界、百貨店、宿泊業界などを筆頭に、戦略の立て直しが必至であり、そのために国も種々対策でフォローする必要がある。いつくるかもしれない再度の緊急事態に備えて、サプライの国内生産率を上げることの重要性は誰の目にも明らかだ。ここにきてさすがに儲け至上主義の経済界も、内需拡大への方向転換を公言しはじめた。以前にも書いたと思うが、米国経済の強さは、自国でエネルギーをまかなえる絶対的強さと同時に、内需経済のボリュームが寄与している。ここしばらくはコロナ不況の波に苦しむだろうが、この国の回復は早いような気がする。そして日本だ。今後の日本が進むべき道は、まさに内需拡大と取引国の分散化で、国内旅行需要を伸ばす具体的政策や、老舗への存続補助政策、雇用促進対策、などなど、やるべきことは山積している。新システムの導入や関連立法も必要になる。幸い、医療体制の盤石化や国内観光の活況化、雇用支援、サプライチェーン国内回帰への支援などの政策は予定されているようだが、掛け声倒れに終えることなく、着実に、そして何よりスピードをもって実現していってほしいと思う。まずは財務省を抑え込み国債を発行して、大胆な金融政策で市中に莫大なお金を投入すること、品の無いいい方をすれば、お金をばらまくことで経済や人を殺さずに再生させること、これに尽きる。小手先の手当ではなく、発想の大転換が望まれる。                                 2020年6月1日

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 顧客満足の複雑さ137「乗り切るための知恵と覚悟 」

連休明けの新型コロナウイルス感染者数動向が、日本の未来を決めそうな気配になってきた。まさに正念場といえる。日本全体で二ケタ台前半までに収まっていれば、ひとまずは緊急事態宣言は中止されるだろうし、三ケタを超える状態が続いているとなると、緊急事態を解くことは到底かなわない。その間の微妙な数の場合は、政府としては決断に悩むことだろう。宣言を伸ばし続けることによる、就労者と企業の疲弊、困窮に配慮しなければならない。ともあれ、結果を左右するのは、国民一人一人の行動にかかっていることに異論はない。 

現在も、無残な数字が日々報告されている。デパートの3月の売り上げ33%ダウンをはじめ、タクシー業界が65%ダウン。中国人向け宿泊施設は売上ゼロに近い。飲食業界もかつてない苦境に立たされている。その中にあって、スーパーマーットの売り上げは0.8%の微増となったらしい。高級品を扱うデパートが打撃を受け、生鮮品を初め日用品を扱うスーパーが好調なのは当然のことだ。有事の際にはとにかく基本的生活保持に必要な分野、例えばインフラ、物流、生鮮日用品、ガソリンなどが安定供給され、病院関連がスムーズに動くことが必至となる。一方、娯楽をつかさどる落語や高級レストラン、スポーツなどは平時にあってこそ活き活きと息づく分野なので、今は大変な状況下にあるだろう。人が動くことで商売が成立するホテル宿泊業界や旅行業界への打撃も想像を超える。著名な祭りも次々と中止が発表された。 

そんな中、有名なミシュラン星獲得のレストランオーナーが、この状態が続けばすぐれた食文化が死に絶えると公的な支援を訴えていた。訪問したことは無いが、予約が取りにくいと評判の超高級フレンチレストランだ。来客数ゼロが続いているという。一方、同ランクのある高級レストランでは、2月の時点でいち早くリッチ弁当の宅配を始めた。家庭で高級レストランの味をおせち風弁当で楽しんでください、というわけだ。予想以上の需要があるという。あるタクシー会社は高齢者の買い物代行を急遽始めた。売り上げの一助にはなっているらしい。また、アルコール製造に多くの酒造メーカーが名乗りをあげた。マスクしかりである。とにかく求められるべきはスピード性だ。一日も早い収束が、背後に迫りくる景気低下の幅を和らげる。コロナ禍は実に様々な分野を凌駕している。だからこそ、各企業や店の知恵と、国民一人一人の覚悟が大切になる。収束後の種々の楽しみを頭に浮かべながら、乗り切りたい。

2020年5月1日

 

 

 

 

 

