【第143回】 食環境の現状(122) (食生活の変化と肥満)

col_g_pic.gif

食文化の豆知識143 食文化の現状122(食生活の変化と肥満) 

時代と共に、私たちの食生活は変化してきました。いい方向にか、悪い方向にかは一概に断言できかねますが、少なくとも栄養面で、そして選択面では豊かになりました。反面、手をかけ時間をかけた料理世界を、簡単便利なファストフードや中食が侵食しているのも現実です。そして、ファストフードや中食の比率が高まれば高まるほど、健康面での問題が増えてくるのも、また事実です。

かつて長寿を誇った沖縄男性の平均寿命の変化は衝撃的です。1990年で全国5位であったのが、2000年では26位、2010年では30位という結果でした。そして何と、65才未満の死亡率は全国1位だったのです。一方、女性は長らく平均寿命1位を保っており、2010年でも3位です。女性の方が従来の食生活を守っているからでしょうか? 

沖縄の場合の理由はやはり、アメリカナイズされた食生活への転換なのでしょう。高カロリー、高脂肪の食生活が肥満を招き、結果として様々な病気を呼び起こしたのだと考えられます。ステーキやハンバーグなどは文句なく美味しいと思いますが、要はバランスです。かつて食していた野菜や海藻、豚肉などの伝統料理との摂取比率が逆転してしまったのです。食生活は全く個人の自由なので、外野があれこれ口をはさむのもはばかられますが、健康を保つ食生活のモデル県であったのが夢のようです。環境は異なりますが、ベトナムでも肥満率が上昇しているとか。野菜中心のヘルシーな食生活から、脂肪や糖分の多い食生活への変化により、2015年のベトナム男性の肥満率は16%と、10年前の3,2倍に。女性は24%と10年前の8割増しだそうです。 

少し太り気味が健康面ではベストだという説もありますが、程度問題でしょう。過度の肥満は、確実に足腰を痛め、心臓に負荷がかかります。先進国、準先進国が肥満防止に力をいれるのも、医療費増大を避けるためであり、食生活面では、圧倒的に肥満度が少ない日本の“和食”に注目が集まるのも納得できます。少し面倒でも、野菜の煮物や酢の物など日本古来の料理を各家庭で伝承していきたいものです。 

                  7月9日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

カテゴリー: 食文化の豆知識 パーマリンク