民泊の是非

顧客満足の複雑さ 99「民泊の是非」飲食担当 間島 

訪日観光客数の急増を受けて、民泊新法が今年中に成立しそうな気配だが、こと民泊に関しては業界における是非論がはっきりと分かれているようだ。賛成派は空き部屋や空き家を多く抱える不動産業界で、反対派は正当な営業許可のもとで運営しているホテル旅館業界といった構図になるだろうか。双方の言い分や思惑には相応の説得性があり、是非論を結論づけるのは難しいところだ。ただ、民泊新法制定の動きをもたらしたのは、違法という名の民泊がすでに急激に増えているからで、それならきちんとしたルールや法律を作るべきではないかというのが、主な理由だと思う。 

サンフランシスコに拠点を置く、アメリカの民泊仲介サイト最大手・Airbnbは、世界で80万以上の民泊施設登録数を誇る。部屋を貸したいホストと部屋を借りたいゲストをつなぐウエブサービスが、決済の利便性とホテルには無いユニークさが支持されてか、2008年の創立から10年を待たずして巨大なスケールに成長した。2014年5月には、日本法人Airbnb・Japanが東京に設立され、その2年後にはサイトでの民泊施設登録数は35,724件に達し、100万人以上のゲストが利用する勢いだという。問題はそのほとんどの民泊施設が、現在の日本の法律下においては無許可営業の違法施設になるということで、その現実が前述したように、民泊新法の制定のきっかけになったのだと思われる。正確には住宅宿泊事業法で、家主不在型民泊に管理委託を義務付け、一定の責任を負わそうとする内容だと理解している。 

さて、個人的には民泊に賛成できない。安全安心を問う以前に、単純に日本には根付かないシステムだと思うからだ。農村宿泊体験のグリーンツーリズムが欧米のようには根付かないのと、同じ理由に起因している。ユニバーサルスタンダードではない日本家屋の構造もさることながら、独特の排他性があるからだ。よく言えば潔癖性と同族性とも言えるだろうか。これは日本人が持つ本来の優しさやおもてなし精神とは意を別にし、根本的な深部意識の問題だと思う。ただ、この民泊をビジネス好機ととらえる悪徳業者の跋扈を許さない適切な法律は成立させる必要がある。またトラブル処理に関する保険の完備をサイト運営者に義務づける、日本独自の厳しい法律も急務だろう。いずれにしても、民泊施設の登録数は今後、頭打ちになると思う。都心でもすでに減少傾向を示している。今後、飛躍的に伸びるとは考え難い。それより、カプセルホテルなども含む、質の良い安価で安全な宿泊施設の増設の方が余程望ましい。

                          2017年3月10日

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