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 顧客満足の複雑さ136「危機下で見える様々な現象 」

    顧客満足の複雑さ136「危機下で見える様々な現象」

今は何を言っても、コロナウイルスがらみになるのは致し方ない。それほどに獰猛なウイルスだと思う。蔓延しやすいところを狙って、仲間を増やしていく。日本では外出禁止令が出されていないので、自由な行動が許されているが、欧米の街の様相を見るに、まさしく戒厳令下にある。命を落とした人の多さに胸が痛む。最終的にどれだけの感染者数と死者数を出して終結するのか、だれも明言できない。“はい、これで終わりにしましょう”と、手打ちをすることもできない。そういう厄介な状況の中でも、人間の叡智やしたたかさを見ることもできる。 

国際放送で知ったのだが、英国のジン酒造メーカーでは、パブ閉鎖による消費低迷を受けて、ジン製造機械を使って消毒液を製造しだした。今や需要に追いつけないほどのフル稼働状態らしい。ジンも消毒液も大差無い、という発想か。また、ドイツのダイソンは急遽、人口呼吸器の販売に乗り出した。充分な製造技術を持っているのだ。米国でもフォードが、週に10万個の防護マスク製造に着手した。いずれも臨機応変の知恵をそこに見て、頼もしさを感じた。多分、日本でも各メーカーなどが、今出来ることを模索していて、現実に知恵を出していると思うのだが、そういう元気の出る情報は流れず、聞こえてくるのは恨み節が多い。これはメディアの責任が大きい。神戸牛やズワイガニなどの超高級食材が値下がりしたと嘆くニュースなどは興味も湧かない。需要と供給のバランスが崩れただけのことだ。またオール中国人需要のホテルがガラガラ状態であるのも、気の毒ではあるが今はどうしようもない。またTOTOが中国工場の閉鎖でトイレを作れなくなったとか、ビックカメラからパソコンが消えたとか、情けない話ばかりだ。いずれも中国頼りのサプライチェーンの入荷停止によるものらしい。 

いずれ、コロナウイルスも必ず終息はする。しなくてもワクチンや治療薬が開発される。それまでは知恵を出しつくす努力も必要になる。幸い、大都会以外で患者数が一ケタ台の自治体も日本では数多くある。移動手段さえ注意すれば、そして自分自身の健康状態の安定を確認できれば、加えて予算があればのことだが、のんびりと観光地で長期間を過ごす手もある。宿泊施設も誘致するプランを練ってほしい。飲食店も店自ら、キャパシテイの半分以下の客しか入れない方針で、安全性を打ち出す必要もある。こんな時でもインフラが安定しているのは、大きな恩恵でもある。自宅にこもるのがベストかもしれないが、メディアも文句や不平不満ばかりの情報をたれ流すのではなく、希望や知恵を発信する役割もある。が、今の日本のメディアでは無理なのかもしれない。

2020年4月1日

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 顧客満足の複雑さ135「利用者側に立ったシミュレーションを 」

    顧客満足の複雑さ135「利用者側に立ったシミュレーションを」

先の見通しが立たない状態というのは、健康にも悪い。それがコロナウイルス感染騒動だろう。世界で感染が広がる中、英国船籍、米国運営会社のクルーズ船をめぐる日本の対応への批判などを言っている場合か、といささかしらけてしまうが、ここにきてかすかな光がみえてきた。新型インフルエンザ治療薬アビガン」の患者への投与を始めたと厚労省が発表した。新型コロナウイルスのような「RNAウイルス」の増殖を抑える効果が期待できるという。富士フイルムが開発したらしい。ほとんどの人が免疫を持たない新型インフルエンザの発生に備えて約200万人分が備蓄されている。実際に効果があるかどうかは確定できないが、朗報には違いない。服用の結果、重症化を防ぐ効果が確認されれば、まずは大きな関門を突破できる。世界に貢献できることを祈りたい。 

