バリアフリーの本気度

顧客満足の複雑さ 98「バリアフリーの本気度」飲食担当 間島 

今年の三が日も、全国の神社仏閣は多くの初詣客で賑わったことだろう。毎年警察庁から初詣客数全国ランキングなるものが発表され、新聞でも興味深く掲載されていたが、2009年をもって終了した。主催者によって算出の方法が異なり、正確性に疑義があるからという理由らしい。ただ、その後も民間会社によるランキングが発表されており、2017年度は例年一位の明治神宮と二位の成田山新勝寺の初詣客数は、310万人と305万人で殆ど大差ない結果が提示されていた。実際のカウントは難しいと思われるので、どこまでが実数かどうかは分からないが、少なくとも成田山の最近の健闘振りがうかがえる。 

10数年前に、その成田山新勝寺近くに住んでいたことがある。徒歩20分以内で、大本堂まで行くことが出来た。ちょうどその頃に参道は電柱が地中化された。勿論、玉砂利などではなく、舗装道だ。大本堂へはエレベーターが設置されたので、階段が苦手な老母も、新勝寺だけは喜んでついてきた。併設の大庭園は入園フリーで、早春の梅まつり、春の桜、そして秋の紅葉を気軽に楽しめたのも有難かった。千円取ってもおかしくない名庭園だったと記憶している。参拝客の増加は十分に予想される土壌があった。高齢者や体の不自由な人への配慮は、得となって帰ってくるいい例ではないだろうか。 

さて、バリアフリーだ。日本でも都心や公的施設、大型ショッピングセンターなどはほぼバリアフリー化されたが、本気度を疑う施設の何と多いことだろう。駐車場から施設までの道程が砂利道だったり、車椅子用のルートになんども小さな段差があったり、極めつけは施設の要へは階段でどうぞ、という施設もあった。トイレも身障者に配慮の無い施設や飲食店は全国に数え切れない。庭園や公園などで多く見られる、車椅子でOKという砂利道が、どれほど座る側、押す側双方に負担を強いるか、実際に試したことがあるのだろうか。宿泊施設も、バリアフリールームを設けているところは増えてきたが、実際に館内でスムーズに楽しめるかとなると、心細い。まず大浴場には手すりが不足しているし、露天風呂は危険極まりない。水回りも然り。要するにバリアフリーが、まだまだ特別な課題であって、当たり前のこととして浸透していないということだ。小規模ながら、ほぼ完全にバリアフリー化された旅館に泊まったことがあるが、まだ少数派だろう。 

2035年には、65才以上の高齢者が占める割合が確実に3人に1人になる。全館全施設、バリアフリーが当然という、国あげての姿勢と意識改革は、禁煙分煙をどうするかと騒ぐ前に、経済振興のためにも喫緊に必要なことだと思うのだが、道は遠いようだ。

                          2017年2月1日

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