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顧客満足の複雑さ192(旅館経営の厳しさ)

       顧客満足の複雑さ192「旅館経営の厳しさ」 

いわゆる企業としての「宿泊施設」は、なかなか望ましい利益をあげにくい体質にあるらしいが、その倒産率は突出してはいない。2023年時点で、日本のホテル・旅館総数は5万523軒だが、倒産は67軒で倒産率は約0.1%となっている。飲食店の2023年度倒産件数は930軒で、総数約82万5000軒の0,1%前後と、宿泊施設とほぼ同率だが、閉店・廃業を含めると、はるかに飲食店の廃業率の方が高いものと思われる。宿泊施設は負債過剰による倒産が主であるのに対し、飲食店は売り上げ低下と後継者不足が主な原因の、負債の無い閉店・廃業が非常に多いからだ。その意味では、宿泊施設は、客が入っていても苦しい経営状況があり得るのだ。 

宿泊施設の中でも、特に旅館はビジネスホテルなどと比べ、人・モノ・カネが非常に多くかかる。宿泊した方ならお分かりだろうが、部屋・料理・風呂に、パブリックスペースや土産店の保持にかかる人手と経費は半端なものではない。部屋は毎度の清掃に定期的なリニューアル。料理は飲食店と同様の手配が必要で、風呂も毎日のケアが必要だ。備品の管理も半端ではない。そこで起こるのが資金ショートで、今や銀行のお世話になっていない施設を見つけるのは難しいかもしれない。それらを考えると、大手グループの傘下に入り、資金や人手のスケールメリットにより経営がなりたつ方法を選ぶのも、生き残り戦術の手段だとは思う。

そして今、大きな合併ニュースが耳に入ってきた。温泉宿を展開する大江戸温泉物語と湯快リゾートが合併し、全国66施設、日本最大級の温泉宿グループになったという。数的には大江戸が37施設で、29施設の湯快を上回るが、完全平等合併らしい。大江戸の方が若干早いものの、両社ともに2023年前後に、アメリカのファンド会社ローンスターグループに売却されている。望ましい経営状態ではなかったということだ。大江戸と湯快の成り立ちは時期も2001年・2003年とほぼ同じだし、手法も確かによく似ている。その意味では合併に至るまでの親和性は高いのだろうと推察するが、なんとも劇的な収束を見せたものだ。両社の軌跡は異なるものの、経営不振の旅館を受け継いでグループを大きくしてきた手法は同様で、傍目には、両社ともに勢いがありそうだったが、資金面から皮肉なことに両社ともに同じファンド会社の経営下になり、結果として2024年11月に新設持株会社GENSEN HOLDINGSをたちあげて、ひとつになったというわけだ。当面は、湯快リゾートの社長がGENSENの社長の任にあたるという。ただしローンスターグループの傘下であるのは変わりない。利用者にとっては、今回の合併でプランの選択肢が広がり、楽しみが増えるだろうが、各観光地で頑張っている孤高の老舗旅館の存在がますます価値あるものに思えてくる。       

   2024年12月1日 間島

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顧客満足の複雑さ191(国内・海外旅行者数から見る経済)

顧客満足の複雑さ191「国内・海外旅行者数からみる経済」 

旅はいいものだ。見知ったところであっても、見知らぬところであっても、非日常感を味わえる。それは刺激であり、緊張であり、感動であり、喜びでもある。日本に来る外国人観光客の高揚感を隠し切れない表情をみるに、旅を楽しんでいる気配が伺える。外国に観光に訪れる機会に恵まれた彼らが、少し羨ましくもある。2019年には3188万人と過去最高の訪日人数を記録し、その後のコロナ禍で激減したものの2023年には2500万人、そして2024年は2019年を上回る3310万人の訪日人数が推定されている。一方、日本人の海外渡航者数は2019年の2008万人をピークとして同じくコロナ禍で激減。2023年には962万人。そして2024年は1450万人と予想されており、外国人観光客数のV字回復と比べ、日本人の海外旅行者数の伸びの鈍化は明白である。様々な理由があろう。いまだコロナ禍に慎重であること、安全面その他の現実論として、訪問したい国が減っていること、そして何より円安を始めとする経済的要因があげられる。                                     

