顧客満足の複雑さ156「内需拡大を真剣に」
国連世界観光機関(UNWTO)によると、2020年の国際観光客数は前年度より10億人減少。損失額は約113兆円に及ぶと発表した。全世界の観光規模は30年前と同レベルに沈んだらしい。観光はコロナ禍による影響をもっとも受けたと思われるが、タイやインドネシアは、諸条件があるものの徐々に外国観光客の受け入れ再開に踏み切りつつある。アジア諸国にとって観光業が国の収入に占める割合は大きく、重要度は先進国の比ではないだろうと推察できる中で、日本も徐々に入国枠を増やしつつあった。その動きに水を差したのが、南アフリカ由来と言われる、コロナの新しい変異株・オミクロン株で、感染者が世界で確認されだした。その詳しい性質はまだ解明されてはいないが、感染力の強さを懸念する声が多い。何とも不気味な事象で、激減状態の日本のコロナ感染者数に影響を及ぼさないことを祈るばかりだ。
さて今秋、京都でささやかな同窓の会に参加した。一年に一回の集まりで、かれこれ5年ほど続いているのだが、京都はインバウンド状況を表すモデルともいえる街なのだと痛感する。大体が晩秋の時期で、5年前はまだ外国人観光客の多さを意識しなかった。そして4年前には、河原町近辺はすさまじい人の波であふれていた。混乱を避けるべく乗ったタクシーの窓から見えたのは、通りを埋め尽くす人・人・人で、一種異様なものを見ていると感じた。紅葉の名所も人であふれ、紅葉狩りはあっさりと諦めたものだ。そして昨年と今年。京都は静かで居心地の良い古都に戻った。コロナ禍にあっても、マスク姿で密を避けた国内観光客が点在し、静かに京都観光を楽しんでいる。今後、益々増えていくだろう。在京のメンバーも現在の状態を歓迎していた。インバウンド減少の影響をもろに受けて苦労している事業者の方々には申し訳ないが、大方の国民の思いだろう。大阪・心斎橋の閉店ラッシュも落ち着いてきた。多くは外国人経営による外国人向けの店舗だった。さっと波がひくように姿を消してしまった。さて、何年後にまた復活するのだろうか。
少子高齢化で人口減を嘆いている前に、1億2600万人の国内消費をいかにあげるかの知恵と努力が望まれよう。ちなみにコロナ前の2019年の国内延べ旅行者数は5億8710万人で前年比4,5%アップ。消費額は7%アップの21兆114億円だった。同年の訪日外国人観光客数は3188万人で、消費額は4.8兆円だ。国内旅行消費額が圧倒している。単純比較でいえば、国内旅行者数が20%強増えれば、外国人観光客の消費額をほぼカバーできるということだ。あくまで計算上の数字なので現実はそうは簡単なことではないのは当然だが、まだまだ国内旅行消費は伸びしろがあるし、不可能な数字でもない。日本の各地方の魅力は並大抵のものではない。外国人のリピート率の高さが証明している。休日のあり方を含めて、国内観光消費の増加対策に真剣に取り組んでほしい。 2021年12月1日 間島