顧客満足の複雑さ198「何をもって成功とするか」
大阪・関西万博に行ってきた。一言でいうなら“一度は行くべし”だ。一度ならず二度、三度と足を運びたいのだが、手間と負担を考えると難しいかもしれない、というのが本音だろうか。平日の曇天日だったので、8万人前後の入場客数だったらしいが、それでも場内は人であふれている感が強かった。東ゲートへの地下鉄の道程は万博へ向かう人の波で、随所には誘導のための案内係りが配置されており、日祝日の混雑ぶりはいかほどかと案じられた。
その後、別用で万博への主要路となる地下鉄を平日に利用した際も、行き交う人の多さに驚いた。万博がらみの利用客だ。万博開催中は昼夜共にずっとこのような状態が続くに違いないが、協会が希望想定する来場者数には1日あたり15万人超が必要で、望ましい来場者数を達成する可能性はどうなのだろう。経験した8万人のざっと2倍ほどの入場者がいる状況は想像しただけでうんざり感がある。希望来場者数は万博として最終利益が出る(残せる)ラインなのだと思うが、そもそも今回の万博は諸般の事情で経費の上乗せを余儀なくされた。よって儲けの可能性がせばめられたのは理解できる。収入と支出の単純計算で利益を出すのは大変だろう。マスコミの極めて意地の悪い論評が目に見えるようだが、今のところ、万博紹介記事であふれており、入場者数も徐々に上向きに推移しているらしい。
場内の大屋根リングを一周したが、よくこのようなリングを創ったものだと感心する。素人の発想ではとても思いつかない。もしもこのリングが無かったら、しまりのない会場になっていただろう。リングは会場を囲い込み、上部の歩道からは会場と周辺の海を同時に一望できる。一周に2キロほどかかるが、変わりゆく眺望に飽きはこない。ただ、まだ先が長い期間中に改善すべき点は多くある。夜間券のより割安化と時間拡大が望まれる。夜間イベントのさらなる充実も集客に役立つはずだ。そしてもっとも改善すべきは予約システムの簡便化だ。コンビニで購入した入場券のシリアルナンバーで、スマホやパソコンからパビリオンの入場予約を可能にすべきだし、入場ゲートをそれで通過できるQRコードを最初から付加できるはずだ。何故このような厳格な予約システムが取り入れられたのか理解に苦しむ。
今回の万博は何をもって成功と呼べるのだろう。収入と経費、いわゆる単純なプロフィット&ロス計算では難しいかもしれないが、バランスシート感覚では成功すると思う。それは人の満足感と充足感と記憶が資産として上積みされるからだ。数量で推し量れないものが残っていく。数値でも鉄道、百貨店、宿泊施設等の売り上げ増加に大きく貢献するのは確実だ。そして大阪のお荷物エリアであった夢洲の未来が、後に続くIR(統合型リゾート)やスマートシテイの構築によって開かれたのは確かで、その意味でも前哨戦となる万博は開催した価値があるのだろうと思う。文句を言うのはたやすいが関係各者の労をねぎらいたい。
2025年6月1日 間島