一方、国内旅行者数はどうなのだろう。旅行宿泊者数は2016年の延べ3億2566万人をピークに、コロナ禍を経た2023年は2億8105万人。2024年は2億7300万人と予想され、観光庁の言う「弱い動き」が如実に表れている。海外旅行と比べ、日程・安全面ともに断然ハードルが低い国内旅行でも、回復しきれていないのだ。国内旅行では為替ルートは直接の関係は無いのにも拘わらず、需要が伸び悩んでいる。これも様々な要因があげられるが、一番の理由は費用の増大化だと思われる。宿泊費用の値上がりに、所得の伸びがついていけないでいる。光熱費やガソリン代の値上がりをはじめとして、あらゆる物品が値上がりしている現状下で、宿泊費用も上げざるを得ないのはもっともなのだが、結果として、旅行者数が回復できていない。日本人は貧しくなっている、という現実は、国家の最重要課題だと思うのだが、その危機感は時の行政・立法府から伝わっては来ない。各自治体の動きは臨機応変的なものがあって、なかなかに策をめぐらした政策もかいまみられるのだが、ここ数年の国の政策からは、笛吹けど人踊らず、ならず、笛吹けど企業踊らず、の、無力感が伝わってくる。民を豊かにすることが、国家最大の役割りとするならば、ここ数年のそれは、その役を果たしていない。 

国内旅行者数の推移だけをみても、その国の真の力がみえてくる。海外旅行者が消費する額に喜んでいる場合ではない。日本独自が生みだす儲け・利益の増加を図らずに、日本国民の豊かさは望めない。さてはて、かつてのエネルギーが日本によみがえるであろうか。 

      2024年11月1日 間島

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顧客満足の複雑さ190(安心できる国?)

       顧客満足の複雑さ190「安心できる国?」 

台風シーズンの到来は、何かとやきもきするものだ。かつてない迷走を続けた台風10号は言うに及ばず、おおよそ、その進路は予想通りにはいかない。それでも真っすぐに予想通り?に進む台風もあって、日本には影響を及ぼす危険性皆無となると、上陸された国には申し訳ないが、正直、ほっとする。しかし油断は禁物だ。いつ来てもおかしくないのが、地震と台風で、政治家が呪文のように唱える「安心できる国」などはどこにもない。いつどこでも危険は潜んでいるわけで、ユートピアはどこにも無い。日本にくる外国人観光客が、日本をユートピア化してくれることもあるようだが、それはあり得ない。ただ比較対象すれば、世界の中では日本は随分と安全な国たり得るのだろう。 

その意味では、最近、中国で日本人男児が中国人に刺され死亡した事件は、まさに「危険は隣り合わせ」の痛ましくも哀しい出来事だった。異国での事件はやはり、原因結果ともに両国の関係に微妙に左右されるものだ。もしも日本で中国人男児が日本人によって刺殺されたとすれば、日本政府はどういう対応に出ただろうか。また中国での被害男児が米国国籍またはフランス国籍であった場合は?それぞれの「安心」に対する認識度合いの相違が見られただろうし、国家間関係の温度差も勿論、あっただろう。「グローバル化」という言葉もまた、「安心」と同様に、念仏に近いものを感じるのだが、それは不幸なことだろうか。 

国の強さは、武力のみで守られるものでもないが、先の政治家たちの発する「安心できる国」の真意を問うてみたいとも思う。受け手もそろそろ、「安心」は各自の根底にある強さに基づいてこそのささやかな「果実」なのだと認識すべきだろう。強さは、優しさと相反することはないが、少なくとも、「いい格好しい」や「優柔不断」や「事なかれ主義」とは全く異なるものだ。正義を問うのはなかなかに難しいが、真実を問わない国・国民にはなりたくはない。元に戻ろう。ならば「安心できる国」とは?その答えはなかなかに難しい。多分、政治家の本意は社会保障制度をメインにとらえているようだが、なおさらに安心できないではないか。 

さて最近、テレビの時事番組で、「内需拡大」の必要性を説く主張をよく耳にするが、いまさら何を、の感もある。ただ日本経済において唯一?正しい方策だとも思っている。減少したとはいえ、この国土に1億2488万の人がいるのだ。その多くが真面目で働きものである。その人達にお金を使ってもらうには、どういう政策が必要か、など、小学生でもわかると思うのだが。とここで、自民党の新総裁決定のニュースが入ってきた。はてさて、この方は日本経済の躍進に注力されるだろうか。またしても緊縮財政?いずれ判明するだろうが、株価は急落した。

