顧客満足の複雑さ191「国内・海外旅行者数からみる経済」
旅はいいものだ。見知ったところであっても、見知らぬところであっても、非日常感を味わえる。それは刺激であり、緊張であり、感動であり、喜びでもある。日本に来る外国人観光客の高揚感を隠し切れない表情をみるに、旅を楽しんでいる気配が伺える。外国に観光に訪れる機会に恵まれた彼らが、少し羨ましくもある。2019年には3188万人と過去最高の訪日人数を記録し、その後のコロナ禍で激減したものの2023年には2500万人、そして2024年は2019年を上回る3310万人の訪日人数が推定されている。一方、日本人の海外渡航者数は2019年の2008万人をピークとして同じくコロナ禍で激減。2023年には962万人。そして2024年は1450万人と予想されており、外国人観光客数のV字回復と比べ、日本人の海外旅行者数の伸びの鈍化は明白である。様々な理由があろう。いまだコロナ禍に慎重であること、安全面その他の現実論として、訪問したい国が減っていること、そして何より円安を始めとする経済的要因があげられる。
一方、国内旅行者数はどうなのだろう。旅行宿泊者数は2016年の延べ3億2566万人をピークに、コロナ禍を経た2023年は2億8105万人。2024年は2億7300万人と予想され、観光庁の言う「弱い動き」が如実に表れている。海外旅行と比べ、日程・安全面ともに断然ハードルが低い国内旅行でも、回復しきれていないのだ。国内旅行では為替ルートは直接の関係は無いのにも拘わらず、需要が伸び悩んでいる。これも様々な要因があげられるが、一番の理由は費用の増大化だと思われる。宿泊費用の値上がりに、所得の伸びがついていけないでいる。光熱費やガソリン代の値上がりをはじめとして、あらゆる物品が値上がりしている現状下で、宿泊費用も上げざるを得ないのはもっともなのだが、結果として、旅行者数が回復できていない。日本人は貧しくなっている、という現実は、国家の最重要課題だと思うのだが、その危機感は時の行政・立法府から伝わっては来ない。各自治体の動きは臨機応変的なものがあって、なかなかに策をめぐらした政策もかいまみられるのだが、ここ数年の国の政策からは、笛吹けど人踊らず、ならず、笛吹けど企業踊らず、の、無力感が伝わってくる。民を豊かにすることが、国家最大の役割りとするならば、ここ数年のそれは、その役を果たしていない。
国内旅行者数の推移だけをみても、その国の真の力がみえてくる。海外旅行者が消費する額に喜んでいる場合ではない。日本独自が生みだす儲け・利益の増加を図らずに、日本国民の豊かさは望めない。さてはて、かつてのエネルギーが日本によみがえるであろうか。
2024年11月1日 間島