顧客満足の複雑さ109「滅私奉公に頼ると危険」 間島
あけましておめでとうございます。今年も様々な事変や気象問題が起こると思いますが、そのときそのときの適切な対応で乗り切ることが出来ますように。
訪日外国人観光客数の伸びが止まらない。郊外に住んでいると実感はあまりわかないが、ひとたび街中に出ると、場所によってはここは外国か?と思えるほどの状況を見ることも多い。売上増加に湧く業界にとっては、まさに恵みの雨どころか、笑いが止まらないに違いない。宿泊業界も恩恵を受けている業界のひとつだろう。ただ都市部と地方、ホテルと旅館との差異は歴然とあるようだ。
客室稼働率ひとつをとっても、最近のデータではシティホテルで78.7%、ビジネスホテルで74.4%、旅館で37.1%と、大きな開きがある。地域別では、全国1位の84.8%の大阪府と比べ、47位の長野県は35.4%で半分にも満たない。やはり稼働率の低さは収益効率にもろに響いている。ベースとなる経営手法の差異がもたらす影響も大きい。今や宿泊取引の7割はオンライン予約だが、力のあるサイト運営者への仲介手数料の高さで、うまく活用できていないところも多い。会計システムも、宿泊部門と飲食部門との区分別管理会計を採用せずに、旧態依然としたどんぶり勘定を続けていると、細部の分析や方策をたてるのも難しいのは明らかだ。
さて、先日知人の縁で、新規オープンしたばかりのビジネスホテルに宿泊させてもらった。大阪南の一等地ともいえる場所なので、当然にターゲットは外国人観光客である。そこで感心したのは、無駄を排したコンパクトの追求と質の保持の共存だった。充分な広さと寝心地を提供しているツインベッドを中心にシャワーブースと洗面ルーム、別室のトイレルームのみが配され、それらすべてに、必要な備品類が内蔵されており、他のビジネスホテルよりも明らかに上質のもので揃えられている。無駄なものがないという点で、今まで経験したことのない次元のホテルだった。極めつけは朝食仕様で、殆どの食器備品に使い捨て素材を採用しているのには驚いた。食べ終えたゲストたちは、それぞれ用意されたボックスに皿や食べ残した料理を捨てていく。内容は洋風に特化していたが、ドリンク類や基本的料理、パンは数種類用意されていた。超コンパクトでモダンな部屋と共に、観光で忙しいゲストたちは充分に、満足するだろう。配膳サービスのスタッフ数は劇的に少なくて済む。洗い場も殆ど不要だ。このホテルの利益率はかなり高いものと思われる。
他方、旅館はどうしても人の力、働く人のがんばりに頼りすぎる感がある。能力に個人差もあるが、お客さんに喜んでほしい、というおもてなし精神は、時として従業員を疲弊させ、結果として離職率を高めてしまう。複雑な旅館の仕事をITをうまく利用して簡素化し、作業の無駄を省きながら、料理を特化したり、部屋の構造を見直したりすることで、売り上げを倍増させた旅館もある。食材ひとつをとっても、在庫管理の徹底で無駄を排する努力も必要だろう。
2018年1月3日