              2024年10月1日 間島

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顧客満足の複雑さ189(国際大会の特殊性)

      顧客満足の複雑さ189「国際大会の特殊性」 

何かと問題?の多かったパリオリンピックだったが、何よりテロを防いだという、この一点では褒められてよい。開催前の鉄道事故が、パリの対テロ姿勢を強化させたのだろうか。期間中、体調不良や窃盗に見舞われた選手は気の毒だったが、全員無事に帰国できたのは喜ばしいことだ。しかも金メダル20個を獲得して。自国開催大会を除いての最高のメダル数は、フランスでの開催という、決して好環境とはいえない条件下で、よく頑張ったものだと思う。今回のオリンピックでは、フランスの印象低下を嘆く向きもあったようだが、むしろ素のフランス色がはっきりとわかりやすく表れた大会だったといえるだろう。その点では大成功に違いない。パラリンピックもつつがなく終えてほしい。 

国際大会での競技は、勿論、各国が競うわけだが、日ごろ愛国心など歯牙にもかけないメディアも、目の色を変えて熱を入れての報道になるのが、面白い。これは悪いことではない。たまたまスポーツ競技の争いであって、国同士の究極の争いが戦争なのだ。平和の祭典オリンピックも過去度たび、戦争の影響を受けてきた。いまも勿論、局地戦の影響はあるものの無事に終えた背景には、どのような努力が積み重ねられたのかと敬意を表したい。ただ益々増加する多民族化には多少の違和感もある。良い悪いではなく、国の独自性が徐々に薄れていく。日本でも多様化が進んでいるが、欧米のそれは想像を超えている。特に陸上、バスケ、柔道などは、まさに一国における顕著な民族多様性をみるようだ。フランスはその代表格といってもよいだろう。ただし、観客席は従来のフランス人で多くを占められているところが、またこの国の特殊性を表しており、なかなかに興味深いものを見せてもらった感がする。                                 

さて、2025年の大阪国際万国博覧会もあと1年に迫った。これも立派な国際大会である。しかもオリンピックは都市主催だが、万博は国主催なのだ。大阪万博は2018年、博覧会国際事務局総会で開催決定した。時の経済産業相は政界の実力者世耕弘成氏、総理大臣は安倍晋三氏だ。そして大阪府知事は松井一郎氏。55年ぶりとなる大阪での博覧会開催決定は大きな喜びをもって迎えられた。が、しかし、コロナの影響やウクライナ戦争等によって世界情勢は大きく変化したのに加え、資材や人件費の高騰が追い打ちをかける。主に財界で構成される万博協会と、実働部隊の大阪府市との調整もなかなかにスムーズにはいかないようだ。政府の力も弱くなった。様々な万博の不備をあおるメディアの批判の矢面に立たされる大阪府市はご苦労なことだと思う。ま、これもなるようになるものだ。全く無責任このうえなくて申し訳ないのだが、あのフランス・パリでも何とかオリンピックを開催できたのだ。大阪府市と財界の力を結集できれば、できないことはない。まずは、万博協会が示した紙チケットの厳しい除外日ルール案が撤回され、大阪府市が主張する自由に入場できる案が採用されれば、やはり万博には行ってみたいと思うのだが、どうなることか。                          2024年9月1日 間島

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顧客満足の複雑さ188(国内旅行需要の拡大への努力が必至)

  顧客満足の複雑さ188「国内旅行需要の拡大への努力が必至」

コロナ禍を経て、日本を訪れる外国人観光客数が好調に推移しているようだが、旅行消費額は断然に日本人の国内旅行消費額が上回る。その額、令和5年で21兆9千億円で、インバウンド消費の5兆3千億のざっと4倍以上だ。一人分需要額はインバウンドが勝るだろうが、まさに国内需要こそが、宝の山なのだということを改めて業界も政府・行政も認識してほしい。そして国内需要は、周辺に及ぼす様々なストレス?なく、まだまだ伸びるはずだ。そこが、どの国とは言わないが、外国人観光客が落とすお金が国の収入の大きな柱となっている国との違いで、適切な対策・方法で国内需要は増えて、経済に寄与するだろう。大都市や観光地では、外国人客をターゲットとした高級ホテルの新規開業が加速しているが、果たして望ましい稼働率が確保できるのか、これからの課題となる。キャラクターや派手なジャパネスク様式を導入したコンセプトルームは一時の話題を集めても、ホテル自体の値打ち度を高めはしない。格式あるホテルは、人が要となる。洗練された、それでいてフレンドリーな接客ができる人材確保こそが今後の急務となるのは目に見えている。 

