食文化の豆知識 92 [食文化の現状71]
昨年秋に全面リニューアルオープンを果たした、阪急うめだ本店は色々な意味で新しい
百貨店像を具現化しているようです。通路が広く、ゆったりとした展示構成はもとより
最高レベル機能を備えた化粧室や大小の文化ホールを備えています。何と言っても画期的
なのは、9階に出現した4層吹き抜けの面積2000㎡の大広場でしょう。今後魅力的な
各種イベントを開催して欲しいものです。梅田の一等地にある利点を生かして、文化・
情報の発信地になれば、まさに新しい百貨店として客の支持を集めることでしょう。その
為には、ハード完成で終わらず、今後はソフト面での企画力が望まれます。
12,13階に出現したレストラン街は、百貨店らしく、26店舗の和洋中ほかが揃った
バラエテイ豊かな展開になっています。ただ、周辺地域にはすでに次々と新しい商業施設
が出現しており、それぞれにレストラン街を形成しています。色々な店に行きたい気はあ
っても、お腹はひとつなので、なかなか訪問できない辛さを感じるほどに、この界隈のレ
ストラン群は百花繚乱状態となっていますので、阪急うめだ本店のレストラン街も、どっ
と人が押し寄せるというより、お客さん達も落ち着いて探索している、といった印象を受
けました。350もの席数を誇る大型レストラン・シャンデリア テーブルは、百貨店大
食堂の草分け的役割を担った阪急百貨店として、まさに面目躍如の空間を演出しています。
大阪人ならだれでもが見知った、旧コンコースの天井を飾ったシャンデリアや、ガラスモ
ザイク壁画などが配されたレストラン内は、各所で違った顔を見せてくれます。勿論他に
も、関西なじみの味や伝統の味、老舗の味がそろい、関西初登場の店もあって、楽しみな
スポットが増えました。早速、懐かしい中国料理店に行ってきました。久々の梅田再登場
の店です。今風の料理も加わって、安心出来る技は健在で、満足度は高いものでした。
このレストラン街で、おや?と思ったのは、著名シェフを看板に掲げる、フレンチやイタ
リアンの店を見かけなかったことです。新しいレストラン街には、今までは必ずといって
いいほど、人気シェフが率いる店が出店していました。レストランも数的に飽和状態にあ
るので、出店がかなわなかったのでしょうか。それとも企画段階から予定はなかったので
しょうか。いずれにしても、充分な店舗群なので問題はありませんが、それでもすでに客
を多く集めている店と、ちょっと寂しい店との線引きがなされており、この業界も厳しい
状況下にあるようです。
25年3月2日 間島万梨子 食生活アドバイザー