食文化の豆知識」カテゴリーアーカイブ

P&Cネットワークの間島万梨子がお届けする、食文化や食の安全をめぐる連載レポート。
旬の話題を含めて、食の大切さを綴ってまいります。

食文化の豆知識171 食文化の現状150(冷凍食品の未来)

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食文化の豆知識171 食文化の現状150(冷凍食品の未来) 

長く続くコロナ禍で自宅での食事回数が増えたこともあって、ケータリングやテイクアウトの利用が人気とか。新たな企業の参入もあり、成長が見込めるビジネス分野になりそうです。コロナが収まっても、仕事のスタイルが変化し、これから先も伸びることでしょう。また、冷凍食品業界も期待産業です。冷凍技術が向上し、質の高い商品も増えてきました。安いイメージのあった冷凍食品ですが、高価格帯といえる商品も結構見受けられます。日常的に、冷凍刻みネギやグリーンピースなどは重宝していましたが、各スーパーの冷凍食品コーナーの拡充と充実により、新たに好みの物を見つける楽しさが増えました。といっても、まだまだ初心者で、買ったものの、がっかりすることも結構あります。あくまで個人的な嗜好ですが、揚げ物などは満足度が低い。やはりからりと揚がった食感まで持っていくのは、難しい?一方、お好み焼きやピザなどは、これが冷凍もの?と思うほど、美味しく仕上がるものもあって、常時、冷蔵庫にストックしています。日常の食事の一助になります。 

ただ、冷凍食品棚を見ることが多くなると共に、品揃えの限界も感じます。種類は多いのですが、思わず手を伸ばしたくなるものが少ない。単なる食わず嫌いなのかもしれませんが、もっとバラエテイを増やし、質もあげてほしいと思います。また、冷凍野菜は外国産、という決まり?も、いささか願い下げです。価格面の調整が第一義となるのでしょうが、それではいつまでたっても、冷凍食品の格上げはできません。アイスものでも、ハーゲンダッツが不動の人気を保っているのは、美味しさもさることながら、食品成分のシンプルさと製造の技術力です。値段は張りますが、たまには買って食べたいと思わせる魅力に満ちています。冷凍食品で、そのような商品があるでしょうか。少なくとも、普段使いのスーパーには見受けられません。探す努力不足なのかもしれませんが、あっと言わせるような冷凍食品を是非、開発してほしい。消費者に、材料から作りあげた料理より美味しい!と言わしめるものがあれば、少し値が張ってもたまにはいただきたい。刺身なども、今の冷凍技術でもって、豪華な盛り合わせがなどがあれば、ストックしておきたいし、肉じゃがも、手作りより美味しい冷凍ものを開発してほしい。そう、これからの冷凍食品は、手作りより美味しい、という段階に入らなければ、いつまでたっても補助的な脇役で終わり、主役に躍り出ることは難しいでしょう。でも期待できそうな気配も感じます。 

          食生活アドバイザー 間島万梨子

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【第170回】 食環境の現状(149)(レジ袋有料化)

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食文化の豆知識170 食文化の現状149(レジ袋有料化)

 海洋にあふれるプラスティックゴミ問題を受けて、すべての小売り店でのレジ袋有料化がスタートしました。海を汚すと指摘されているレジ袋を市場から無くすのではなくて、“必要ならお金をいただきますよ、嫌ならご自分で袋をご持参ください“という法律です。これは一種の啓蒙活動なのでしょうか。国民皆が、プラスティックゴミ問題を真剣に考えてマイバッグを持ち、海を汚すことの無いように協力することの大切さを推し進めるという啓蒙活動?それとも店側はレジ袋費用が不要になり、売れた分は売り上げに計上するので、単純に考えて確実に利益はあがります。なので、これは経済活動になるのでしょうか? 

