顧客満足の複雑さ162「日本人観光客を満足させよ」
政府は、6月10日からの訪日観光客の受け入れ再開を表明した。コロナ感染拡大を防ぐため、当面は旅程を管理しやすい添乗員同行のパッケージツアーに限定するという。併せて、国際線発着を新千歳と那覇の両空港でも再開し、全体で7空港が訪日観光客の窓口となる。2年ぶりとなる解禁は、関係各社ならびに各観光地にとって、待ちに待った朗報となりそうだ。海外観光客の解禁は世界的な傾向でもあり、日本も調整をとったということだろう。
訪日観光客数の推移をみると“消滅”という言葉が似合いそうな状況ではあった。2019年に最高の3,188万人を記録したが、翌2020年は約412万人と87%の減少となり、2021年は24,6万人でまさに“消滅”した。一方、国内観光客数は、2019年の延べ5億8600万人に対して、2020年は2億9000万人と約半減となった。しかし海外観光客が“消滅”した2021年は2億6700万人とコロナ禍にあって健闘している。消費額も2019年の21兆9000万円にははるかに及ばないが、9兆円の内需をもたらした。この時期、大阪心斎橋・京都中心部を見たので、この数値は納得できる。日本人観光客がゆったりと楽しむ姿があった。訪日観光客の増加は経済的な効果と共に、日本という国を知ってもらう絶好の機会でもあるので大いに期待するところではあるが、今後は良い意味で国内観光客とのすみわけが欲しいところだ。
フランスではコロナ禍にあって、政府の国内観光奨励対策によって2021年の各地方の観光客受け入れは2019年並みにV字回復したという。一方、首都圏であるパリは無残な状態が続く。訪日観光客が全国に散らばる日本と微妙に異なる傾向だと思う。東京・大阪・京都は世界的にみて魅力的な観光地だが、各県もそれぞれ至宝ともいえる観光スポットを持っている。交通の便も良い。ただ受け入れ側が観光客に満足してもらう真摯な対応を徹底しているかといえば、疑問だ。ぼったくりの観光地、醜悪な見世物的な施設、魅力が全くない道の駅、etc、実際に経験したので間違いはない。日本人観光客をも満足させ得ないところは多い。訪日観光客の増加を期待するより前に、目の確かな自国の観光客を満足させてこそ、内需消費の恩恵を安定して受けられるだろう。 2022年6月3日 間島