内需拡大に寄与する国内旅行需要を高めるための策は色々ある。まずは現役勤労者への取り組みのためには、休日の見直し・整理と、休暇の取り方の大変換が求められる。需要の拡散化だ。今は国が決めた休日の元で需要が集中するがゆえに、アンバランスな価格体制と不安定なサービス体制が、供給側の質そのものの値打ちを落としている。1年365日、ほぼ安定した価格こそが安定した内需を拡大できるというものだ。それにより宿泊施設そのものの力の底上げになるし、優れた施設がより活性化するだろう。いわゆる、ぼったくり価格が消滅する。一部政治家の強権により一度出来上がってしまった休日体制を転換できるかどうか、はなはだ心もとないが、安易に作りすぎた休日の見直しは急務だと思う。公的休日は元旦三が日のほかは日曜日だけでよく、年間休日数を法的に義務付け、自由に選択してもらうのだ。国はなるだけ国民の生活シーンに介入しないほうがよい。その方がうまくいく。 

一方で、休日にあまり影響されない高齢者へのニーズに応えることも勿論望まれる。施設そのもの見直しと新しいツアーの開拓だ。少子高齢化が加速する中、益々増えていく高齢者層の需要を喚起できれば安定した消費が見込める。施設内で段差を無くすといった基本的な対応から、より快適で時代に即したデザイン力が求められる。コンパクトで衛生的なベッドゾーンの設置は今後の急務であり、和風の部屋にあってなお、椅子・テーブル式の用意があれば、全世代に通じるリラックス度基準の向上となるだろう。和風文化を保ちつつ体に優しい空間の提供が望まれる。またツアーそのものの発掘もまだまだ発展途上だ。高齢者の体力に合わせた内容は多岐にわたる。家族で参加できるのか、車いす参加が可能なのか、見て回るだけのツアーではなく一点重視型なのか。ただ、ゆとりのあるスケジュールであればそれでよし、では無い。魅力の提供に知恵を巡らせてこそ、内需拡大の未来はある。

                  2024年 8月1日  間島   

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顧客満足の複雑さ187(理解不明のこと多し)       )

      顧客満足の複雑さ187「理解不明のこと多し」

 メディアは、マイナンバーカードが、いたくお嫌いのようだ。言葉を変えれば、憎んでいるようにもみえる。確かに、トラブルが続いているが、国民の70%がすでに申告取得したらしい。メディアが取り上げるのは、不平不満の声ばかりなので、まだ半分も取得率はいってないだろうと思っていたのだが、70%とは驚いた。近いうちに90%には達するにちがいない。当方は3年以上前に取得した。運転免許を持っていないので、顔写真付き身分証明カードとして、重宝している。 

メディアが取り上げるカードへの攻撃材料としては、行政での手続きの不備、情報の漏洩などがあり、次にマイナンバーカードによる保険証機能一本化の医療現場での混乱、それと個人情報などのプライバシーが守れないと危惧する一般人の不安だ。まず行政の不備は、そもそも日本の自治体行政のデジタル処理能力自体が低いことが大きい。各役場に行けばわかる。仕事をしているスタッフは半分程度以下で、まるで職業救済所かのように見えることがある。AI化、デジタル化を促進すれば3分の1程度の人間で回せるだろう。そして医療現場だ。医療現場もデジタル化が進んでいない。大病院などは以前と比べて機械化やオンライン化が進み、受付から診察、清算の行程はかなりスムーズな流れになったが、小中規模の病院の段取りの悪さ、業務の流れの非効率性は改善されてはいない。医療現場は、顧客あってのビジネスという意識より、神のなせる技意識なのだ。その点、街の開業医のほうが使いやすいが、医療の限界がある。今回のマイナンバーカードの保険証一体化も時間はかかるがいずれは定着するだろう。メディアがあおる一般人の不安は理解しがたい。プライバシーというが、日本人なら出生の時点で生年月日、性別を届ける。カードによってほかのどのようなプライバシーがおかされるというのだろうか。多分、銀行口座の情報はいずれインプット要となるだろうが、現存の通帳情報が明らかになるのが嫌ならば、新たな銀行で口座を開設すればよいのだ。同銀行での普通預金口座複数開設は禁止されたが、他銀行や郵便局なら新口座開設は可能だ。個人の財産状況は早晩、国や行政が把握しようとする時代はくるだろうが、そうは簡単なことではない。マイナンバーカードを浸透させたい理由を想像するに、様々な身分偽証の回避ではないかと思うのだが、健康保険証の使いまわしは正確なデータがあるわけでもなく、偽造パスポートの把握は令和5年で5件だったらしい。ならばマイナンバーカードの浸透の真の狙いは何なのだろう。いつか分かるときがくるかもしれない。それをメディアは恐れているのだろうか? 