いずれにしても、この全店レジ袋有料化は、いたるところでほころびが見えています。例えばコンビニエンスストアの顧客は、固定客というより車客やフリの客が多く年齢層も比較的若い人達です。その人達がいつもマイバッグを持ち歩くでしょうか。レジでむき出しの商品を出されて困惑する顔が見えるようです。仕方が無いのでレジ袋を購入するか、ポケットにねじ込むか。万引きと間違われそうです。またスーパーで冷凍食品を買ってドライアイスをもらっても、専用機械に食品を吊るす袋が無いので、とても不便になりました。つまりこれはマイバッグ使用ではなく、専用の袋を常に持ち歩いていないと冷凍食品を買いにくい状態だということです。女性客が“最近、冷凍食品を買うことが減ったわ“とぼやいていました。そしてそのスーパーの、レジ袋仕様のビニール袋の商品棚は、売れ切れ状態が続いています。全く、茶番のような風景です。 

殆どの人は、スーパーでもらうレジ袋を有効利用していました。ゴミ出しに使用するのが一般的で、他にも再利用して最後はゴミとして捨てるのです。本当に不便になりました。何を買っても袋がついてこない、ということは、なにもかもをマイバッグに詰め込むことになるのですから、不衛生かつ乱雑にならざるを得ない。本も、靴も、果物も、肉も魚も、野菜も、洋服も一緒にマイバッグに?それが嫌なら、最低5~6種類のマイバッグが必要になります。店に並ぶ、過剰包装の野菜や果物を見るにつけ、頭が痛くなりました。ここは英断を持って、大型スーパー店に限ってのレジ袋有料化推奨へ戻るべきと思います。この法律を作った当事者は、細かな買い物などしたことが無い人達なのでしょうか。それとも、日常のゴミ出しなどしたことが無い人達なのでしょうか。それとも世界に向けてのポーズ作りに熱心な人達なのでしょうか。

  食生活アドバイザー 間島万梨子

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【第169回】 食環境の現状(148)(食欲促進が一番)

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食文化の豆知識169 食文化の現状148(食欲促進が一番) 

“病院食は美味しくない”という声をよく耳にします。実際、止むを得ず入院した経験からすると、それは事実です。消化器系疾患ではない場合でも、病院食を美味しいと思ったことは稀です。病気で落ちた食欲がますます落ちる。何故美味しくないのか?それは栄養を主に献立が組み立てられるからです。次には予算の問題。つまり、限られた予算の中で、いかに患者に美味しく食べてもらえるかの発想が乏しいのです。というと一生懸命献立作りに頭を悩ませておられる管理栄養士に申し訳ないのですが、“味よりも栄養”を一番におくと、だれが作っても同じです。そこには薄味の、妙な味付けの料理が並ぶのです。誤解を恐れずに言えば“栄養よりも、美味しく食べてもらえる献立作り”が必要ということです。それと柔軟性思考です。 

母が入院した際、年齢もあって食欲が極端に落ちました。病院食に殆ど口を付けない。私が見ても手を出しにくいものでした。それでせっせと、高栄養で美味しいアイスクリームを運んで食べてもらいました。ある看護師は、血糖が高いのにアイスクリームなんて、という顔をしましたが、医師のOKが出て、退院まで一体何個のアイスクリームを食べたでしょうか。それが母の命をつなぐ一助にはなったのではと思っています。

介護施設でも同様の傾向が見られます。ある施設の献立は絵にかいたような、一汁三菜。それもご飯、みそ汁、小鉢ものの内容は毎日同じ。あとの主菜1品だけが魚の煮つけであったり、塩焼きであったりするわけで、本当に能が無い。かたや違う施設の献立は変化に富んでいます。高齢者の好みそうな料理が多く出てきます。散らし寿司や丼物、お好み焼や麺類を取り入れて変化のある献立になっています。つまり柔軟なのです。それは“まずは食べてもらえるかどうか”を第一義に捉えるか否かなのです。何も、ビーフステーキや串カツなどを出さなくても、予算内でも美味しそうな献立作りは可能です。でもまずい病院食しか出せないのは“こうあらねばならない“という呪縛にとらわれているからです。このまずい食事から早く抜け出して、焼肉やお寿司を食べたい!という思いが退院を早める役目をはたしているかもしれませんが、やはり食欲促進が一番という柔軟な発想に基づいたメニュー作りが求められます。顧客満足重視の姿勢が必要なのです。

             食生活アドバイザー 間島万梨子

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【第168回】 食環境の現状(147)(今だからこそ価格安定を)

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食文化の豆知識168 食文化の現状147(今だからこそ価格安定を)