さて、先般、同エリアで二か所の宿泊施設を利用する機会があったが、宿泊費は二倍近くの差異があった。片やビジネスホテル系、一方はシティホテル系といったところか。いずれもツインタイプで寝心地は遜色がない。寝具、パジャマ、ベッドの広さにこれといった違いは無い。大きく異なるのは水回りだった。ビジネス系は言わずもがなオールインタイプで、シティ系は洗面台とトイレ、浴室の三種がそのまま横並びのセパレートタイプだった。価格の二倍差は、まさに広さからくる水回りの構造差に尽きるということか。ただ浴室利用の場合、シティ系は脱衣場所が無く、廊下で入浴する準備をせねばならない。むしろビジネス系の方が使いやすい、といった皮肉の一言も出そうになる。せっかくの広さがありながら、使う側に立ってのシミュレーションが不足している結果だと思える。独立型トイレはともかくも、浴室は洗面所と行き来できるタイプにしておくと、そこで脱衣もしやすいし、入浴後も便利だ。そのホテルでは入浴後は廊下で体を拭き、着衣するという極めて妙な具合だった。 

今まで、かなりの宿泊施設を利用したが、まさに前述の如く、実際の使い勝手に感心するほどの満足を感じたことは少ない。どこか、使いにくいことがある。思えばそれらはすべて、シミュレーション不足に尽きるといっても過言ではない。想像力の欠如と言い換えても良い。先のビジネス系のように絶対的狭さからくるオールインタイプはまだ許せるが、せっかくの広さを持ちながら、その広さを快適さにつなげ得ないシティ系の方が知恵が無い。鏡にしても、洗面台だけではなく、部屋のデスクにもある程度のものがほしい。化粧などに時間がかかる女性が洗面台を独占せずに済む。またグラス類があまりにもお粗末なところが多い、というか、用意されていない。結局、部屋で楽しむビールや水割りなどは、洗面台にあるプラスティックのコップで飲むはめになる。盗難防止なのか、破損を恐れてのことなのか、いずれにしてもそこにゆとり感は感じられない。今後益々、快適な住空間が増えていく中、プロともいえる宿泊施設が提供する贅沢感、ゆとり感は、まだまだ追い求めるべき課題は多い。

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 顧客満足の複雑さ134「非常時における日本の国力と伝統回帰 」

    顧客満足の複雑さ134「非常時における日本の国力と伝統回帰」 

特定国の減少はあっても、中国人訪日客の圧倒的人数で、訪日観光客数はむしろ増加している現状に、関係者の安堵する顔が見られた矢先の衝撃だった。いわずもがな、中国発のコロナウイルス騒動だ。極めて深刻な状況がすぐに解決するとは思えないが、一日でも早く、終息に向かうことを願わずにおられない。1月27日の中国当局による海外への団体旅行禁止などの出国制限の前に、すでに多くの中国人観光客が訪日し、相応の春節効果はあったものと思われるが、問題はその後だ。海外からの観光客増加による経済効果は今や多大なものがある一方、他国の事情で大きくその効果が影響を受ける。何も観光産業だけではなく、経済そのものが他国事情に大きく影響されるのはどの国も同様だろうが、その振れ幅を出来るだけ小さくするには、やはり自国が圧倒的かつ絶対的優勢を保てる資源と技術を持っているかどうかにかかっている。日本はどうなのだろうか。心配になってきた。こういう有事の際には、国力がすべてを左右する。

インバウンドで客室90%以上を占めるホテルがある一方で、国内客中心の宿泊施設もある。地域性が大きくかかわっているが、客層はある程度の多様性に満ちている方が、経営上安全に決まっている。自社にとっての黄金バランスを見極め、それに近づける工夫と経営手腕が問われる。外国人観光客だけに対象を絞ったビジネスが、将来にわたって盤石であり続ける保証などありはしない。まだ自国民のみで経営が成り立つなら、それを良しとする方が安全性は高い。大阪の心斎橋筋の両脇を固める店舗群は、見る限り7割以上がインバウンド用の店に替わった。老舗が軒を連ねていた昔の面影はない。中国人客が姿を消した場合、一体、心斎橋はどうなるのか?予想もつかない。

