顧客満足の複雑さ135「利用者側に立ったシミュレーションを」
先の見通しが立たない状態というのは、健康にも悪い。それがコロナウイルス感染騒動だろう。世界で感染が広がる中、英国船籍、米国運営会社のクルーズ船をめぐる日本の対応への批判などを言っている場合か、といささかしらけてしまうが、ここにきてかすかな光がみえてきた。新型インフルエンザ治療薬アビガン」の患者への投与を始めたと厚労省が発表した。新型コロナウイルスのような「RNAウイルス」の増殖を抑える効果が期待できるという。富士フイルムが開発したらしい。ほとんどの人が免疫を持たない新型インフルエンザの発生に備えて約200万人分が備蓄されている。実際に効果があるかどうかは確定できないが、朗報には違いない。服用の結果、重症化を防ぐ効果が確認されれば、まずは大きな関門を突破できる。世界に貢献できることを祈りたい。
さて、先般、同エリアで二か所の宿泊施設を利用する機会があったが、宿泊費は二倍近くの差異があった。片やビジネスホテル系、一方はシティホテル系といったところか。いずれもツインタイプで寝心地は遜色がない。寝具、パジャマ、ベッドの広さにこれといった違いは無い。大きく異なるのは水回りだった。ビジネス系は言わずもがなオールインタイプで、シティ系は洗面台とトイレ、浴室の三種がそのまま横並びのセパレートタイプだった。価格の二倍差は、まさに広さからくる水回りの構造差に尽きるということか。ただ浴室利用の場合、シティ系は脱衣場所が無く、廊下で入浴する準備をせねばならない。むしろビジネス系の方が使いやすい、といった皮肉の一言も出そうになる。せっかくの広さがありながら、使う側に立ってのシミュレーションが不足している結果だと思える。独立型トイレはともかくも、浴室は洗面所と行き来できるタイプにしておくと、そこで脱衣もしやすいし、入浴後も便利だ。そのホテルでは入浴後は廊下で体を拭き、着衣するという極めて妙な具合だった。
今まで、かなりの宿泊施設を利用したが、まさに前述の如く、実際の使い勝手に感心するほどの満足を感じたことは少ない。どこか、使いにくいことがある。思えばそれらはすべて、シミュレーション不足に尽きるといっても過言ではない。想像力の欠如と言い換えても良い。先のビジネス系のように絶対的狭さからくるオールインタイプはまだ許せるが、せっかくの広さを持ちながら、その広さを快適さにつなげ得ないシティ系の方が知恵が無い。鏡にしても、洗面台だけではなく、部屋のデスクにもある程度のものがほしい。化粧などに時間がかかる女性が洗面台を独占せずに済む。またグラス類があまりにもお粗末なところが多い、というか、用意されていない。結局、部屋で楽しむビールや水割りなどは、洗面台にあるプラスティックのコップで飲むはめになる。盗難防止なのか、破損を恐れてのことなのか、いずれにしてもそこにゆとり感は感じられない。今後益々、快適な住空間が増えていく中、プロともいえる宿泊施設が提供する贅沢感、ゆとり感は、まだまだ追い求めるべき課題は多い。