余談だが、大谷選手所属のドジャース球団が、日本の日本テレビとフジテレビを、大谷選手の新居の過熱報道で出入り禁止処分にしたと、ネットで大きく載ったが、各新聞やテレビではそのことは一切報道されていない。一体、事実はどうなのか。これも不可解で気味悪い。

2024年 7月1日  間島   

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顧客満足の複雑さ186(見どころ多し・鹿児島)

顧客満足の複雑さ186「見どころ多し・鹿児島」 

5月に鹿児島を訪れた。桜島と知覧が主な目的であった。桜島はその独特の形容で街を見下ろし、時に白い噴煙を出し、予想通りの存在感であった。どこにいても常にその山は威容な姿を見せてくれた。また、知覧の特攻平和会館では、しばし頭をたれるほか、どんな言葉もふさわしくないように思えた。口に出せば陳腐化してしまいそうで、ただただ心に重い何かが残ったとしか言いようがないが、20代そこそこの若者の明るい笑顔もまた切なく心に残った。鹿児島を訪れる外国人観光客数も予想を上回ったが、京都や大阪の実情を知るものにとっては、ほどほどのにぎわい、といったところで、ストレスフリーな三日間だった。 

スケジュールに余裕のある行程だったので、当然に他の様々な観光スポットを楽しませてもらった。「仙厳園」は庭や御殿を含めて、まさに眼福で、島津家の威光をひしひしと感じさせられる見どころの多い歴史エリアだった。中央からはるかに遠いこの地にあって、文化文明のみならず、維新の立役者としての力の源泉は、やはり時の殿様である島津家を抜きにしては考えられないだろう。富と力の偏在なくして、卓越した文化は起こりずらいということだ。やはりどの国も、どの地域も、自然や巨大テーマパークを除いては、人を惹きつけるのは歴史を物語る建物や庭園なのだろう。もうこれからはこのような建物が新たに生まれることはないのだと思うと、大切に守り続けていただきたい。多分それには多くの手間と資金が要る。「仙厳園」の中央、高台にある立派な二階建ての比較的新しい建造物が、園の関係者用施設の「管理棟」なのも必然なのかもしれない。もっとも行政の中心地などもほとんど、城の近辺か一等地にある。ま、何とかは高いところに上がりたがる、ともいうが、いまだに、「管理」という呼称が生きているのだと、これもまた違う意味で感心してしまった。 

鹿児島は見どころが多かった。霧島神宮にいたっては、過去の数々の神宮参りの中でも、その厳かさと重厚さは秀逸のものであった。数十年後も、その地にあって人々を見守り続け、参拝客が途絶えることはないだろう。そうなのだ。日本のみらならず、人類は過去の栄光や歴史がもたらした遺産によって、独自の魅力を放ち、そして観光客を引き寄せるのだ。これからは残念ながら、広大な歴史的建造物が新しく登場することは無い。仮にチャレンジしても人は来ない。鹿児島の「ふるさと考古歴史館」も、2017年にリニューアルされたらしいが、学校からの強制?集団訪問を除いては、多分一般客は一日数名いるかいないかだろう。立派な造りの会館で、億をはるかに上回る建設費用がかかったに違いないが、このような施設の開館がどのような事業計画の元で行われたのか、知りたい気分にもなった。時の為政者は、何かモニュメントを作りたがる。ただそこに富が集中した歴史がなければ、ただの箱に過ぎない。日本各地にも、そのような建造物は至るところにあるが、やがて消えてくのだろう。

2024年 6月1日  間島   

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顧客満足の複雑さ185(遊興街かビジネス街か)