コロナ禍で、家での食事シーンが増えています。不要不急の外出を自粛する中、加えて休業中の飲食店が増えている現状下では、自宅で食事する人が多くなるのは当然のことでしょう。幸い、生鮮品に関しては健全に供給されていますが価格高騰が目立ちはじめました。冬野菜と夏野菜の収穫のはざま期にあるのも大きな原因だとは思いますが、常用する野菜群の価格が跳ね上がるのを見ると、頭が痛くなります。自宅調理が増えて、需要と供給のバランスがくずれるので価格が上がるのは当然だ、というビジネス論理は成り立ちますが、この非常時には、供給側も農協を含めて企業人としての矜持を見せてほしい、とこれは消費者側からの切なる願いです。 

市場の変化には、消費者も知恵を出す必要もあります。安定した価格の生鮮品をフルに使うということです。価格優等生野菜を手を変え品を変え、使いまくる?。一本300円もする大根とは当分さよならです。半分400円!もする白菜やキャベツともお別れです。買いやすい価格の玉ねぎやモヤシ、人参などをフルに使いましょう。いつも疑問に思うのですが、誰も手を出さない高価格野菜は売れずにしなびていきます。キャベツなど、中が黒ずんできてるのが分かります。これらはどうなるのでしょう。結局捨てられるのでしょうか。惣菜ものの材料にとて代わるのでしょうか。天候に左右され相場ものといわれる季節野菜ですが、一年を通しての価格調整への努力を目にしたことはありません。もし、されているとしたら、こちらの気づきの乏しさを恥じ入るばかりですが。 

さて、気を取り直して家での食事を楽しみましょう。出前も気分転換に利用したい。手抜き料理も堂々としていい。昼食はうどん、夕食は焼きそばでおおいに結構。幸い、日本は麺類にご飯もののメニューが豊富にあります。それも肉や野菜をどっさりと使用した栄養満点のものも多いので安心です。何も一汁三菜にこだわることはありません。この事態が収束した後には、プロの料理を味わえるのを楽しみに。

           食生活アドバイザー 間島万梨子

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【第167回】 食環境の現状(146)(無断キャンセルの予防)

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食文化の豆知識167 食文化の現状146(無断キャンセルの予防)  

予約客の当日無断キャンセル・ノーショーは、ホテルや航空会社にとって頭の痛い災厄ですが、現実にもっとも無断キャンセルが多いのは飲食店で、予約客全体の1%にのぼるともいわれています。特にグループ予約の無断キャンセルは、売り上げを圧迫し店に大きなダメージを与えます。食材のロスや席の無価値化など、被害の大きさは計り知れません。店側の当事者になってその場面を想像すると、胃が痛くなってしまいそうです。飲食店の無断キャンセルが増えたのは、ネット予約が一般化したことも理由のひとつでしょう。声が聞けない、顔が見えない状況での予約は、あくまで機械的で責任感を持ちにくいのかもしれません。経験から言えば、店に直接に電話して人数やら料理の相談をしたうえでの予約は、そこから店とのつながりが出来るように思います。だから何らかの変更もまた、必ず連絡を入れる。何故なら、予約時の声が記憶に残り、その声の主を裏切ることの罪深さを感じるからです。大げさではなく、人と人との関係はそういうものではないでしょうか。

無断キャンセルによるロス対策としては、キャンセル料の徴収や食材の有効利用、または保険での充当まで出てきました。ただいずれも手間とストレスがついてきます。やはり無断キャンセルをあらかじめ阻止するのが一番です。あくまで個人的な意見ですが、思い切ってネット予約は受け付けないことです。もしくはネット予約時には店側から電話確認を入れて初めて予約成立の形をとるようにするのも一策です。また4名以上の場合の予約はネットであれ電話であれ、当日の前日までに最終確認の電話を入れてもらうことを義務づけるのです。そのくらいの要望はしていいと思います。お客様は神様ではないのです。これは、正式なビジネス取引なのです。店側は客に相応の料理とサービスを提供し、利用者はそれに対してお金を支払う。これが取引で無くて、何が取引だというのでしょう。突発的な事故・事件による不可抗力な無断キャンセルもあり得るので一方的に弾劾はできませんが、飲食店で増えている現実を踏まえると、予防策は念入りに講じすぎるくらいで、ちょうどいいように思います。

      食生活アドバイザー 間島万梨子

 

 

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【第166回】 食環境の現状(145)(災害への対応の発想)

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食文化の豆知識166 食文化の現状145(災害への対応の発想) 