さて、既存のシティホテルに限らず、外資系ホテルでも、最近は和の風情を積極的に取り入れている。これも増加する外国人客向けの異国情緒提供策だとは思うが、率直に歓迎したい。生活そのものが洋風化した中で、和の美の再認識と採用は、日本文化のルネッサンスともいうべき位置づけもできる。外国人客のみならず日本人客も、周辺で失われた日本の伝統美を、そこで味わうことが出来る。一昔前はホテルといえば、各家庭には無い豪華さと洋風美があこがれの対象だったが、今や自宅の方が便利で快適という人は山ほどいる。水回り然り、寝具然り、インテリア然り。結構、高級な施設でも、どこか使い勝手が悪いものだ。となると雰囲気で勝負となるが、インテリアの豪華さだけでは飽きる。その面でも一流のホテルが、静謐ともいうべき日本の伝統美を取り入れた品格ある雰囲気造りに熱心であるのは、繰り返すが、日本文化のルネッサンスだと胸を張ればよい。

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 顧客満足の複雑さ133「観光産業国内消費増大の為に 」

     顧客満足の複雑さ133「観光産業国内消費増大の為に」 

あけましておめでとうございます。昨年は大型台風が日本を続いて襲い、甚大な被害が出ましたが、台風統計からみれば上陸数並びに大型度合いは平年を突出してはおらず、被害の大小は上陸したエリアの地形や住宅密集度も影響するということでしょうか。統計が取られ始めた1951年から2019年までで、上陸数が最も多いのは鹿児島県の41件で、高知26件、和歌山24件と続きます。いずれも山間地区が比較的多く、また台風への警戒度も高いことによる被害のくい止めも多少は考えられます。いずれにしても、いつどこにでも災害は襲ってくることを肝に銘じるべきですが、それがなかなかに難しい。ともあれ、今年は穏やかな年であってほしいものです。 

さて、日本の観光業において、訪日観光客数の増加は特定国の減少はあっても、集客増加を目指す意味では、まだまだ伸びしろがあるとみていい。ただ観光消費額をみると、2016年度の総額26.4兆円のうち、約21.4兆円が国内消費、つまり日本人による日本国内観光の消費額であり、大きな部分を占めているのだ。日本人による海外旅行消費額が1.4兆円。そして観光政策として力を入れている訪日旅行客の消費額は3.6兆円であった。しかし2018年度の国内消費額は約20.5兆円と4%ダウンとなった。一方、訪日観光客消費額は4.5兆円と急増したものの国内の消費減少を埋めるには充分ではない。となるといかに国内消費を高めるかの政策により力を入れてほしいと率直に思ってしまう。国内観光消費の減少は、少子高齢化が免罪符となりそうだが、本当にそれでいいのだろうか。果たして、国内観光消費を増やすための現実的な政策に、力を入れているのだろうか。 

国内観光消費をあげる最も有効的な対策は、旅行しやすい土壌を作ることだ。一泊泊二食型から二泊以上の長期滞在型旅行の推進は、確実に消費額を押し上げる。そのためには、まず休日のあり方の抜本的見直しが必至となる。ただ祝日をやみくもに増やしても、大きな成果は得られない。一定の日に一定の客が集中して押し寄せるだけで、年間を通じての底上げにはならない。休日法を作り、大型連休の各企業分散化を図るとともに、有給長期休暇の推進とそれに伴っての補助金、長期滞在型宿泊施設の増加など、すぐにでも手掛けるべき課題は山積している。いくら国が連休を増やしても、旅行業者や宿泊施設が瞬間的に儲かるだけで、持続した消費を約束できないのが現実だ。今の観光対策は古い。インバウンドの増加も喜ばしいことではあるが、その前に国民による消費減少を止めることの方が重要なのは明白だといえる。次に、清潔で無駄をそぎ落とした、安価な宿泊施設の進出が望まれる。一泊二食に3万円以上支払える層の増加も勿論望ましいが、連泊型旅行をサポートする新たな施設の登場が必要だ。サービスの省略化でサービス人員を可能な限り減らすことで労働生産性を上げ、一泊1万円以下を実現するのは可能だ。また居酒屋形式の食事処を併設することで、連泊対応可能なバラエティ豊かな食環境を整える。若者向けに施設に自炊機能を持たせる方法もある。とにもかくにも、休日のあり方の見直しと共に、廉価で充分に利益が出るビジネスモデルの構築が求められよう。

        

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