    顧客満足の複雑さ185「遊興街かビジネス街か」

この半年間で訪問した大阪市内の飲食店は、例外なく満席に近い盛況ぶりだった。大体が金曜日利用という条件下の影響もあるだろうが、やはりコロナ禍から解放されたにぎわい感が間違いなく街に戻っているし、インバウンドの急増加が輪をかけて需要を押し上げていると思われる。もっとも、遊興街地区ではない、いわゆるビジネス街にある店を主に選んでいるので外国人観光客は少なく、男女・年齢を問わず勤め人が主流だ。なぜビジネス街を中心に選ぶのかは、私心ながら質の高い店が多いと思うからだが、予算や料理内容等をあらかじめ吟味して訪問した店は、ほとんどは期待を裏切らない。あたりはずれの差が少ないのだ。ビジネス街の顧客は、主に若者や遊興客が集まるエリアと比べ、、比較的年令幅が厚い。だから、というわけでもないだろうが、価格的には高めでも、比例して満足度も高い。

さて、ならば満足度はいかなる状態を指すのか、といえば勿論、満足した、ということだが、その肝は、第一にコストパフォーマンスの高さだろうか。ビジネス街にはとんでもなく値が張る店も混在しているので、会計時に目玉が飛び出ることになる。そんな修羅場をさけるため、あらかじめ予算はしっかりと把握しての訪問となるが、それでもなかなか予定どおりにはいかないものだ。なので、予想をやや下回る支払い結果と良質の料理が合体すれば、満足の極みとなるのだ。その結果が店としてのリピート客確保に結びつく。特にビジネス街の店は、後になじみ客となるリピートなくしては成り立たない。そこのところをよくわきまえているので、結果として競争力のある良質の店が多いように思う。反面、遊興街には観光目的化した客が国内外問わず多いゆえに、店ごとに質的に大きなばらつきがある。これは経験してみないとわからない。勿論、上質の店も多いのだが、とんでもない店も混在している。やがてそんな店は撤退して、すぐに新しい店が登場するという構図だ。遊興地区には、底力のある素晴らしい店があるのも事実なので、これは選択の自由ということになるのだろう。

コストパフォーマンス力は、単に予想よりもリーズナブル価格だった、にとどまらない魅力が加味されている。第一は料理の質だが、美味しい、の要素のみではなく、見た目の美しさ、適度なボリューム、それに接客の愉快さ、丁寧さと、居心地感の良さが加わって、コストパフォーマンス力となる。一見客が比較的多い遊興地区をあえて避けて、ビジネス街の店を主として訪問する所以は、満足度の高い店が多かったという経験上の記憶に基づく。利用者はこれからも遊興地区とビジネス街とうまくすみわけをしてほしい。ビジネス街の飲食店に観光客があふれだしても困るので、礼賛はこのくらいにしておく。

2024年 5月1日  間島   

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顧客満足の複雑さ184(ホスピタルとホテル)

     顧客満足の複雑さ184「ホスピタルとホテル」

友人が入院した。重篤な症状を抱えての緊急入院ではなく、一か月ほどを要する検査入院ということだが、やはり心配が募る。で、一週間ほど経って見舞い訪問したところ、いたって元気な顔を見てほっとすると同時に、どうか早く退院できることを願わずにおられなかった。部屋は、リラックスできる雰囲気の個室で、改めて病院の個室の利用価値を認識するとともに、病院の個室は、広さや雰囲気、それに価格は各病院で実にさまざまであるのに驚く。個室の費用を左右するのは、まずは広さ、それに設備だろうか。基本的にトイレと洗面台を有しているが、シャワー&浴室を備えているのは特別室タイプになる。勿論病室としての特別機能を有しているが、感覚的にはビジネスホテルから簡易シティホテルに近い。ただまさに千差万別、病院スタイルとしてきちんと市場価格別に整理されているわけでもない。ソファや冷蔵庫の大きさもさまざまだし、窓からの眺望もそれに加わる。家族や自分、そして知人が利用した個室も価格、広さ、設備、眺望ともに、一貫性はなく、ただただ病院側の一方的な値付け放題、といった印象を受けた。そこに市場競争感覚は無い。これがホテルとなると需要バランスや部屋の値打ち度をマーケテイング反映させた価格体制がとられる。いわば、買い手市場を微妙に取り入れたものになる。 