今年も、災害が日本を襲いました。昨年は主に西日本が地震や豪雨や猛烈台風に見舞われましたが、今年は東日本に上陸した台風による大雨で、多くの河川が氾濫し、多数の尊い命が失われました。関西に住んでいる身としては、昨年の台風21号は記憶に残るすさまじさでしたが、その前の西日本豪雨では100名を超える方々が犠牲になりました。そして今年。東日本への台風19号などの上陸がもたらした被害は甚大におよび、まだまだ復旧は完全ではありません。巨大地震はもちろん致命的な被害をもたらしますが、山国日本では、豪雨による川の氾濫・決壊が人命を奪ってしまうケースが、とても多いように思います。 

この河川の氾濫を完全に防ぐのは不可能なのでしょうか。勿論、危険度の高さに応じて、どの川も防災工事を施し、氾濫予防に努めていますが、予想をはるかに超える雨量によって水位が急上昇し、氾濫にいたってしまう。このような被害が繰り返し発生しているのが現状で、となると抜本的に発想を変えるしかないでしょう。河川から数キロ範囲内には住宅を構えない、というシステムです。狭い日本なのでそれは無理、と諦めないで、モデル地区を作ってみることです。河川近くから数キロの緩衝地帯に徐々に斜度をつけ、その先の住宅地で20メートル程度の高さに及べば、まずは水害は免れます。勿論、数値的な精査は必要ですが、要はやる気があるかどうかです。日本では業者優先の傾向があり、鉄道でも河川でも、ほんの至近距離で宅地開発が進みます。JR福知山線脱線事故も、仮定の話になりますが、電車が突っ込んだあのマンションが無ければ、被害はより少なかったかもしれません。あのマンションはどう見てもカーブする線路から近すぎる場所にありました。

狭い日本。でも人口は減っていきいます。住宅も余ってくる。被害者救済は勿論必要ですが、被害の減少への投資に目をむける発想を持てば、住む場所の選定の規則もそろそろ必要になってくるような気がします。数十年以上、もしくは百年以上の成果期待になりますが、災害は揺るぎがないほどに、間違いなく、そして繰り返し襲ってきます。東日本大震災での津波被害地区の再生形は、大きな悲しみを抱えながらも、来る日本のモデル都市になるでしょうか。

            食生活アドバイザー 間島万梨子

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【第165回】 食環境の現状(144)(度を過ぎる親切さ)

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食文化の豆知識165 食文化の現状144(度を過ぎる親切さ)  

何らかの理由で日本に来たいと切望する外国人を、日本に招くTV番組があります。現地で日本に興味ある人を募って、その中からひとりに来てもらい、日本での数日間を追うという、いわばドキュメント番組なのですが、日本に来たい理由が千差万別で、興味をそそられる内容のときもあります、ただ単に日本の文化が好きというだけの人もあれば、実際に日本のある分野に精通して本物を知りたいという勉強家もいて、やはり番組的には後者の方が充実感はあります。日本人よりも日本のある分野に詳しい人もおり、その殆どがネットを通じて知識を深めたと言います。あらためてネットの威力に感心することしきりです。日本での滞在中、本人が来たい理由に関わりのある日本人が、さらなる知識や技術を本人に伝授して交友を深めるという構成になっており、最後は決まって涙の別れが待っています。

 その中で必ず登場するのが、受け入れ側の日本人が家族ともども、本人を夕食に招く場面です。双方、食卓を囲んでなごやかに歓談する情景はなかなかに見ていても楽しいのですが、決まって精一杯の心づくしの豪華な料理が並びます。食卓いっぱいに、お母さんの数々の手作り料理やお寿司の大皿などが供され、いくらテレビカメラが入るとはいえ、準備に大変だったろうなと思ってしまいます。客を食事に招く場合の国民性が出ているのでしょう。欧米であれば、フレンドリーさはあっても料理はかなりシンプルだし、アジアなどでも4~5種類の料理が殆どです。日本はこれでもか、というおもてなしが満ち溢れた賑やかな食卓で、招かれた外国人の吃驚する顔が見られます。それと、これもパターン化された場面なのですが、別れの時にお土産が交換されます。本人からは国のワインかお菓子類が一般的で、一見してささやかな可愛い土産品です。ところが、日本側からは、本人が日本に行きたい理由となった技術や芸術に関連する貴重なグッズが決まって送られる。それも買えば数万円する逸品が殆どで、あるとき、立派なお琴が送られた時には吃驚しました。本人の驚きようも尋常ではありませんでした。安いものでも20万円ほどで、100万円を超すものもあり、送られたものは一見して高価なものでした。たぶん、本人の住む本国ではあり得ないプレゼントなのでしょう。 

