顧客満足の複雑さ130「接客の形の変化と不変」
時折ランチで利用する二つの飲食店が、タッチパネル式での注文に変わっていた。今までも、良く利用する回転寿司店ではタッチパネル式オーダーが主流だったので、別段、驚愕することもないのだが、この傾向はどの業種業態にまで浸透していくのか、興味をそそられた。店側の目的は、人手不足に対応するための接客時間の減少とオーダー受けミスの減少の両方取りなのだろうが、タッチパネルでの取り扱いに戸惑いを隠せない客への操作説明にスタッフがつきっきりの場面があちらこちらで見受けられた。客が慣れるまで相当の時間がかかりそうだが、いずれスムーズに当たり前の形として、この店では機械相手の注文が日常化していくのだろう。そこでどれだけの人手不足解消効果等が出るのか、実数として知りたい気はする。
コンビニエンスストアでは、24時間営業の是非が問題化しているが、一部の店では実験的に夜間無人化営業に踏み切ったという。入店するには何通りかの方法があり、客はどれかを選んで入店し、買物をして、自動レジで支払を済ませる。これも慣れない客の不平の声も聞かれているが、次第に、本当に深夜に買い物をしたい客だけが上手に利用していくのだろう。人間は慣れてくるものだ。機械相手の接客は今に始まったことでもなく、銀行のATMの歴史は古いし、駅の改札自動化も当初は画期的なものだった。無人化対象が広がっていくという流れは、社会構造の変化からみても止むことはないと思われる。その内、銀行の窓口が姿を消し、コンビニも昼間であっても、自動レジ化が進むのは充分に考えられる。
そうなると、未来に見えるのは縮小社会に他ならない。人口が少なくなれば機械ができる仕事は機械にまかせるのは当然の帰結で、その傾向は一層加速していくに違いない。いささか無味乾燥的な社会を連想してしまうが、都会は相変わらず人であふれ、人に酔うほどだ。利用者とサービス提供者の数的バランスが崩れ始めているのかもしれない。縮小社会への予感は、色々なところで見られる。もう今以上に、人口が増える時代はやってこないと覚悟すべきであって、そうなると売り上げを増やすのは困難で、経費削減に注力した方が得策だ、ということになる。その状態は悪いことばかりでもない。すさまじいまでのフードロスも見直しが進んでいる。一例だが、作りすぎて毎年売れ残り在庫を廃棄せざる得なかったXmasケーキを完全予約制に移行した店もある。これも一種の縮小経済だ。ただいつの時代でも、交流が大きな魅力となり、武器ともなっている業種業態は歴然と存在する。何十年も地域に根差している喫茶店や飲食店、そして人が安らぎと気分転換を満たしに訪れる宿泊施設などは一線を越えての無人化は難しい。刻々と変化していく社会で、接客の形も変化せざるを得ないが、不変性をどこにどうやって残していくのかの見極めが、ことさらに重要になってくる時代が来ようとしている。 2019年10月1日