食文化の豆知識209 食文化の現状188(親しみやすい節句)
4か月もの間、君臨してきた蒸し暑さが、さわやかな空気に主役の座を譲り、ようやく季節が移り始めました。秋の到来です。日本には季節ごとに節句があり、昔から親しまれてきました。1月7日の人日の節句・3月3日の上巳の節句(ひな祭り)・5月5日の端午の節句(こどもの日)・7月7日の七夕・そして9月9日の重陽の節句(菊の節句)が5大節句で、家族の健康や成長を願って、その時々の旬の食材を食べるお祝いの日です。
今でも、1月がお正月、3月がひな祭り、そして5月は子供の日として、生活に深くかかわっています。七夕まつりも学校や各地域で笹に願い事を書いた短冊を飾り付ける習慣が根付いており、全国で華やかな七夕祭りも催されています。それらに比べ、重陽の節句は、少し地味というか、お月見的な祝いにとってかわられているようで、家族や友人たちと祝う、という習慣としては浸透していないように思われます。全国で、菊の展覧会などは催されていますが、秋のお祭りとなると、ハロウィンに主役の座を奪われているようで残念です。
ハロウインは、ご存知のように、古くはケルトの伝統がルーツで、アメリカに移民として渡ったアイルランド人によって定着した儀式です。10月31日の夜には妖精や死霊が現世界に迷い込むと信じられ、同時に親戚や友人などの霊も家に帰るとされ、火を燃やしたりご馳走を楽しむ日でもあります。なんだか、日本のお盆のようですね。大きな違いは、ハロウィンでは悪い死霊から守るために自らお化けなどの怖い仮装をする、というところで、それが、今のお祭り騒ぎにつながっているのです。本来は霊を慰めて静かにお迎えするしきたりなのが、仮装がメインになってしまったようです。ま、これもバレンタインデイのように、いずれは下火になっていくでしょう。またまた商売のタネとして、企業から新しいものが出てくる可能性はありますが。
その点でいくと、日本で古来から伝わる5節句は、地味ながら消えることはありません。むしろ営々と継がれていくべきものです。企業側もそれをうまく商売に生かして、若い人を盛り上げる仕掛けを考えればよいのに、とも思いますが,果たして魅力ある策が出てくるでしょうか。
食生活アドバイザー 間島万梨子