そこで、少し複雑な気分になりました。果たしてそれらがプレゼントとして適切であったのかと。送る方の勝手だろう、と言われればそれまでですが、受け取り側にとって身に余る接待や土産が本当に、その人のためになるのだろうかと。確かに送る側の勝手です。気持ちが込められているのでしょう。でも相応というバランス感覚がそこには見られませんでした。日本に立ち込めている、”おもてなし”が、度を過ぎたものになっては双方にとって、良い結果を生むとはどうしても思えません。そんな余計なことを考えてしまいました。

   10月13日  食生活アドバイザー 間島万梨子

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【第164回】 食環境の現状(143)(値上げラッシュは恐ろしい?)

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食文化の豆知識164 食文化の現状143(値上げラッシュは恐ろしい?) 

今春から、値上げラッシュが続いています。主なものでは、ペットボトル商品です。コカ・コーラ、アサヒ飲料、キリンビバレッジ、サントリー食品、伊藤園etc、大手飲料会社が、大型ペットボトルの値上げに踏み切りました。いきなりの値上げには吃驚しました。揃って一律20円アップ。まるで申し合わせたような状況です。理由もほぼ同じです。原材料費の高騰、人手不足による人件費の高騰、物流費(輸送費)の高騰の三つです。皆で値上げすれば恐くない、というところでしょうか。他にも乳製品や調味料の値上げも目立ちます。理由はほぼ同じ。こうなると、ハイパーインフレが起こるのではないかという恐怖心が出てきますが、どう考えても日本では起こらないのではないでしょうか。そもそもハイパーインフレの元は供給不足です。今はむしろ供給過剰状態です。戦後のように生産設備が大打撃を受けるとか、ある一つの産業のみで国の経済を支えている場合の不振の結果として自国通貨そのものが世界的信用を無くすとかであれば、可能性はありますが、今の日本ではまずは現実味は少ないでしょう。つまり、モノの量が壊滅的に不足しない限りハイパーインフレは起こしたくても起こりません。緩やかなインフレは起こり得ますが。 

然しながら、身近の食品が揃って値上げに踏み切るとなると、家計への影響は大きい。自衛?が必要になってくるでしょう。が、しかし、企業の方が危険な状態にあると言えます。値上げの循環で、またまた消費が落ち込む方が経済にとって恐ろしいはずだからです。ペットボトルの値上げへの対抗は、とても簡単。誤解を恐れずに言えば、水道の水を飲める国に住んでいる幸福を思って、水道水を飲むことです。少なくとも、水やお茶程度のペットボトルは、水道水でカバーできるのです。極端な話ですが、これからの値上げラッシュに備える必要があるかもしれません。 

日本の技術力は世界でも群を抜いているとの説があります。真実でしょう。車のガソリンエンジンひとつを取っても、日本のアナログ技術無しでは立ち行かない。で、先進国では電気自動車の開発に躍起になっている、と聞いたことがあります。その他、様々な部品関係でも日本の技術が基礎になっていることが多いのです。でも世界は劇的に変わっていきます。日本も新たな革新技術を開発し、質の高い商品を国として出来るだけ多く抱えていくことが、経済安定の要となるのだと思います。 

2019年 5月18日  食生活アドバイザー 間島万梨子

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【第163回】 食環境の現状(142)(飲食店の厳しさと乱立

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食文化の豆知識163 食文化の現状142(飲食店の厳しさと乱立)  

食文化という大きな枠組みの中には、飲食店も含まれます。世界文化遺産になった和食は、料理そのものを指しますが、それらを商売にして成り立っているのが飲食店です。勿論、一口に飲食店といっても、洋食系、中華系、和食系、喫茶軽食系etcと幅広く、様々な業種業態があります。本当に数が多い。遊興地区は飲食店ビルが乱立しており、それぞれに数店舗が入って営業しています。1階や地下1階は、看板やエントランスの工夫で歩行者にアピールしやすいですが、2階以上に入る店は、いわゆるフリ客は期待できず、口コミやリピート客に頼らざるを得ず、かなりの営業努力が問われるでしょう。過酷な競争下にあることは想像できます。 