病院側からすれば、4人部屋くらいの方が対処しやすいのだろうが、患者側からみれば入院事情は同一ではなく、まして個人環境も大きく異なる中で、これから益々個室利用希望者は増えるものと思われる。それを証拠に個室の空きが無く、ウエイティング状態の時も多い。病院の個室は6.4㎡以上が規定らしいが、広さや設備によって価格差が大きい。某大学病院の最高特別室は1日30万円ほどで驚く価格だ。一般病院でも5000円の個室もあれば3万円前後のもあって価格差は大きい。一方、ホテル個室は9㎡の規定だが、ビジネスホテルのシングルルームの場合、大体が6000円から1万円前後までの価格内に収まる。需要競争も加わり、市場がほどほどの価格を生み出しているからだろう。 

ホテルとホスピタル(病院)はホスピスという同じ語源を共有している。いわば兄弟のようなもので、ホスピスの意味は「もてなす」だ。ただホテルとの決定的違いは、病院の場合は24時間そこで過ごす、ということだ。ならば、ホテルより快適でリラックスできる環境に向けて、部屋そのものに対する発想転換があってもいい。特に色使いを含むインテリア、眺望等に、病院共通の指針があってこそ、ホスピタルを名乗る意義もあろう。 

       2024年 3月1日  間島   

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顧客満足の複雑さ183(問題点は何なのか)

      顧客満足の複雑さ183「問題点は何なのか」

日本のGDPが4位に転落し、各メディアでかなり大きく取り上げられた。ただ、だから何?という雰囲気が国民に蔓延しているといっても過言ではない。そもそも中国に抜かれた、とメディアが騒いでいたころから、その風潮は生まれていた。そして今年はドイツに抜かれ4位に。ワールドニュースを注視している人にはわかっている。ドイツでのインフラをはじめとする値上げラッシュに国民の不満がマックスになっていることを。何も負け惜しみで言っているのではなく、そもそもGDPの解釈自体が、現代の価値感に合わなくなっていると思う。GDPは一定期間内の国内総生産を指し、極めて荒く言えば、国内で販売された商品やサービスが生み出した売り上げから、経費を差し引いた儲け総額、ということだろうか。それが国の経済力の指針と、とらえられている。しかしそれは量を指す。そこに質の計算はない。ここでドイツの新政策情報が入ってきた。小さなプロジェクトを減らし大型のプロジェクトに益々特化していくという。これがGDP押し上げの要なのか。 

エネルギー自給率も食料自給率も壊滅的に低い日本がベストの環境にあるとは思っていないが、少なくとも中国にもドイツにも住みたくはない。環境・便利さ・治安の良さ・食事の美味しさ・そして国民性etc・何をとっても日本から出ていきたいとは思わない。しかし、真剣に?GDPの復権を目指すとしたら、何をどうすればよいのだろう。経済オンチの身とすれば、即答などできはしないが、よく問題視される日本の中小企業の数が、先進国で群を抜いて多いわけでもない。先進他国もおしなべて全体で95%以上の中小企業を抱えている。となると、やはり労働生産性が低いからだという主張には納得できる。一人が稼ぎだす金額が少ないという非効率性が、GDPが伸び悩む要因と指摘する向きは多い。要するに日本には丁寧な仕事、言い変えれば手のかかりすぎる仕事が多いのだろうと思う。前にも書いたと思うが2019年飲食店数都市別ランキングでは東京が14万8582店と突出している。2番目はソールで8万3239店、3番目が中国の深せんで5万9985店、そして4番目がパリの4万4896店だ。2023年のミシェランで東京の星獲得数がパリを抜いたようだがそもそも分母が大きい。ちなみにGDP3位のドイツはどの都市も10位内に入っていない。コンビニエンスストアのセブンイレブンは、2016年のデータでは日本が1万8860店舗でダントツの1位。2位がタイの9278店舗、おひざ元のアメリカが3位の8378店舗で、あとはアジアが続く。ヨーロッパ各国は桁が違うほどに少ない。日本には何故こんなにも多いのか、の理由の一つは商圏が狭く売上げ目標が低いのだろう。 

日本では人手がかかり、小幅に稼ぐビジネスが非常に多い。そんな環境で、まだGDP4位とは立派なものだが、最新技術の開発と駆使により、効率的に大きく儲かる事業の展開以外に、日本浮上の道はないように思う。そしてその事業権利を寡占することが必要だ。人の良さだけでは国民が飢える。          2024年 3月1日  間島   

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