顧客満足の複雑さ159「フランス、この不可解な国」
多分、フランスは、女性にとって憧れの対象として語られることが多い国のひとつだろうと思う。コロナ禍以前は、パリ首都圏には世界から年間5000万人以上もの観光客が押し寄せていた。文化芸術の都として燦然と輝いているようだ。然し世の中には自分のような、ひねくれ者?もいる。時代は随分とさかのぼるが、大学での第二外国語はフランス語志望が圧倒的に多い中で、あえてスペイン語を選んだのは、フランスという国へのシンパシーが無かったからだ。世界史の中で見るフランスは、自国繁栄の礎を築いたルイ王朝(ブルボン王朝)の第16世国王夫妻の首をはね、その後、軍人ナポレオンを皇帝にいただいたものの、そのナポレオンは反仏大同盟軍との戦いのはて、幽閉地のセントヘレナ島で没するという、日本では考えられない歴史を持つ。第二次世界大戦では、パリはいとも簡単にナチスドイツに陥落し、英米連合軍によって解放されるまで、長く支配下におかれた。そのフランスが戦後、戦勝国として核を持ち、国連常任理事国として君臨できるのは、ドゴールという抵抗軍の英雄がいたからだと思うが、何ともうまく立ちまわる国、という印象が抜けきれなかった。今でも基本、その考えは変わらないが、ここにきてそのしたたかさと、芯の強さに、舌を巻くことが多い。
もっとも、フランスは日本文化への理解度は高い。相撲がアメリカで公演されたとき、彼らにとってあまりの異質な文化に失笑がもれたというのは、有名な話だが、フランスでは好意をもって受け入れられた。元大統領のシラク氏が大の相撲ファンなのは周知の事実だし、浮世絵を始めとする日本文化への憧憬も深く、料理面でも有名なシェフの日本料理への探求心も吃驚するくらい深いものがある。また自国文化を守る力は、日本も大いに見習うべきで、“シャンパン”は仏のシャンパーニュ地方で生産される発泡ワインのみに与えられる称号である、と世界に宣言したのをはじめ、フランス産の価値を守るのに努力を惜しまない。加えて、食料自給率127%を誇っているのは2003年頃からの農業政策の賜物であり、自給率38%の日本の政治・行政には及びもつかない大胆な政策実行力を持つ。そして今、驚くのは、マクロン大統領が、それまでの原発依存度を減らす政策を転換し、最大14基の原発増設計画を発表したことだ。地球温暖化対策の一環として「原発のルネサンス」を実現するという。2028年から開発に着手する。その政策完遂の暁には、食料と電気の2大インフラとも自国でまかなえるばかりか、他国に売ることも出来るだろう。一体、フランスにどれだけの富がもたらされるのか分からない。
1月27日付けで、菅直人氏ら日本の元首相5名が連名で、「脱原発と脱炭素の共存は可能」の主張に基づき、EUの委員長あてに欧州での原発推進の動きに異を唱えたという。フランスの現実主義と比べて、まるで夢見る幼稚園児のように感じる。さてはて、長年のフランスへの忌避感がここにきて大きく転換しそうだ。 2022年3月1日 間島