先日、遊興ビルの10階にある、串焼き店に5名で行きました。人気店と聞いていたので勿論予約の上です。6時30分の入店時には半分ほどの客入りでしたが、すぐに満席状態になり、スタッフから二時間制になっている旨を告げられました。時間制を取る店は避けているので、予約時に言ってもらいたかったと思いましたが、やむを得ません。きっちり二時間で出ましたが、それにしても途切れずに客が入る状態で、出店時にもまだウエイテイング客がいました。で料理は?となるのですが、とにかくボリュームがあって、リーズナブル。これにつきます。飲食店の原点を押えている店でした。客層はやはり若い層です。ゆっくりと歓談を楽しむ、というより、がっつり食べて、さっさとさよならするべき店です。これはこれで、軸のある店だと思いました。 

他国の状態は分かりませんが、日本のように、飲食店が入っているビルがずらりと軒を並べているエリアを数多く持つ国は無いように思います。基本的に、いわゆる飲食店ビルは見かけません。大体が1階に店を構えています。商業ビルはあっても、店子がすべて飲食関係で占められているという飲食店ビルは日本独自のスタイルでしょう。ある意味、すさまじい光景です。毎年、30%以上が入れ替わっていく。出店・閉店のエネルギーを考えると、他にそのエネルギーを生かせないものかと、ふと考えてしまいました。簡単に出店できる飲食店ゆえの淘汰ですが、今後もこういう状態が続いていくのか、それとも全く違った景色に変わるのか、少子高齢化の枠を超えた分析論を、経済の専門家に教えてほしい気分になりました。 

2019年 4月14日  食生活アドバイザー 間島万梨子

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【第162回】 食環境の現状(141)(食材のブランド力には努力が要る) 

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食文化の豆知識162 食文化の現状141(食材のブランド力には努力が要る)  

久々に、淡路島に行ってきました。目的は3年トラフグ。従来、養殖フグは2年ほどで出荷されるのに対し、淡路島では3年間養殖に踏み切りました。結果として、2年物に対して大振りに育ったフグが、出荷できます。それは淡路島3年フグとして、1年のロスを回収できるほどのブランド力を持つにいたりました。我慢が産んだ淡路島の立派な観光資源の登場です。この島で生産される玉ねぎも、有力な淡路島ブランドとして、経済に貢献しています。道の駅やマルシェには、玉ねぎそのものは言うに及ばず、ドレッシングやスープ、菓子類、スナックに至るまで、玉ねぎを使用したオリジナル商品が溢れています。観光客に人気の高い商品群です。今や、淡路島玉ねぎは、その味の良さが料理人からも認められる優秀ブランドになりました。これだけにかぎらず、淡路島では、難しいとされたサクラマスの養殖にも成功し、3年フグに次ぐブランド魚になる勢いです。 

その土地ならではの野菜や魚介類、肉類がブランドとして次々に名乗りを上げ、今や、日本中、ブランドもので溢れています。それらすべてが、成功しているわけではありません。ブランド化を確立させるには、それ相応の努力の積み重ねがあることも忘れてはならないでしょう。やはり質的内容が伴わないと、いつか廃れるでしょうし、持続供給力も必至です。値打ちを高めるための数量制限も高度なテクニックを必要とします。そう、努力なしのブランド化はあり得ません。ただそこで採れるものにブランドとしての付加価値をプラスする方法もありますが、やはり育て上げるという努力が無いと、採れなくなれば終わってしまいます。かつての北海道のニシンがいい例です。人気の関サバも豊後水道をサバが通ってくれなければ、供給できません。 

世界に目をやれば、ブランド化された商品や農作物が市場を席巻しています。フランスのシャンパンしかり、イギリスのスコッチウイスキーしかり、ドイツのソーセージしかり。イタリアではピザ、スペインはパエリア。日本に目をやれば、国あげての努力というより、各地域の努力に頼っている感がします。先の淡路島もそうですが、京都などは最も成功しているエリアです。豊かな歴史は勿論ですが、京都ブランドの発信力は感心するほどです。それも努力の賜物に違いないのです。淡路島の3年フグやサクラマス養殖も、実を結ぶまで数年以上かかったと聞きます。ですから、他エリアのブランドをうらやむのではなく、官民あげてのブランド創出の努力で、各地域の人気商品を作ってほしいと思います。

2019年 3月17日  食生活アドバイザー 間島万梨子

 

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